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18.神社の顔①(怖さレベル:★★★)
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(怖さレベル:★★★:旧2ch 洒落怖くらいの話)
あれは私が、
小学校二年生だった頃です。
私の通う小学校から少し離れた場所に、
児童公園がありました。
隣には小さな丸い丘があり、
幼い頃はよくそのそこで遊んでいたものです。
同じクラスのアケミちゃんという女の子と
いつも二人で遊んでいたのですが、
梅雨もあけようかという夏の始まりに、
マリさんという子とそこで知り合いました。
彼女は同じ学校に通う五年生だと言い、
かなり頭脳明晰な女の子でした。
特にオカルト系が好きだったようで、
怖い話はもちろん、
こっくりさんや何かのおまじないまで、
様々な遊びを教えてくれました。
私は霊感もないし、
怖いことも苦手だったのですが、
友だちのアケミちゃんは真逆です。
以前から霊感があると周りに吹聴したり、
人形を集めて呪いをかけようとしたりと不思議な所もあり、
マリさんとはとても気が合うようでした。
そんなマリさんと出会ってしばらく、
時期は夏休みに突入していました。
その日もいつも通り、
アケミちゃんとのんびり公園でアイスを食べていると、
マリさんが現れました。
「ねぇねぇ、二人とも。
この隣の山にある神社のウワサ、知ってる?」
目をらんらんと輝かせる彼女は、
興奮を隠しきれない様子です。
「この隣の丘ね、古墳っていって中に死んじゃった人が眠ってるの。
それで、あの上に神社があって、その人を祭ってるんだって」
「えっ!アレってお墓だったの?」
「そうそう。でもね、すっごーく強い霊で、
恨みをもって死んじゃったから、神社を立てて鎮めてるんだって」
「そんな怖いのが隣にあったなんて……」
今考えると嘘だとわかるんですが、
当時は完全に信じきっていました。
マリさんは本当に色々なことを知っていたし、
今回もその知識のうちの一つなんだって。
「そうでしょう!
それでね……あの神社、行ってみたいと思わない?」
「えっ……」
私はぶるぶると首を振りましたが、
そんな姿は目に入らないのか、彼女は更に言いつのります。
「あのね、そのてっぺんにある神社にお参りした帰りに、
石段のところで振り返っちゃいけないの」
「えっ?」
「もし振り返っちゃうとね……
ユーレイにとりつかれちゃうんだって!」
悠々と語るマリさんは、
話にそぐわぬ満面の笑みを浮かべていました。
「ねぇ、試してみたくない?」
とりつかれる、といったその口でそんなことを言うのです。
「あの神社さ……これから行ってみようよ!」
彼女の甘い誘いが心をくすぐりました。
「……行く!」
真っ先に答えたのはアケミちゃんでした。
「え、アケミちゃん、とりつかれちゃうかもしれないんだよ」
「だいじょーぶ!あたしには、シュゴレイがついてるから!」
アケミちゃんは、
こういうオカルトに傾倒したところがありました。
以前もこっくりさんでひどい目にあったのに、
今度も首をつっこむ気まんまんでした。
「うぅ」
私は迷いました。
怖いし、正直乗り気じゃありません。
でも、ここで一人取り残されるのはもっと怖い。
だからしぶしぶ頷きました。
「よーし! それじゃ、行こう」
うきうきのマリさんを先頭にして、
いよいよ古墳の石段を上ります。
石段はほんの二十段くらいの短いもので、
小学生の足でもあっという間に頂上にたどり着きました。
真上には色あせた鳥居があり、
それをくぐった正面にも、
すすけた小さな神殿があります。
神社と聞かされてはいましたが、
お稲荷様のような小さな祠です。
古ぼけていてあまり掃除もされていないのか、
葉っぱや土埃で汚れていました。
「よし、到着。それじゃ戻ろうか。
それで、いちにのさん、で振り返るんだよ」
「あ、ちょっと待って」
せっかく来たのだから、
とポケットに入っていた二十円を、
目前の小さなお賽銭箱に入れて軽く手を合わせました。
他の二人はそれを無言で眺めています。
「……もういい?」
アケミちゃんは焦れて石畳をこつんこつんと蹴っています。
私は慌てて二人に並ぶと、
一緒に石段を下り始めました。
足元の石段は苔で覆われ、
空気もどことなく重く重く覆いかぶさってきます。
「いい?それじゃいくよ」
興奮を隠しきれない声音でマリさんは言います。
私は、
緊張でごくりと唾を飲み込みました。
「……いち、にの、さん!」
彼女の合図とともに、
思い切って後ろを振り向きました。
しん、
――何もいません。
背後にはさきほどお参りした神殿が、
ただ静かに鎮座しているのみです。
「どうしたー?」
マリさんに声をかけられてハッと見ると、
彼女だけ真正面を向いたままでした。
「マリさん、ひどい! 自分だけ!」
「あははー、いいじゃない。
なんにもなかったんでしょ?」
悪びれもせずに言うマリさんに、
むかむかと顔が火照ってきました。
アケミちゃんにも言いつけてやろう、
と傍らの彼女に声をかけます。
「アケミちゃん、マリさんったらねー」
「……いる」
「えっ?」
アケミちゃんが、
振り返ったままの姿勢で無表情に言いました。
その視線は、
頂上の神社に向いています。
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あれは私が、
小学校二年生だった頃です。
私の通う小学校から少し離れた場所に、
児童公園がありました。
隣には小さな丸い丘があり、
幼い頃はよくそのそこで遊んでいたものです。
同じクラスのアケミちゃんという女の子と
いつも二人で遊んでいたのですが、
梅雨もあけようかという夏の始まりに、
マリさんという子とそこで知り合いました。
彼女は同じ学校に通う五年生だと言い、
かなり頭脳明晰な女の子でした。
特にオカルト系が好きだったようで、
怖い話はもちろん、
こっくりさんや何かのおまじないまで、
様々な遊びを教えてくれました。
私は霊感もないし、
怖いことも苦手だったのですが、
友だちのアケミちゃんは真逆です。
以前から霊感があると周りに吹聴したり、
人形を集めて呪いをかけようとしたりと不思議な所もあり、
マリさんとはとても気が合うようでした。
そんなマリさんと出会ってしばらく、
時期は夏休みに突入していました。
その日もいつも通り、
アケミちゃんとのんびり公園でアイスを食べていると、
マリさんが現れました。
「ねぇねぇ、二人とも。
この隣の山にある神社のウワサ、知ってる?」
目をらんらんと輝かせる彼女は、
興奮を隠しきれない様子です。
「この隣の丘ね、古墳っていって中に死んじゃった人が眠ってるの。
それで、あの上に神社があって、その人を祭ってるんだって」
「えっ!アレってお墓だったの?」
「そうそう。でもね、すっごーく強い霊で、
恨みをもって死んじゃったから、神社を立てて鎮めてるんだって」
「そんな怖いのが隣にあったなんて……」
今考えると嘘だとわかるんですが、
当時は完全に信じきっていました。
マリさんは本当に色々なことを知っていたし、
今回もその知識のうちの一つなんだって。
「そうでしょう!
それでね……あの神社、行ってみたいと思わない?」
「えっ……」
私はぶるぶると首を振りましたが、
そんな姿は目に入らないのか、彼女は更に言いつのります。
「あのね、そのてっぺんにある神社にお参りした帰りに、
石段のところで振り返っちゃいけないの」
「えっ?」
「もし振り返っちゃうとね……
ユーレイにとりつかれちゃうんだって!」
悠々と語るマリさんは、
話にそぐわぬ満面の笑みを浮かべていました。
「ねぇ、試してみたくない?」
とりつかれる、といったその口でそんなことを言うのです。
「あの神社さ……これから行ってみようよ!」
彼女の甘い誘いが心をくすぐりました。
「……行く!」
真っ先に答えたのはアケミちゃんでした。
「え、アケミちゃん、とりつかれちゃうかもしれないんだよ」
「だいじょーぶ!あたしには、シュゴレイがついてるから!」
アケミちゃんは、
こういうオカルトに傾倒したところがありました。
以前もこっくりさんでひどい目にあったのに、
今度も首をつっこむ気まんまんでした。
「うぅ」
私は迷いました。
怖いし、正直乗り気じゃありません。
でも、ここで一人取り残されるのはもっと怖い。
だからしぶしぶ頷きました。
「よーし! それじゃ、行こう」
うきうきのマリさんを先頭にして、
いよいよ古墳の石段を上ります。
石段はほんの二十段くらいの短いもので、
小学生の足でもあっという間に頂上にたどり着きました。
真上には色あせた鳥居があり、
それをくぐった正面にも、
すすけた小さな神殿があります。
神社と聞かされてはいましたが、
お稲荷様のような小さな祠です。
古ぼけていてあまり掃除もされていないのか、
葉っぱや土埃で汚れていました。
「よし、到着。それじゃ戻ろうか。
それで、いちにのさん、で振り返るんだよ」
「あ、ちょっと待って」
せっかく来たのだから、
とポケットに入っていた二十円を、
目前の小さなお賽銭箱に入れて軽く手を合わせました。
他の二人はそれを無言で眺めています。
「……もういい?」
アケミちゃんは焦れて石畳をこつんこつんと蹴っています。
私は慌てて二人に並ぶと、
一緒に石段を下り始めました。
足元の石段は苔で覆われ、
空気もどことなく重く重く覆いかぶさってきます。
「いい?それじゃいくよ」
興奮を隠しきれない声音でマリさんは言います。
私は、
緊張でごくりと唾を飲み込みました。
「……いち、にの、さん!」
彼女の合図とともに、
思い切って後ろを振り向きました。
しん、
――何もいません。
背後にはさきほどお参りした神殿が、
ただ静かに鎮座しているのみです。
「どうしたー?」
マリさんに声をかけられてハッと見ると、
彼女だけ真正面を向いたままでした。
「マリさん、ひどい! 自分だけ!」
「あははー、いいじゃない。
なんにもなかったんでしょ?」
悪びれもせずに言うマリさんに、
むかむかと顔が火照ってきました。
アケミちゃんにも言いつけてやろう、
と傍らの彼女に声をかけます。
「アケミちゃん、マリさんったらねー」
「……いる」
「えっ?」
アケミちゃんが、
振り返ったままの姿勢で無表情に言いました。
その視線は、
頂上の神社に向いています。
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