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邂逅2
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僕は、侍女たちにお願いして森の神殿に行くのにふさわしい装いに着替えた。
白い着物を重ね一番上に金糸の縫い取りのある、ごく薄い紫色・時鼠色の着物を着た。
袴はグレーがかった濃い紫だ。
一番上に藤色の単の長い羽織を着た。
全体的に春らしいけど華やかすぎず落ち着いて、そして上品な感じで整った。
髪は一つに結わえ紺色の組紐を巻き、前髪を左に流す。
「森の門に久利紗様がお着きでございます」
「では、行きましょうか」
森の門……かつて10才だった久利紗様が数人のお付きのものを従ってそこをくぐって以来、15年ぶりにそこまで辿り着かれたことになる。
罪の重さに耐えかね、逃げるように森の中で過ごしてこられた日々を思うと、本当に胸が苦しくなる。
僕には想像もつかない長くつらい時だったことだろう。
まもなく僕と近衛も一階に降り、森の門に到着した。
白い傘を差し掛けられ、白い着物を重ね、黄金色の袴を付けた久利紗様が柔らかな笑みを浮かべて待っていてくださった。
「久利紗様、おまたせして申し訳ありません」
「いえ、元はと言えば急なことを言い出した姉のせいじゃからな」
久利紗様は顔をくしゃっとして面白そうに笑った。
「では参ろうか」
「はい、参りましょう」
僕たちは並んで歩き出した。
馬車をと申し出たのだが、久利紗様はせっかくなので歩きたいと言われたのだ。
四方を近衛に囲まれてはいるが、僕と久利紗様は気軽に散歩を楽しむように歩いた。
「春は本当に、過ごしやすいのう」
「はい、僕は昨年の春の終わりにここに渡ってきました」
「……そうじゃったな……まだ一年経っておらぬのか」
「もうそろそろ1年と言っても差し支えないでしょうけどね」
「界を渡るというのは、尋常ではないこと……そなたも本当に苦労したであろうな。それなのにその明るく真っ直ぐな心根で、蘭紗や紗国のものを幸せに導いておる」
「ならば良いですが……僕、意外に頑張ってないんですよ、自分がしたいようにしてるだけだったりして……エヘ」
僕は盛大に照れて少し顔を赤くしてしまった。
それを見て久利紗様が面白そうに眉を上げた。
「ほう……そういうところがまた……魅力なのだな、さぞかし蘭紗はそなたを可愛がっておるのであろう」
「……っんと」
「フフフ」
久利紗様は穏やかに声を出して笑った。
15年ぶりに外を歩いているなどと、信じられないほど自然に。
しばらく歩くと、神殿に通じる長く真っ直ぐな白石が敷き詰められた参道に出た。
大きな白い鳥居があり、そこから先には無用な私語も慎むべきと教えられている。
ふたりでゆっくりと真っ直ぐな参道を静かに歩く。
両側の森から爽やかな風か吹いてきて、僕たちの髪を揺らす。
美しい黄緑色の若葉のグラデーションが目にも優しい。
いつの季節に来ても、心が洗われるようにきれいな場所だ。
「王妃殿下・薫様、並びに、王姉殿下・久利紗様おなり」
朗々と響く森の民たちの声に従って神殿の扉が開き、僕たちは中に入る。
通された部屋は畳の間で、50帖ほどはあろうという広い部屋だ。
聞くとここは佐良紗様の私室なのだと言う。
神殿長の私室にお邪魔するなんて、光栄だよね。
シャラシャラと床をする衣擦れの音が聞こえ、森の民と共に佐良紗様が現れた。
10代の少女のような幼い顔立ちに似合わぬ存在感に、思わず頭を下げ、礼をした。
「久しいの、薫、良くまいった。それから……久しいどころではないな、そなたは……久利紗」
佐良紗様は美しい高い声で威厳たっぷりに話しだした。
僕は顔を上げ、佐良紗様に微笑んでから横の久利紗様をじっと見つめた。
久利紗様は困ったような顔でじっと姉を見つめ、そして溜息をついた。
「そんな嫌味をおっしゃらなくとも良いではないか、姉上」
「妾に妹があることを、もう少しで忘れてしまうところであったわ」
「……それは……寂しいことをおっしゃいますな」
「だが、よくまいった、本当によく、まいったな……久利紗。そなたがあの離れを出るのを、妾や父がどれほど待っておったか、そなたにはわかるまい」
「姉上……」
「父が亡くなったときにも出てこずに、ばかものめが」
佐良紗様は悲しそうに微笑んで、そして茶器を取った。
見事な手さばきで茶を入れる佐良紗様、本当に盲目なのか?といつも不思議で仕方ない。
入れられた茶は、高台の茶托に乗せられた。
美しい絵付けの茶碗から良い香りを漂わせ、心をすっと静かにさせてくれる。
森の民がそれを運び、そして茶菓子を置くとスッと下がっていった。
残ったのは15年ぶりに会う姉妹と、義理の弟の僕の3人だけだった。
白い着物を重ね一番上に金糸の縫い取りのある、ごく薄い紫色・時鼠色の着物を着た。
袴はグレーがかった濃い紫だ。
一番上に藤色の単の長い羽織を着た。
全体的に春らしいけど華やかすぎず落ち着いて、そして上品な感じで整った。
髪は一つに結わえ紺色の組紐を巻き、前髪を左に流す。
「森の門に久利紗様がお着きでございます」
「では、行きましょうか」
森の門……かつて10才だった久利紗様が数人のお付きのものを従ってそこをくぐって以来、15年ぶりにそこまで辿り着かれたことになる。
罪の重さに耐えかね、逃げるように森の中で過ごしてこられた日々を思うと、本当に胸が苦しくなる。
僕には想像もつかない長くつらい時だったことだろう。
まもなく僕と近衛も一階に降り、森の門に到着した。
白い傘を差し掛けられ、白い着物を重ね、黄金色の袴を付けた久利紗様が柔らかな笑みを浮かべて待っていてくださった。
「久利紗様、おまたせして申し訳ありません」
「いえ、元はと言えば急なことを言い出した姉のせいじゃからな」
久利紗様は顔をくしゃっとして面白そうに笑った。
「では参ろうか」
「はい、参りましょう」
僕たちは並んで歩き出した。
馬車をと申し出たのだが、久利紗様はせっかくなので歩きたいと言われたのだ。
四方を近衛に囲まれてはいるが、僕と久利紗様は気軽に散歩を楽しむように歩いた。
「春は本当に、過ごしやすいのう」
「はい、僕は昨年の春の終わりにここに渡ってきました」
「……そうじゃったな……まだ一年経っておらぬのか」
「もうそろそろ1年と言っても差し支えないでしょうけどね」
「界を渡るというのは、尋常ではないこと……そなたも本当に苦労したであろうな。それなのにその明るく真っ直ぐな心根で、蘭紗や紗国のものを幸せに導いておる」
「ならば良いですが……僕、意外に頑張ってないんですよ、自分がしたいようにしてるだけだったりして……エヘ」
僕は盛大に照れて少し顔を赤くしてしまった。
それを見て久利紗様が面白そうに眉を上げた。
「ほう……そういうところがまた……魅力なのだな、さぞかし蘭紗はそなたを可愛がっておるのであろう」
「……っんと」
「フフフ」
久利紗様は穏やかに声を出して笑った。
15年ぶりに外を歩いているなどと、信じられないほど自然に。
しばらく歩くと、神殿に通じる長く真っ直ぐな白石が敷き詰められた参道に出た。
大きな白い鳥居があり、そこから先には無用な私語も慎むべきと教えられている。
ふたりでゆっくりと真っ直ぐな参道を静かに歩く。
両側の森から爽やかな風か吹いてきて、僕たちの髪を揺らす。
美しい黄緑色の若葉のグラデーションが目にも優しい。
いつの季節に来ても、心が洗われるようにきれいな場所だ。
「王妃殿下・薫様、並びに、王姉殿下・久利紗様おなり」
朗々と響く森の民たちの声に従って神殿の扉が開き、僕たちは中に入る。
通された部屋は畳の間で、50帖ほどはあろうという広い部屋だ。
聞くとここは佐良紗様の私室なのだと言う。
神殿長の私室にお邪魔するなんて、光栄だよね。
シャラシャラと床をする衣擦れの音が聞こえ、森の民と共に佐良紗様が現れた。
10代の少女のような幼い顔立ちに似合わぬ存在感に、思わず頭を下げ、礼をした。
「久しいの、薫、良くまいった。それから……久しいどころではないな、そなたは……久利紗」
佐良紗様は美しい高い声で威厳たっぷりに話しだした。
僕は顔を上げ、佐良紗様に微笑んでから横の久利紗様をじっと見つめた。
久利紗様は困ったような顔でじっと姉を見つめ、そして溜息をついた。
「そんな嫌味をおっしゃらなくとも良いではないか、姉上」
「妾に妹があることを、もう少しで忘れてしまうところであったわ」
「……それは……寂しいことをおっしゃいますな」
「だが、よくまいった、本当によく、まいったな……久利紗。そなたがあの離れを出るのを、妾や父がどれほど待っておったか、そなたにはわかるまい」
「姉上……」
「父が亡くなったときにも出てこずに、ばかものめが」
佐良紗様は悲しそうに微笑んで、そして茶器を取った。
見事な手さばきで茶を入れる佐良紗様、本当に盲目なのか?といつも不思議で仕方ない。
入れられた茶は、高台の茶托に乗せられた。
美しい絵付けの茶碗から良い香りを漂わせ、心をすっと静かにさせてくれる。
森の民がそれを運び、そして茶菓子を置くとスッと下がっていった。
残ったのは15年ぶりに会う姉妹と、義理の弟の僕の3人だけだった。
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