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空を駆ける花嫁2
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「そなたが涙するほどの大事な人が……皆に大罪人と言われ、苦しかったであろうな」
久利紗様がじっと僕を見つめて、そして優しげにそう呟いて、手を取ってさすってくれた。
横にいた翠も同じ様に僕を心配そうに見つめ膝に手をかけた。
「幼き頃からの友というものがどれほど大事であるか……妾にはわかろうはずもない……人と関わらず暮らしてきたのじゃ……しかしな、妾にはそばにずっと仕えてくれた侍女らがおる。もしもあれらが新人のように、全世界に大罪人と言われるようなことが起これば、妾は身を切られるような思いをするであろう……長きに渡り生きることになった新人に、何が起こり、そしてどうしてこうなったのかは……彼以外は本当のところはわからないままだろうしな」
「はい……」
「だがな……人々が言い伝えるように、本当に恐怖だけの存在だったのだろうか?とも思うのじゃ。お嫁様と紗国王の魂の繋がりにより、おそらく新人も自分がお嫁様だとどこかの時点で気づいたのであろう」
「はい……阿羅国の建国記では、時折現れる空間の歪み、時空の狭間のようなものが現れる時、人が送られてくるということに気づいて、そこから紗国のお嫁様伝説を知ったそうです……自分もそうだったのだろうと」
「そうか……そしてそのときにはもうすでに、真湖紗様はこの世におられなかったという絶望を味わったということじゃな?」
「はい……」
「きちんとお迎えの出来なかった紗国を恨んでも、仕方ないのう……」
久利紗様は溜息をついて窓から空を見た。
「つまり……何も無ければ作るしか無いと……そう思ったのであろうな。今の妾と同じじゃ」
「え?」
僕は驚いて久利紗様を見つめた。
「どれほどの絶望を味わったか……この世界にたった一人じゃ、元いた日本の家族も友人もおらぬ……真湖紗様の魂に呼ばれてきたのに、その方ももはやいない。それほどの絶望から脱却するには、自分の居場所を作ることだけを考えて日々を暮らすしかなかったのであろう。……考えてみればまだ妾は恵まれていた。衣食住もきちんとあり、身の回りの世話をしてくれるものもおり、手を伸ばせばそこに血の繋がった姉と弟がいたのだからな……だが、新人の目の前には何もない荒れた土地しかない……そんな新人が自分の子孫を残そうと必死になったのも仕方あるまい……新人は、自分を無条件に愛してくれる家族がほしかったのだな」
僕は久利紗様の言葉にじっと耳を傾け、冷えてきた指先をこすり合わせた。
新人君の孤独と絶望がどれほどだったのか……幸せにこの世界で暮らす僕には想像すら出来ない。
「妾もな、この縁談の話を聞いてな……あぁこれは……妾にとって救いなのだな、そう感じたのだ。生まれ故郷を去るという郷愁を感じないわけではないが、それよりも、何も持ってこなかった自分がようやく今、家族を持てる。そう思ってな」
僕は溢れる涙を拭って窓の外で飛翔する蘭紗様を見つめた。
美しく整った横顔にきらきらと輝く銀色の髪……すべてが愛おしいこの人いたから、僕は今ようやく生きている。
それがないのに、新人君は……
「だからな、新人はきっと、生まれてきた血の繋がった子を愛して、慈しんだのではないかな……ここ何百年かはすでに人ならざるものになっていたようだが……まだ人として意識が保てている頃はそうだったと思うぞ」
「……はい……僕もそう思います」
「おそらく語り継がれている恐ろしい伝説は、すべてが本当というわけではないだろう。彼の強大な力を恐れた周りのものが、そう言い伝えただけのこともあると思うぞ、だが……自分を見つけてくれず迎えに来てくれなかった紗国を強く恨んでいたことは……確かだろう……」
「はい……」
久利紗様は再び僕の手を握り、微笑んだ。
「今もまだ、世界に新人が放った間者が潜んでいるという話もある。妾はそれら同胞を見つけ、そして呼び戻し、心から語りかけ開放してやりたい、そう思っておる。あれらもまた、孤独な新人が残した大事な子らじゃ」
「……はい、そうですね……久利紗様の思いはきっと、届くでしょう」
「始祖様にお祈りした時にな、実は声が聞こえたのじゃ」
「え?」
僕は驚いて目を見開いた。
「薫様も婚儀の折に、始祖様のお声を聞いたと」
「はい……」
「妾には、阿羅国のことは頼んだと、そう一言だけだったがな……」
「ぼく、聞こえた」
翠が頬を紅潮させて手をあげたので、僕たちは翠の顔をじっと見つめた。
「あのね、狐の耳のおじいちゃんがね、僕にも微笑んでくれたの。それでね、久利紗様に阿羅国のことは頼んだとおっしゃって、それから……えっと、久利紗様に魔力をいれてたのです」
「魔力を?」
「いれる?」
僕と久利紗様は同時に発声して、そして顔を見合わせた。
久利紗様がじっと僕を見つめて、そして優しげにそう呟いて、手を取ってさすってくれた。
横にいた翠も同じ様に僕を心配そうに見つめ膝に手をかけた。
「幼き頃からの友というものがどれほど大事であるか……妾にはわかろうはずもない……人と関わらず暮らしてきたのじゃ……しかしな、妾にはそばにずっと仕えてくれた侍女らがおる。もしもあれらが新人のように、全世界に大罪人と言われるようなことが起これば、妾は身を切られるような思いをするであろう……長きに渡り生きることになった新人に、何が起こり、そしてどうしてこうなったのかは……彼以外は本当のところはわからないままだろうしな」
「はい……」
「だがな……人々が言い伝えるように、本当に恐怖だけの存在だったのだろうか?とも思うのじゃ。お嫁様と紗国王の魂の繋がりにより、おそらく新人も自分がお嫁様だとどこかの時点で気づいたのであろう」
「はい……阿羅国の建国記では、時折現れる空間の歪み、時空の狭間のようなものが現れる時、人が送られてくるということに気づいて、そこから紗国のお嫁様伝説を知ったそうです……自分もそうだったのだろうと」
「そうか……そしてそのときにはもうすでに、真湖紗様はこの世におられなかったという絶望を味わったということじゃな?」
「はい……」
「きちんとお迎えの出来なかった紗国を恨んでも、仕方ないのう……」
久利紗様は溜息をついて窓から空を見た。
「つまり……何も無ければ作るしか無いと……そう思ったのであろうな。今の妾と同じじゃ」
「え?」
僕は驚いて久利紗様を見つめた。
「どれほどの絶望を味わったか……この世界にたった一人じゃ、元いた日本の家族も友人もおらぬ……真湖紗様の魂に呼ばれてきたのに、その方ももはやいない。それほどの絶望から脱却するには、自分の居場所を作ることだけを考えて日々を暮らすしかなかったのであろう。……考えてみればまだ妾は恵まれていた。衣食住もきちんとあり、身の回りの世話をしてくれるものもおり、手を伸ばせばそこに血の繋がった姉と弟がいたのだからな……だが、新人の目の前には何もない荒れた土地しかない……そんな新人が自分の子孫を残そうと必死になったのも仕方あるまい……新人は、自分を無条件に愛してくれる家族がほしかったのだな」
僕は久利紗様の言葉にじっと耳を傾け、冷えてきた指先をこすり合わせた。
新人君の孤独と絶望がどれほどだったのか……幸せにこの世界で暮らす僕には想像すら出来ない。
「妾もな、この縁談の話を聞いてな……あぁこれは……妾にとって救いなのだな、そう感じたのだ。生まれ故郷を去るという郷愁を感じないわけではないが、それよりも、何も持ってこなかった自分がようやく今、家族を持てる。そう思ってな」
僕は溢れる涙を拭って窓の外で飛翔する蘭紗様を見つめた。
美しく整った横顔にきらきらと輝く銀色の髪……すべてが愛おしいこの人いたから、僕は今ようやく生きている。
それがないのに、新人君は……
「だからな、新人はきっと、生まれてきた血の繋がった子を愛して、慈しんだのではないかな……ここ何百年かはすでに人ならざるものになっていたようだが……まだ人として意識が保てている頃はそうだったと思うぞ」
「……はい……僕もそう思います」
「おそらく語り継がれている恐ろしい伝説は、すべてが本当というわけではないだろう。彼の強大な力を恐れた周りのものが、そう言い伝えただけのこともあると思うぞ、だが……自分を見つけてくれず迎えに来てくれなかった紗国を強く恨んでいたことは……確かだろう……」
「はい……」
久利紗様は再び僕の手を握り、微笑んだ。
「今もまだ、世界に新人が放った間者が潜んでいるという話もある。妾はそれら同胞を見つけ、そして呼び戻し、心から語りかけ開放してやりたい、そう思っておる。あれらもまた、孤独な新人が残した大事な子らじゃ」
「……はい、そうですね……久利紗様の思いはきっと、届くでしょう」
「始祖様にお祈りした時にな、実は声が聞こえたのじゃ」
「え?」
僕は驚いて目を見開いた。
「薫様も婚儀の折に、始祖様のお声を聞いたと」
「はい……」
「妾には、阿羅国のことは頼んだと、そう一言だけだったがな……」
「ぼく、聞こえた」
翠が頬を紅潮させて手をあげたので、僕たちは翠の顔をじっと見つめた。
「あのね、狐の耳のおじいちゃんがね、僕にも微笑んでくれたの。それでね、久利紗様に阿羅国のことは頼んだとおっしゃって、それから……えっと、久利紗様に魔力をいれてたのです」
「魔力を?」
「いれる?」
僕と久利紗様は同時に発声して、そして顔を見合わせた。
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