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14.廃墟探索ホラー動画①(怖さレベル:★★☆)
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(怖さレベル:★★☆:ふつうに怖い話)
ええと、たぶん、
こういうのを見ている方なら、
お分かりになるかと思うんですが。
ときどき、
無性に怖い話とか、
ホラー系の映像を見たくなる時ってありますよね。
幸い、今のご時世、
動画サイトや見放題サービスをちょいと調べれば、
わざわざレンタルショップに通わなくても、
手軽にそういうものを摂取できます。
特に僕は、
肝試しなどと称して廃墟を探索するような度胸も、
いっしょに突撃してくれるような友人もおらず、
もっぱらそういったインターネット上の
恐怖体験に頼り切っていました。
そんな風にホラー系のものが好きだったにも関わらず、
僕は情けないことに……その、けっこうなビビリで。
一軒家に家族と同居していたから良いものの、
ホラー映画のキャラクターが夢に出てきて冷や汗をかいたり、
夜のトイレや風呂場が怖くてたまらなくなったり、
なんてことは今までも多々ありました。
とはいえ、霊感なんてものはなく、
生まれてこの方、幽霊らしきものの
姿形すら、見たことはなかったんですけど。
そして、あの日。
いつものごとく、
休日に自室でダラダラしていた僕は、
なんとなくホラーを摂取したい気分になり、
登録していた見放題サービスを検索していました。
「……お、これいいな」
新着に上がっていた、
そのサイトオリジナルの廃墟探索系ホラー。
特に今回、その舞台が同じ県内ということもあって、
僕は迷うことなくそれを選択しました。
なにせ、廃墟探索がメイン。
夕暮れのほの暗い日差しの下、
キャストが訪れているのは、
同一県内とはいえ見たことの無い廃家です。
「こんなトコ、あったんだなぁ」
木々に囲まれているその場所。
家の外壁は長年風雨に晒されたせいか、
コケやツタが絡まっていて、
とても人の住めるような状況ではありません。
かつて四人家族の暮らしていたその家は、
息子二人が殺害されるという事件をきっかけに、
それを苦にして両親は自殺した――という、
ウソかホントかもわからない、テロップでの解説が表示されました。
『さあ、それではさっそく中を探索しましょう……』
やや浮かれ気味のリポーターが、
マイク片手にそろそろと中へ侵入しようとしています。
『失礼しまーす……』
――キィイン
リポーターが、その家に侵入する、
まさにその瞬間。
鋭い耳鳴りが鼓膜を揺らしました。
(ん、なんだ……?)
ぞわり、と今まで体感したことのないほどの悪寒。
突如として緊張状態に入った身体は、
真正面で流れている動画に釘付けでありながら、
周囲になにごとかの異常が起きていることを知らせています。
「……っ?」
ひやりと冷えた室内をぐるりと見回しても、
なんら異変は見当たりません。
天井、壁、床、ベッドに机も、
いつもの通りのまま。
パソコンを前に座るソファの後ろだって、
本棚があるばかり。
だというのに、
自分の部屋、ここだけがまるで異空間のように
冷え切っているのです。
『さあ、リビングを突っ切り、問題の二階へと上がっていきます……』
目を離した隙に、
リポーターはしずしずと廃屋の中を通り、
古びた階段へと足を踏み出しています。
(まさか、呼び寄せた……?)
ホラー映像を見ていると、
妙なものを呼び寄せやすい、というのは
皆さん聞きかじっていることだと思います。
僕も霊感など無いものの、
こんな動画を見ていたせいで、
きっと見えないものを呼び寄せたのだろう、
そう考え、震える指で動画の視聴を止めようとしました。
『さあ……ここが、噂の部屋。
二人の息子が亡くなった、問題の洋室です!』
ガラリ、
と映像が映り変わったその場面。
「え……?」
そこは、僕の部屋でした。
天井、壁、床、ベッドに机も、
いつもの通りのまま。
廃屋にあるまじき明るい色彩、
テレビカメラが光を調節をしているにしても、
あきらかに生活感のある、そこ。
誰もいないソファの前に置かれた机には、
開かれていない、ノートパソコン。
「なん……どうして……」
ソファの後ろに置かれた本棚も映し出され、
並べられた本の帯の一致を理解した瞬間の
僕の悪寒は、さきほどとは比べ物になりません。
『いやー……まさか、ここで殺人事件が起きたなんて。
まったくおぞましいですね』
リポーターが、まるで感情のこもっていない声で、
一歩二歩と歩みを進めていきます。
うちは、四人家族。
長男は僕――弟は、隣室にいる。
殺人事件……
二人の息子が殺された……
それが起きたのは、いったいいつ――?
ギシリ。
腰掛けたソファが、
妙な音を立てて軋みました。
『んん? おやぁ、窓が開いていますねぇ。
いや、ガラスが壊されているのかな?』
リポーターが、破れたカーテンをめくる様に
下を覗きます。
割れた窓。
真っ暗なその景色にブレる、
細く白い――影。
「……ッ!?」
――キィイン。
耳鳴り。
それと共に、
一切の音が消え去りました。
目前の動画からも、
身じろぐ自分の吐息すら、
耳に入らない。
カタン。
窓辺から、
沈黙に映える、物音。
「……っ、……」
せり上がった恐怖が、
今にも弾けようとした、その瞬間。
>>
ええと、たぶん、
こういうのを見ている方なら、
お分かりになるかと思うんですが。
ときどき、
無性に怖い話とか、
ホラー系の映像を見たくなる時ってありますよね。
幸い、今のご時世、
動画サイトや見放題サービスをちょいと調べれば、
わざわざレンタルショップに通わなくても、
手軽にそういうものを摂取できます。
特に僕は、
肝試しなどと称して廃墟を探索するような度胸も、
いっしょに突撃してくれるような友人もおらず、
もっぱらそういったインターネット上の
恐怖体験に頼り切っていました。
そんな風にホラー系のものが好きだったにも関わらず、
僕は情けないことに……その、けっこうなビビリで。
一軒家に家族と同居していたから良いものの、
ホラー映画のキャラクターが夢に出てきて冷や汗をかいたり、
夜のトイレや風呂場が怖くてたまらなくなったり、
なんてことは今までも多々ありました。
とはいえ、霊感なんてものはなく、
生まれてこの方、幽霊らしきものの
姿形すら、見たことはなかったんですけど。
そして、あの日。
いつものごとく、
休日に自室でダラダラしていた僕は、
なんとなくホラーを摂取したい気分になり、
登録していた見放題サービスを検索していました。
「……お、これいいな」
新着に上がっていた、
そのサイトオリジナルの廃墟探索系ホラー。
特に今回、その舞台が同じ県内ということもあって、
僕は迷うことなくそれを選択しました。
なにせ、廃墟探索がメイン。
夕暮れのほの暗い日差しの下、
キャストが訪れているのは、
同一県内とはいえ見たことの無い廃家です。
「こんなトコ、あったんだなぁ」
木々に囲まれているその場所。
家の外壁は長年風雨に晒されたせいか、
コケやツタが絡まっていて、
とても人の住めるような状況ではありません。
かつて四人家族の暮らしていたその家は、
息子二人が殺害されるという事件をきっかけに、
それを苦にして両親は自殺した――という、
ウソかホントかもわからない、テロップでの解説が表示されました。
『さあ、それではさっそく中を探索しましょう……』
やや浮かれ気味のリポーターが、
マイク片手にそろそろと中へ侵入しようとしています。
『失礼しまーす……』
――キィイン
リポーターが、その家に侵入する、
まさにその瞬間。
鋭い耳鳴りが鼓膜を揺らしました。
(ん、なんだ……?)
ぞわり、と今まで体感したことのないほどの悪寒。
突如として緊張状態に入った身体は、
真正面で流れている動画に釘付けでありながら、
周囲になにごとかの異常が起きていることを知らせています。
「……っ?」
ひやりと冷えた室内をぐるりと見回しても、
なんら異変は見当たりません。
天井、壁、床、ベッドに机も、
いつもの通りのまま。
パソコンを前に座るソファの後ろだって、
本棚があるばかり。
だというのに、
自分の部屋、ここだけがまるで異空間のように
冷え切っているのです。
『さあ、リビングを突っ切り、問題の二階へと上がっていきます……』
目を離した隙に、
リポーターはしずしずと廃屋の中を通り、
古びた階段へと足を踏み出しています。
(まさか、呼び寄せた……?)
ホラー映像を見ていると、
妙なものを呼び寄せやすい、というのは
皆さん聞きかじっていることだと思います。
僕も霊感など無いものの、
こんな動画を見ていたせいで、
きっと見えないものを呼び寄せたのだろう、
そう考え、震える指で動画の視聴を止めようとしました。
『さあ……ここが、噂の部屋。
二人の息子が亡くなった、問題の洋室です!』
ガラリ、
と映像が映り変わったその場面。
「え……?」
そこは、僕の部屋でした。
天井、壁、床、ベッドに机も、
いつもの通りのまま。
廃屋にあるまじき明るい色彩、
テレビカメラが光を調節をしているにしても、
あきらかに生活感のある、そこ。
誰もいないソファの前に置かれた机には、
開かれていない、ノートパソコン。
「なん……どうして……」
ソファの後ろに置かれた本棚も映し出され、
並べられた本の帯の一致を理解した瞬間の
僕の悪寒は、さきほどとは比べ物になりません。
『いやー……まさか、ここで殺人事件が起きたなんて。
まったくおぞましいですね』
リポーターが、まるで感情のこもっていない声で、
一歩二歩と歩みを進めていきます。
うちは、四人家族。
長男は僕――弟は、隣室にいる。
殺人事件……
二人の息子が殺された……
それが起きたのは、いったいいつ――?
ギシリ。
腰掛けたソファが、
妙な音を立てて軋みました。
『んん? おやぁ、窓が開いていますねぇ。
いや、ガラスが壊されているのかな?』
リポーターが、破れたカーテンをめくる様に
下を覗きます。
割れた窓。
真っ暗なその景色にブレる、
細く白い――影。
「……ッ!?」
――キィイン。
耳鳴り。
それと共に、
一切の音が消え去りました。
目前の動画からも、
身じろぐ自分の吐息すら、
耳に入らない。
カタン。
窓辺から、
沈黙に映える、物音。
「……っ、……」
せり上がった恐怖が、
今にも弾けようとした、その瞬間。
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