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邂逅1
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春のお祭りを前に阿羅国から楽団の一行と波羽彦王と波成様もいらした。
昨晩到着された彼らは港町の迎賓館にお泊まりになっている。
紗国の春祭りは花祭りとも言って、世界中から人が集まる国を上げての壮大なお祭りだ。
王都でもそこかしこに花々が飾られるので、あちこちから花の香が漂っている。
しかし、花祭りの本当の会場は城のある王都ではなく、東西南北それぞれの山や草原や林なのだ。
人々が丹精込めて育てた花はそれぞれ地方の気候にあわせたもので、種類が重なることがない。
東は薄紫色や薄青色の桔梗のような花。
西は黄色や橙色の小菊のような花。
南は赤や桃色の芍薬に似ている大輪の花。
北は真っ白なすずらんのような小さな花が、それぞれ群生して咲き乱れているそうだ。
王都に飾られている花は、それぞれを持ち合わせ美しくアレンジされたもので、とても洗練されている。
人々は地方をゆっくりと馬車に揺られて移動しながら楽しみ、写真を取ったり出店から食べ物を買って食べ歩いたり、宿泊したりなどして過ごす。
それぞれの地域を全て見て歩くにはだいたい一月は掛かるのだ。
一年の中で最も過ごしやすい時期なので、病を治す為に逗留する者もいるという。
そういう人に人気なのは北の山間部の温泉宿だ。
「ねえ、蘭紗様……僕知らなかったんですけど。温泉があるなんて!」
「……そうか?そう言えば薫は山間部の方へは……」
「一度だけですよ、蘭紗様が雪に埋もれたあの時だけです!」
「……」
「もしかして……この近くでも掘れば温泉出るんじゃないですか?やってみてもいいんじゃないですか?!観光地に出来ますし!」
僕は嬉しくなって蘭紗様に抱きついて提案したが、蘭紗様は苦笑して僕の頭を撫でた。
「薫が風呂好きなのは知っていたが、そこまで温泉にこだわるとはな……それだけ、日本にいたころに具合が悪かったということなのだろうな」
「え、違いますよぉ……日本では温泉に行くのは何も病気や怪我を治しにいくだけでなくて、普通に楽しみなんですよ、旅行先といえば温泉なんです!」
「そうなのか……?」
僕は興奮して日本の温泉のあれこれを話したが、この世界ではそこまで温泉地が観光地化することは無いようで、温泉といえば病人の宿なのだそうだ。
とっても残念……
「ならば、紗国が世界に先駆けてやってみればいいじゃないですかぁ……例えば、港町のカジノの横にリゾートスパとか……絶対来ますよ、国外からのお客様もたくさん」
「リゾートスパ?」
「えっと、確か……スパってのが『水で体を癒やす』という意味です。つまり、温泉を中心にマッサージとか、疼痛に効くケアが受けれたり、美容に良い美顔エステとか……あ、そうだ、温泉プールなんてのもいいですね……そして豪華な宿泊施設があってゆったりと出来るんです」
「薫が言ってることはなかなかに最先端だな……この世界ではそういうのはどこにもない。泳ぐのは海か湖、そしてプールと決まっているし、マッサージや美顔などはそれぞれ決まった場所に出向くものだから、それらを集めて施設とするなど……思いもつかなかった……だがそれは、涼鱗とも話してみようじゃないか、うまくすれば紗国の良い産業となるだろう」
「はい!ぜひぜひ!」
僕はうきうきが止まらない。
美しい紗国の風景の中に溶け込むような、夢のような素敵な施設をつくりたい!
「薫、おいで」
蘭紗様が腕の中にぎゅっと抱きしめてくれたので、花のような匂いでうっとりとする。
「祭りの間、各国からの賓客をもてなすのは主に我とそなたの役割となるが、大丈夫か?涼鱗やカジャルも補佐につくが、かなり忙しくなると思うのだが」
「もちろんですよ、知ってる方ばかりだし、それに、特に阿羅国の楽団の方々にも早くお会いしたくって……それに、港町で行われる歓迎式典には蘭紗様もいらっしゃるのでは?」
「ああ、それにはもちろん行くよ、涼鱗もカジャルも、香夜葉もいくはずだ」
「ふふ……皆勢揃いでうれしいな」
「それと……姉から文が来てな、ぜひ、見てみたいというのだ。港町を」
「姉って……まさか久利紗様ですか?!」
「そうだ」
蘭紗様は力強く頷いた。
久利紗様に外に出てみられては?とお誘いしたのは僕だけど……それは城においでになったり、王族の集まりに参加されては?という意味だったのだ。
まさか、港町に行きたいだなんて。
「それは……思い切った行動ですね……ほぼあの離れの宮だけでお過ごしだった方なのに」
「ああ、だが、文献や絵写真などでかねてより港町には憧れがあったようだ」
「そうなんですね」
僕は久利紗様の意志の強い凛としたお顔を思い出した。
彼女が港町の潮風に吹かれて佇む姿を想像して、胸が熱くなる。
「そういうご希望ならば、ぜひ叶えて差し上げないと」
「ああ……そうなのだが、そなたに余計な仕事を増やすようで心苦しいのだが、そなたに案内を頼みたいと思ってな。姉のことを頼めるような他の者が思い当たらぬのだ……極端に知り合いが少ない人だからな」
「そんなこと!余計な仕事だなんてことないですよ。僕は久利紗様のこと大好きですから」
「そうか」
欄紗様は優しいまなざしを僕を見つめてキスしてくれた。
ずるいです、こんな甘々な感じで頼まれて断れるわけない……というか、元から断る気もないけどね!
「なら、色々とご相談もしたいですし、久利紗様をお尋ねしてもよろしいでしょうか」
「それなのだが、今日これから、一度森の神殿に一緒に行ってはもらえぬか?長姉のほうがその話を聞いて、そわそわしておってな……さっきもそのことで使いを出してきたのだ……久利紗を連れて今すぐ森の神殿に来いとな……」
「ふふ……みんな久利紗様のこと、とっても大切に思っていらしたのですね」
「ああ、そのようだ」
僕たちは顔を見合わせ、そしてもう一度キスをしてから蘭紗様は執務室に出かけていった。
昨晩到着された彼らは港町の迎賓館にお泊まりになっている。
紗国の春祭りは花祭りとも言って、世界中から人が集まる国を上げての壮大なお祭りだ。
王都でもそこかしこに花々が飾られるので、あちこちから花の香が漂っている。
しかし、花祭りの本当の会場は城のある王都ではなく、東西南北それぞれの山や草原や林なのだ。
人々が丹精込めて育てた花はそれぞれ地方の気候にあわせたもので、種類が重なることがない。
東は薄紫色や薄青色の桔梗のような花。
西は黄色や橙色の小菊のような花。
南は赤や桃色の芍薬に似ている大輪の花。
北は真っ白なすずらんのような小さな花が、それぞれ群生して咲き乱れているそうだ。
王都に飾られている花は、それぞれを持ち合わせ美しくアレンジされたもので、とても洗練されている。
人々は地方をゆっくりと馬車に揺られて移動しながら楽しみ、写真を取ったり出店から食べ物を買って食べ歩いたり、宿泊したりなどして過ごす。
それぞれの地域を全て見て歩くにはだいたい一月は掛かるのだ。
一年の中で最も過ごしやすい時期なので、病を治す為に逗留する者もいるという。
そういう人に人気なのは北の山間部の温泉宿だ。
「ねえ、蘭紗様……僕知らなかったんですけど。温泉があるなんて!」
「……そうか?そう言えば薫は山間部の方へは……」
「一度だけですよ、蘭紗様が雪に埋もれたあの時だけです!」
「……」
「もしかして……この近くでも掘れば温泉出るんじゃないですか?やってみてもいいんじゃないですか?!観光地に出来ますし!」
僕は嬉しくなって蘭紗様に抱きついて提案したが、蘭紗様は苦笑して僕の頭を撫でた。
「薫が風呂好きなのは知っていたが、そこまで温泉にこだわるとはな……それだけ、日本にいたころに具合が悪かったということなのだろうな」
「え、違いますよぉ……日本では温泉に行くのは何も病気や怪我を治しにいくだけでなくて、普通に楽しみなんですよ、旅行先といえば温泉なんです!」
「そうなのか……?」
僕は興奮して日本の温泉のあれこれを話したが、この世界ではそこまで温泉地が観光地化することは無いようで、温泉といえば病人の宿なのだそうだ。
とっても残念……
「ならば、紗国が世界に先駆けてやってみればいいじゃないですかぁ……例えば、港町のカジノの横にリゾートスパとか……絶対来ますよ、国外からのお客様もたくさん」
「リゾートスパ?」
「えっと、確か……スパってのが『水で体を癒やす』という意味です。つまり、温泉を中心にマッサージとか、疼痛に効くケアが受けれたり、美容に良い美顔エステとか……あ、そうだ、温泉プールなんてのもいいですね……そして豪華な宿泊施設があってゆったりと出来るんです」
「薫が言ってることはなかなかに最先端だな……この世界ではそういうのはどこにもない。泳ぐのは海か湖、そしてプールと決まっているし、マッサージや美顔などはそれぞれ決まった場所に出向くものだから、それらを集めて施設とするなど……思いもつかなかった……だがそれは、涼鱗とも話してみようじゃないか、うまくすれば紗国の良い産業となるだろう」
「はい!ぜひぜひ!」
僕はうきうきが止まらない。
美しい紗国の風景の中に溶け込むような、夢のような素敵な施設をつくりたい!
「薫、おいで」
蘭紗様が腕の中にぎゅっと抱きしめてくれたので、花のような匂いでうっとりとする。
「祭りの間、各国からの賓客をもてなすのは主に我とそなたの役割となるが、大丈夫か?涼鱗やカジャルも補佐につくが、かなり忙しくなると思うのだが」
「もちろんですよ、知ってる方ばかりだし、それに、特に阿羅国の楽団の方々にも早くお会いしたくって……それに、港町で行われる歓迎式典には蘭紗様もいらっしゃるのでは?」
「ああ、それにはもちろん行くよ、涼鱗もカジャルも、香夜葉もいくはずだ」
「ふふ……皆勢揃いでうれしいな」
「それと……姉から文が来てな、ぜひ、見てみたいというのだ。港町を」
「姉って……まさか久利紗様ですか?!」
「そうだ」
蘭紗様は力強く頷いた。
久利紗様に外に出てみられては?とお誘いしたのは僕だけど……それは城においでになったり、王族の集まりに参加されては?という意味だったのだ。
まさか、港町に行きたいだなんて。
「それは……思い切った行動ですね……ほぼあの離れの宮だけでお過ごしだった方なのに」
「ああ、だが、文献や絵写真などでかねてより港町には憧れがあったようだ」
「そうなんですね」
僕は久利紗様の意志の強い凛としたお顔を思い出した。
彼女が港町の潮風に吹かれて佇む姿を想像して、胸が熱くなる。
「そういうご希望ならば、ぜひ叶えて差し上げないと」
「ああ……そうなのだが、そなたに余計な仕事を増やすようで心苦しいのだが、そなたに案内を頼みたいと思ってな。姉のことを頼めるような他の者が思い当たらぬのだ……極端に知り合いが少ない人だからな」
「そんなこと!余計な仕事だなんてことないですよ。僕は久利紗様のこと大好きですから」
「そうか」
欄紗様は優しいまなざしを僕を見つめてキスしてくれた。
ずるいです、こんな甘々な感じで頼まれて断れるわけない……というか、元から断る気もないけどね!
「なら、色々とご相談もしたいですし、久利紗様をお尋ねしてもよろしいでしょうか」
「それなのだが、今日これから、一度森の神殿に一緒に行ってはもらえぬか?長姉のほうがその話を聞いて、そわそわしておってな……さっきもそのことで使いを出してきたのだ……久利紗を連れて今すぐ森の神殿に来いとな……」
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僕たちは顔を見合わせ、そしてもう一度キスをしてから蘭紗様は執務室に出かけていった。
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