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お告げ1
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鳥の鳴き声の他に、ちょろちょろと水の流れる音も聞こえて、ふと開け放たれた障子の外を見た。
中庭に面するその部屋からは、美しく整えられた庭園が見える。
これだけを見ていたら、まるで日本のどこかにいるような錯覚を覚えるほどだ。
砂利が敷き詰められていて、そしていくつかの大きな石や岩が置かれている。
松のような木や山茶花のような低木、真ん中には池があって、鯉のような鮮やかなカラーの魚が泳いでいるのが見えた。
庭師をしていたお嫁様がいらしたという資料がある。
彼はその技術を余すところ無く伝えたのだろう、城の庭でもそこかしこに日本を感じさせるものがある。
「その菓子は薫が妾に教えてくれた店の物じゃ、あれ以来気に入ってよくその店に使いを出すのじゃ、どうだ?新作らしいぞ」
「なるほど、郷ですね!」
「ならば……妾にくれたあの菓子も……」
「そうですよ、郷は、昔のお嫁様の技術を守る菓子店なんです」
「なんと、そうであったか……お嫁様がこの国にもたらす影響は計り知れぬな」
「本当に……」
僕は花の形の上生菓子を黒文字で半分に切り、口にした。
控えめな甘さがおいしい。
お茶をいただくと、ほろ苦くてとても美味しかった。
最近知ったのだけど、紗国でも一部緑茶が作られているらしい。
それは主に神事のみに使われるので、一般的でなかっただけなのだ。
「その緑茶も、神事で使うものではないのだぞ、阿羅国のものじゃ」
「まことでございますか?阿羅国の……ああ、そう言えば、先日薫様からいただいた中に緑茶がありましたな」
久利紗様が優しげな眼差しで僕に微笑みかける。
「はい、緑茶が一般的じゃないのは残念だなと思いまして、阿羅国で生産しているので、それを輸入することにしたんですよ。茶木の植えられている場所は毒素の影響の無い場所という検査も済んでいますので、どうかご安心を」
それを聞いて佐良紗様が少女のような顔を曇らせた。
「なるほど……阿羅彦の毒素か……妾はそれを直接には知らぬが、体に害のあるものだったようじゃな」
「はい……でも今は波成様のお働きで順調に解毒が進んでいるようですから、将来的には無くなるでしょう」
「しかし、何百年とかかることだろうな。5000年にも及ぶ影響だったのじゃ」
「そうかもしれませんね……」
僕は少し悲しくなって手元に視線を落とした。
こういう話がどうしても苦手なのだ。
新人君が責められていることに胸が痛くなる。
実際に罪をいくつも数え切れないほど犯した大罪人であることは確かなのだけど……
僕の心の中は未だにそれは消化できていない。
「で、今日呼んだのは……実はお告げがあってのことなのだ」
「お告げ?」
佐良紗様は真っ直ぐに久利紗様を見つめた。
「姉上、お告げとは?どのような?」
「そなたの身の振り方じゃが……そなた本当にもう、身体は大丈夫なのか?妾はそなたが身体も心も弱く人前に出ることのかなわない子じゃと聞いていたのだが……」
そう言えば喜紗さんが佐良紗様には本当のことが知らされていないと言っていた。
蘭紗様のお母様のことも、なんとなく知っている程度だと。
本当に、身体が弱くて臥せっておられたと信じてこられたのだなと感じて息を呑んだ。
「……姉上、妾は出る機会を失っておっただけで、身体はもう、丈夫になっておりますぞ」
「心の方はどうなのじゃ?外で人に会っても大丈夫になったのか?」
「おそらく」
「ならば、子も産めるということか……」
「え?」
僕と久利紗様はわけがわからず、じっと佐良紗様を見つめた。
「姉上、妾に誰かの子を産めとおっしゃるのか?」
「ああ……実はの……先ほど言うたであろう? 始祖様のお告げなのじゃ……本当ならばこうやってそなたらに話す前に城に使いを出し、国王にまずお知らせするべきことなのだがな……あまりのことに動揺してしまってな」
「で……どのような?」
「……そなたを、阿羅国へ嫁に出し波羽彦王の子を成すようにとのお告げじゃ……」
「まさか!」
「波羽彦さんの?」
同時に声をあげた僕たちは目を合わせて呆然とした。
中庭に面するその部屋からは、美しく整えられた庭園が見える。
これだけを見ていたら、まるで日本のどこかにいるような錯覚を覚えるほどだ。
砂利が敷き詰められていて、そしていくつかの大きな石や岩が置かれている。
松のような木や山茶花のような低木、真ん中には池があって、鯉のような鮮やかなカラーの魚が泳いでいるのが見えた。
庭師をしていたお嫁様がいらしたという資料がある。
彼はその技術を余すところ無く伝えたのだろう、城の庭でもそこかしこに日本を感じさせるものがある。
「その菓子は薫が妾に教えてくれた店の物じゃ、あれ以来気に入ってよくその店に使いを出すのじゃ、どうだ?新作らしいぞ」
「なるほど、郷ですね!」
「ならば……妾にくれたあの菓子も……」
「そうですよ、郷は、昔のお嫁様の技術を守る菓子店なんです」
「なんと、そうであったか……お嫁様がこの国にもたらす影響は計り知れぬな」
「本当に……」
僕は花の形の上生菓子を黒文字で半分に切り、口にした。
控えめな甘さがおいしい。
お茶をいただくと、ほろ苦くてとても美味しかった。
最近知ったのだけど、紗国でも一部緑茶が作られているらしい。
それは主に神事のみに使われるので、一般的でなかっただけなのだ。
「その緑茶も、神事で使うものではないのだぞ、阿羅国のものじゃ」
「まことでございますか?阿羅国の……ああ、そう言えば、先日薫様からいただいた中に緑茶がありましたな」
久利紗様が優しげな眼差しで僕に微笑みかける。
「はい、緑茶が一般的じゃないのは残念だなと思いまして、阿羅国で生産しているので、それを輸入することにしたんですよ。茶木の植えられている場所は毒素の影響の無い場所という検査も済んでいますので、どうかご安心を」
それを聞いて佐良紗様が少女のような顔を曇らせた。
「なるほど……阿羅彦の毒素か……妾はそれを直接には知らぬが、体に害のあるものだったようじゃな」
「はい……でも今は波成様のお働きで順調に解毒が進んでいるようですから、将来的には無くなるでしょう」
「しかし、何百年とかかることだろうな。5000年にも及ぶ影響だったのじゃ」
「そうかもしれませんね……」
僕は少し悲しくなって手元に視線を落とした。
こういう話がどうしても苦手なのだ。
新人君が責められていることに胸が痛くなる。
実際に罪をいくつも数え切れないほど犯した大罪人であることは確かなのだけど……
僕の心の中は未だにそれは消化できていない。
「で、今日呼んだのは……実はお告げがあってのことなのだ」
「お告げ?」
佐良紗様は真っ直ぐに久利紗様を見つめた。
「姉上、お告げとは?どのような?」
「そなたの身の振り方じゃが……そなた本当にもう、身体は大丈夫なのか?妾はそなたが身体も心も弱く人前に出ることのかなわない子じゃと聞いていたのだが……」
そう言えば喜紗さんが佐良紗様には本当のことが知らされていないと言っていた。
蘭紗様のお母様のことも、なんとなく知っている程度だと。
本当に、身体が弱くて臥せっておられたと信じてこられたのだなと感じて息を呑んだ。
「……姉上、妾は出る機会を失っておっただけで、身体はもう、丈夫になっておりますぞ」
「心の方はどうなのじゃ?外で人に会っても大丈夫になったのか?」
「おそらく」
「ならば、子も産めるということか……」
「え?」
僕と久利紗様はわけがわからず、じっと佐良紗様を見つめた。
「姉上、妾に誰かの子を産めとおっしゃるのか?」
「ああ……実はの……先ほど言うたであろう? 始祖様のお告げなのじゃ……本当ならばこうやってそなたらに話す前に城に使いを出し、国王にまずお知らせするべきことなのだがな……あまりのことに動揺してしまってな」
「で……どのような?」
「……そなたを、阿羅国へ嫁に出し波羽彦王の子を成すようにとのお告げじゃ……」
「まさか!」
「波羽彦さんの?」
同時に声をあげた僕たちは目を合わせて呆然とした。
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