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離れの宮1
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真っ赤な顔でハァハァと息を切らし、飛び込んできた留紗に驚いた。
ナナをブラッシングしていた手を止め、しばし留紗を見つめる。
留紗は息が上がりすぎていて喋りたくともできないようだ。
真野が慌ててアイスティーを手渡すと、留紗はらしくもなくグビッと一息にそれを飲み干した。
こんな野性味溢れた仕草……見たことないんだけど……
「どうしたの、留紗」
僕の膝の上のナナも「キュ」と鳴く。
「か……かおるさま……」
少しは喉が潤ったのか掠れた声を出してヨロヨロとソファーに座り込んだ。
見ると、普段とは違う着物を着ている。
紺色一色の着物は筒袖で振りが無い。
袴は腿のあたりが太いが裾がピタッとふくらはぎに密着していて、紐で結ばれている。
履いているのは草履でも下駄でもなく、沓でもない……地下足袋みたいなもの。
土で汚れたその足元には草もたくさんついている。
「え?何?どこで何してたの?大丈夫なの?」
「んと……か、かおるさまに……これ!」
覚束ない手付きで背負っていたリュックを下ろすと、中から手ぬぐいにくるまれたものを取り出した。
大事そうにそのまま渡されて、僕はそれを受け取った、
「なに?」
「あけてください!」
「うん、じゃあ……」
手ぬぐいを開くと、中にはほんわりと輝く可愛らしいブーケが入っていた。
「え?……かわいい!でも、これ留紗が?わざわざ?花を取りに行ってその姿なの?」
「ち、ちがいますよ。僕、アオアイ学園の課題をしてたんです」
「課題……」
なるほど、1年をかけてこなさなきゃならないっていう、厳しくて有名なあれだ。
「それで……今日は……」
まだ苦しそうなので、侍女らは慌てて追加のお茶の用意をしてくれた。
飲みやすいように常温の飲み物が出され、留紗はそれを喜んでごくごく飲んだ。
小さくてかわいい……
翠と比べたらお兄ちゃんに見えるけど、この子だってまだまだ幼いんだよなあ。
「あの……山を歩く訓練だったんですけどね」
「そうなの?大変だったんだね、だからその格好か……山歩き用の袴なんだね」
「そうです、裾がすぼまっているので、足さばきが良いんです……ってそうじゃないの!僕、見つけちゃったんですよ!」
「えと、何をかな?」
「久利紗様をです!」
「え……」
僕も侍女らも一瞬固まった。
それぐらい驚いたのだ。
久利紗様は僕にとっては義理の姉なのにこれまで一度もお会いできていない……なんだか謎の人なのだ。
体が弱く、特別に作られた離れの宮でお一人でいると聞いている。
時折、菓子や贈り物をしたり文を出したりしているのだけど……お返事はほぼ無かった。
蘭紗様からも、そっとしておくように言われていたし、気になるばかりで踏み込めずにいたのだ。
だけど、初めてお返事をもらった時には、その書の美しさに目を見張った。
翠のお祝いにと素敵な書のセットを送ってくださったりもして、ますます気になる存在だったのだ。
僕は、小さな野に咲く花のブーケをじっと見て、微笑んだ。
きっと久利紗様はこんな感じの可愛らしい方なんだろう……
「でね!薫様!あの!」
興奮状態の留紗はいつもと違って言葉も乱れて、余計に可愛らしい。
「どうしたの、落ち着いて」
「あの!おうちに来てほしいって!会いたいって!薫様に!」
「え?僕に?」
僕はポカンとして口をあけたまましばし固まった。
「でも……誰にもお会いなさらないんじゃなかったっけ……」
「はい!僕が出会ったのも偶然なんです!課題の山歩きのすぐそばでお散歩されているのを見かけただけで」
「なるほど……それがどこかはわからないけど……先代の王が久利紗様に建てた離れの宮があるって聞いてるよ、その近くだったのかな?」
「はい!」
「僕だけ?蘭紗様は?」
「あの……事情がおありになって……その……兄様にはお会いになれないけど、でも、お嫁様の薫様にはお会いしてみたいって」
僕は思案顔で留紗を眺めた。
「そう……なるほどね。事情がなんなのかわからないけど……深い理由があって引きこもっていらっしゃるんだね」
「はい……」
留紗は急に元気を無くしてシュンとして下を向いた。
僕はその留紗の様子が少し気になった。
ナナをブラッシングしていた手を止め、しばし留紗を見つめる。
留紗は息が上がりすぎていて喋りたくともできないようだ。
真野が慌ててアイスティーを手渡すと、留紗はらしくもなくグビッと一息にそれを飲み干した。
こんな野性味溢れた仕草……見たことないんだけど……
「どうしたの、留紗」
僕の膝の上のナナも「キュ」と鳴く。
「か……かおるさま……」
少しは喉が潤ったのか掠れた声を出してヨロヨロとソファーに座り込んだ。
見ると、普段とは違う着物を着ている。
紺色一色の着物は筒袖で振りが無い。
袴は腿のあたりが太いが裾がピタッとふくらはぎに密着していて、紐で結ばれている。
履いているのは草履でも下駄でもなく、沓でもない……地下足袋みたいなもの。
土で汚れたその足元には草もたくさんついている。
「え?何?どこで何してたの?大丈夫なの?」
「んと……か、かおるさまに……これ!」
覚束ない手付きで背負っていたリュックを下ろすと、中から手ぬぐいにくるまれたものを取り出した。
大事そうにそのまま渡されて、僕はそれを受け取った、
「なに?」
「あけてください!」
「うん、じゃあ……」
手ぬぐいを開くと、中にはほんわりと輝く可愛らしいブーケが入っていた。
「え?……かわいい!でも、これ留紗が?わざわざ?花を取りに行ってその姿なの?」
「ち、ちがいますよ。僕、アオアイ学園の課題をしてたんです」
「課題……」
なるほど、1年をかけてこなさなきゃならないっていう、厳しくて有名なあれだ。
「それで……今日は……」
まだ苦しそうなので、侍女らは慌てて追加のお茶の用意をしてくれた。
飲みやすいように常温の飲み物が出され、留紗はそれを喜んでごくごく飲んだ。
小さくてかわいい……
翠と比べたらお兄ちゃんに見えるけど、この子だってまだまだ幼いんだよなあ。
「あの……山を歩く訓練だったんですけどね」
「そうなの?大変だったんだね、だからその格好か……山歩き用の袴なんだね」
「そうです、裾がすぼまっているので、足さばきが良いんです……ってそうじゃないの!僕、見つけちゃったんですよ!」
「えと、何をかな?」
「久利紗様をです!」
「え……」
僕も侍女らも一瞬固まった。
それぐらい驚いたのだ。
久利紗様は僕にとっては義理の姉なのにこれまで一度もお会いできていない……なんだか謎の人なのだ。
体が弱く、特別に作られた離れの宮でお一人でいると聞いている。
時折、菓子や贈り物をしたり文を出したりしているのだけど……お返事はほぼ無かった。
蘭紗様からも、そっとしておくように言われていたし、気になるばかりで踏み込めずにいたのだ。
だけど、初めてお返事をもらった時には、その書の美しさに目を見張った。
翠のお祝いにと素敵な書のセットを送ってくださったりもして、ますます気になる存在だったのだ。
僕は、小さな野に咲く花のブーケをじっと見て、微笑んだ。
きっと久利紗様はこんな感じの可愛らしい方なんだろう……
「でね!薫様!あの!」
興奮状態の留紗はいつもと違って言葉も乱れて、余計に可愛らしい。
「どうしたの、落ち着いて」
「あの!おうちに来てほしいって!会いたいって!薫様に!」
「え?僕に?」
僕はポカンとして口をあけたまましばし固まった。
「でも……誰にもお会いなさらないんじゃなかったっけ……」
「はい!僕が出会ったのも偶然なんです!課題の山歩きのすぐそばでお散歩されているのを見かけただけで」
「なるほど……それがどこかはわからないけど……先代の王が久利紗様に建てた離れの宮があるって聞いてるよ、その近くだったのかな?」
「はい!」
「僕だけ?蘭紗様は?」
「あの……事情がおありになって……その……兄様にはお会いになれないけど、でも、お嫁様の薫様にはお会いしてみたいって」
僕は思案顔で留紗を眺めた。
「そう……なるほどね。事情がなんなのかわからないけど……深い理由があって引きこもっていらっしゃるんだね」
「はい……」
留紗は急に元気を無くしてシュンとして下を向いた。
僕はその留紗の様子が少し気になった。
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