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43.裏山公園の幽霊②(怖さレベル:★☆☆)
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「あ、久保ちゃんはホント、ついてきてくれるだけで良いの。
あたし、幽霊に謝りたくて……ユリカ、まだ目を覚ましてないの。
あの滑り台のところで謝るから……リンちゃんは、
あたしに何かあったら連絡してもらうのをお願いしたくて」
と、困ったように笑いました。
それだけ聞けば、確かにその程度であれば、
協力してあげるのも悪くないように思えました。
事実、ユリカちゃんはここ二、三日学校にきていません。
風邪というのだって、きっと嘘なのでしょう。
「……ついてくだけでいいんだね?」
「うん、お願い!」
パン! と両手を合わせた彼女に、
よし、と頷こうとした、その時。
ピリリリ。
「わっ」
私の持つコドモ携帯が鳴りました。
「マユちゃん、ちょっとごめん……お母さんからだ」
携帯の表示に出た名前に、慌てて電話へと出ました。
「もしもし、どしたの?」
『もしもし!? 実はね、おばあちゃんが……倒れて! すぐ病院行くから、すぐうちに戻ってきなさい!』
「えっ……おばあちゃんが!?」
県外に住む母方の祖母には、いつも非常にかわいがってもらっていました。
その一大事となれば、すぐさま向かわねばなりません。
「マユちゃん、ごめん! おばあちゃんが倒れて……
すぐうちに帰んなきゃいけなくて……悪いけど、別の子誘ってくれる?」
「えっ……く、久保ちゃん!?」
「ホント、ごめん!!」
未だ呆然と佇む彼女に頭だけ下げて、
私はわき目もふらずに自宅へと一直線で帰りました。
友情ももちろん大事ですが、
祖母が倒れたとなれば話は別です。
母はすでに支度も済んでいて、
とんで帰ってきた私を車へ放り込み、
県外の病院へと向かったのです。
「おばあちゃん、元気そうで良かったね」
「う……うん」
まさに飛ぶように急いて向かった祖母の入院先。
受付を済ませて病室に入れば、
危篤とは程遠い状態の朗らかな祖母の姿がありました。
拍子抜けする私と母に対し、
祖母の傍らにたたずむ叔父さん――祖母の弟がペコペコと頭を下げてきました。
なんでも、祖母はいわゆる食あたり、
つまり食中毒でぶっ倒れ、一時は本当に危険な状態だったそうですが、
胃洗浄と点滴などでだいぶ持ち直したのだそうです。
てっきり、脳か心臓の疾患だと思っていた私と母は、
安心してヘロヘロと病室に崩れ落ちたのでした。
(あれ……マユちゃん、お休み?)
翌日、学校へ顔を出すと、
昨日あんな話をした彼女の姿がありません。
(……まさか、一人でアレを実行しちゃったんじゃ……)
祖母の件でドタキャンしてしまった負い目が、
じわじわと私を苛みます。
まさか、私が一緒に行かなかったせいで、
もしかしたら、彼女は――と、
登校して早々、泣きそうな気分になっていると、
ガラッと勢いよくドアを開けて、ユリカちゃんが元気に登校してきました。
「おはよー!」
「あ、あれ……ユリカちゃん、大丈夫なの?」
私がマユちゃんから聞いていた、
彼女が幽霊によって呪われた、というような話を思い返し、思わず駆け寄りました。
「えー? あっ、風邪のこと? うん、ちょっと熱が長引いただけだし」
「え? い、いやそうじゃなくて……あの山の上の公園、行ったって聞いたけど」
笑う彼女の腕を引き、
教室の隅でそっと尋ねました。
「うん? 公園って……あの幽霊が出るトコ?」
「う、うん……行ったんでしょ?」
と、私はこそこそと問いかけましたが、彼女はキョトンとした表情を晒し、
「え、行ってないけど」
「……えっ?」
まるきりつじつまの合わないことを言うのです。
「行かないよぉ。あたし、お化けとか苦手だしー、
第一、行きたがる友だちもいないしさぁ」
と、少々気恥ずかし気につぶやく彼女に、
私はますます意味がわからなくなり、おずおずと口に出しました。
「え……だって、マユちゃんがユリカちゃんと一緒に行ったって言ってたよ」
昨日の記憶を思い返しつつ、ハッキリと彼女に伝えると、
「え? マユって……だって、あの子、今週いっぱいおじいちゃんち帰るって言ってたけど」
「……はっ?」
私はその言葉に、頭が真っ白になりました。
「え、う、ウソ……昨日、確かに」
「昨日? うーんと……あっ、これこれ。
携帯におじいちゃんちの写真、送ってくれてるよ」
ひょい、と彼女が子ども用携帯の画面を見せてくれました。
そこには、彼女の祖父母らしき人物と、
はにかみながら笑う本人の映像が、昨日の日付で記載されています。
「そ……そっか。ごめん、なんか勘違いしてたみたい……」
「そう?」
それ以上追及することもできず、私はフラフラと席に着きました。
(え、なに? ……どういう、こと?)
昨日会話した人物、それは間違いなく、
マユちゃん――そう、隣の席の彼女で間違いありません。
しかし、確かに記憶を思い返せば、
朝から彼女がいたかどうか、ハッキリと思い返せないのです。
(え……あ、れ?)
それどころか、私がマユちゃんと思い込んでいた彼女。
その彼女の顔がなぜか、ぼんやりとぼやけています。
そればかりではありません。
彼女の服装、声、表情に至るまで――
確かに言葉を交わしたはずであるのに、どこか曖昧に
ぼやけて、薄れて、思い返せないのです。
(え……じゃあ、マユちゃん……いや、あの子は)
彼女はいったい、誰だった?
いや――何だった?
そして、祖母の危篤の連絡が入らず、
誘われるがままについていっていたら――どうなっていた?
私を連れていこうとした彼女の様子をどうにか思い出そうとしても、
幻の向こうに掻き消えて、ろくに映像にすらなりませんでした。
翌週。
無事に学校に登校してきた本物のマユちゃんに、
先週のことを詳しく聞きました。
やはり、ユリカちゃんの話していた通り、
一週間まるまる遠方の祖父母のうちに行っていたそうで、
山の上の公園の話を出してみても、
ウワサ程度しか知らないようでした。
そして、その怪談――幽霊の出る滑り台の話は、
結局私が卒業するまで、ブームが去ったり再来したりながらも、
完全に消え去ることなく残っていました。
あの子――マユちゃんに扮していた少女は、
あの公園に現れるという幽霊、であったのでしょうか。
それとも、あの怪談に引き込まれてしまった、
被害者の一人であったのでしょうか。
もはやおぼろげな記憶としてしか残っていない彼女のことを、
成人し、子を成した今、再びこの子が誘われるのではないかと、
ただそればかりが恐ろしいのです。
あたし、幽霊に謝りたくて……ユリカ、まだ目を覚ましてないの。
あの滑り台のところで謝るから……リンちゃんは、
あたしに何かあったら連絡してもらうのをお願いしたくて」
と、困ったように笑いました。
それだけ聞けば、確かにその程度であれば、
協力してあげるのも悪くないように思えました。
事実、ユリカちゃんはここ二、三日学校にきていません。
風邪というのだって、きっと嘘なのでしょう。
「……ついてくだけでいいんだね?」
「うん、お願い!」
パン! と両手を合わせた彼女に、
よし、と頷こうとした、その時。
ピリリリ。
「わっ」
私の持つコドモ携帯が鳴りました。
「マユちゃん、ちょっとごめん……お母さんからだ」
携帯の表示に出た名前に、慌てて電話へと出ました。
「もしもし、どしたの?」
『もしもし!? 実はね、おばあちゃんが……倒れて! すぐ病院行くから、すぐうちに戻ってきなさい!』
「えっ……おばあちゃんが!?」
県外に住む母方の祖母には、いつも非常にかわいがってもらっていました。
その一大事となれば、すぐさま向かわねばなりません。
「マユちゃん、ごめん! おばあちゃんが倒れて……
すぐうちに帰んなきゃいけなくて……悪いけど、別の子誘ってくれる?」
「えっ……く、久保ちゃん!?」
「ホント、ごめん!!」
未だ呆然と佇む彼女に頭だけ下げて、
私はわき目もふらずに自宅へと一直線で帰りました。
友情ももちろん大事ですが、
祖母が倒れたとなれば話は別です。
母はすでに支度も済んでいて、
とんで帰ってきた私を車へ放り込み、
県外の病院へと向かったのです。
「おばあちゃん、元気そうで良かったね」
「う……うん」
まさに飛ぶように急いて向かった祖母の入院先。
受付を済ませて病室に入れば、
危篤とは程遠い状態の朗らかな祖母の姿がありました。
拍子抜けする私と母に対し、
祖母の傍らにたたずむ叔父さん――祖母の弟がペコペコと頭を下げてきました。
なんでも、祖母はいわゆる食あたり、
つまり食中毒でぶっ倒れ、一時は本当に危険な状態だったそうですが、
胃洗浄と点滴などでだいぶ持ち直したのだそうです。
てっきり、脳か心臓の疾患だと思っていた私と母は、
安心してヘロヘロと病室に崩れ落ちたのでした。
(あれ……マユちゃん、お休み?)
翌日、学校へ顔を出すと、
昨日あんな話をした彼女の姿がありません。
(……まさか、一人でアレを実行しちゃったんじゃ……)
祖母の件でドタキャンしてしまった負い目が、
じわじわと私を苛みます。
まさか、私が一緒に行かなかったせいで、
もしかしたら、彼女は――と、
登校して早々、泣きそうな気分になっていると、
ガラッと勢いよくドアを開けて、ユリカちゃんが元気に登校してきました。
「おはよー!」
「あ、あれ……ユリカちゃん、大丈夫なの?」
私がマユちゃんから聞いていた、
彼女が幽霊によって呪われた、というような話を思い返し、思わず駆け寄りました。
「えー? あっ、風邪のこと? うん、ちょっと熱が長引いただけだし」
「え? い、いやそうじゃなくて……あの山の上の公園、行ったって聞いたけど」
笑う彼女の腕を引き、
教室の隅でそっと尋ねました。
「うん? 公園って……あの幽霊が出るトコ?」
「う、うん……行ったんでしょ?」
と、私はこそこそと問いかけましたが、彼女はキョトンとした表情を晒し、
「え、行ってないけど」
「……えっ?」
まるきりつじつまの合わないことを言うのです。
「行かないよぉ。あたし、お化けとか苦手だしー、
第一、行きたがる友だちもいないしさぁ」
と、少々気恥ずかし気につぶやく彼女に、
私はますます意味がわからなくなり、おずおずと口に出しました。
「え……だって、マユちゃんがユリカちゃんと一緒に行ったって言ってたよ」
昨日の記憶を思い返しつつ、ハッキリと彼女に伝えると、
「え? マユって……だって、あの子、今週いっぱいおじいちゃんち帰るって言ってたけど」
「……はっ?」
私はその言葉に、頭が真っ白になりました。
「え、う、ウソ……昨日、確かに」
「昨日? うーんと……あっ、これこれ。
携帯におじいちゃんちの写真、送ってくれてるよ」
ひょい、と彼女が子ども用携帯の画面を見せてくれました。
そこには、彼女の祖父母らしき人物と、
はにかみながら笑う本人の映像が、昨日の日付で記載されています。
「そ……そっか。ごめん、なんか勘違いしてたみたい……」
「そう?」
それ以上追及することもできず、私はフラフラと席に着きました。
(え、なに? ……どういう、こと?)
昨日会話した人物、それは間違いなく、
マユちゃん――そう、隣の席の彼女で間違いありません。
しかし、確かに記憶を思い返せば、
朝から彼女がいたかどうか、ハッキリと思い返せないのです。
(え……あ、れ?)
それどころか、私がマユちゃんと思い込んでいた彼女。
その彼女の顔がなぜか、ぼんやりとぼやけています。
そればかりではありません。
彼女の服装、声、表情に至るまで――
確かに言葉を交わしたはずであるのに、どこか曖昧に
ぼやけて、薄れて、思い返せないのです。
(え……じゃあ、マユちゃん……いや、あの子は)
彼女はいったい、誰だった?
いや――何だった?
そして、祖母の危篤の連絡が入らず、
誘われるがままについていっていたら――どうなっていた?
私を連れていこうとした彼女の様子をどうにか思い出そうとしても、
幻の向こうに掻き消えて、ろくに映像にすらなりませんでした。
翌週。
無事に学校に登校してきた本物のマユちゃんに、
先週のことを詳しく聞きました。
やはり、ユリカちゃんの話していた通り、
一週間まるまる遠方の祖父母のうちに行っていたそうで、
山の上の公園の話を出してみても、
ウワサ程度しか知らないようでした。
そして、その怪談――幽霊の出る滑り台の話は、
結局私が卒業するまで、ブームが去ったり再来したりながらも、
完全に消え去ることなく残っていました。
あの子――マユちゃんに扮していた少女は、
あの公園に現れるという幽霊、であったのでしょうか。
それとも、あの怪談に引き込まれてしまった、
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