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103.もらい物のFAX①(怖さレベル:★★★)
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(怖さレベル:★★★:旧2ch 洒落怖くらいの話)
いやぁねぇ。あたし、霊感なんてモンはないから、
あんなヘンテコな体験したのは、後にも先にもアレ一回きりですよ。
あたし自身はしがない事務職をやっていまして。
勤めてたトコは給料は安かったけど、まぁ居心地のい会社でねぇ。
なんだかんだ、三十年くらい勤めさせてもらってたんですよ。
うちの会社の業務は、ゴミの運搬がメインでねぇ。
よく、産業廃棄物、とかって聞くでしょう?
あぁいったモンだとか、個人のうちの大物家具の処分とか、
そういった類を引き受けていたんです。
そういう仕事を受けてると、まぁイロイロなものが出てくるわけで。
あたしがビックリしたのは、仏壇の回収を依頼された時でしたよ。
魂抜き、って言うんですかね?
アレもやらないで、ただかさばるから捨てたい、と……。
うちは寺とも神社ともかかわってないから、
先にそういうトコロに相談してください、って言っても、
とにかく早く処分したい、の一点ばり。
結局、うちで廃棄処分したんですけど、持ち主の方は大丈夫だったんですかねぇ……
あ、幸い、うちの社員はみな、なにごともありませんでしたけど。
おや……話がそれてしまいましたね。
それでは本題の話に入りたいと思います。
そうそう、あれはたしか、もみじも色づきはじめた十月も半ばの頃でした。
その日は、個人のお宅の片付けの仕事がありまして。
一応、名目上はひっこしに伴う家具類の処分、って依頼だったんです。
実際、処分品の数はとんでもない量で、もはやゴミ屋敷状態だったようなんですが……。
見積もりに行った営業は、どうにもただのゴミ屋敷とは思えない、って言うんですよ。
どうも、人が死んでる感じがする、って。
……そういう現場をいくつも見てきた人間の直感、って言うんですかねぇ。
ゴミでいっぱいなのに、部屋の一部分だけ妙にキレイだとか、
金目のものだけがさっぱり無いとか……。
人の手が入った形跡はあるのに、ほとんど手がつけられていない感じが、
どうにも怪しいのだと。
依頼主にそれとなく探りを入れても、
あいまいにはぐらかされてしまったようですが……。
まぁそんなこんなあったものの、うちの回収担当が五人で伺って、
おおがかりな作業を終えて、会社へ帰ってきたんです。
「いや~……ありゃー参った。ひでぇコトになってたわ」
「まぁ、虫が湧いてなかっただけマシだよ。夏場はマジでつらいからな……」
と、やはりなかなか壮絶な作業だったらしく、
作業員たちは事務所にもどってそうそう、ぐったりとイスにもたれかかっていました。
あたしら事務員がねぎらってお茶など出してあげていたんですが、そのうちの一人、
臨時アルバイトの子が「あ……そうだ、これ良かったら」と大きな箱を差し出してきたんです。
「え……どうしたの、これ」
茶色の段ボールに、アルファベットで型番が記された箱。
それはまだ開封された形跡のない、FAX機器でした。
「未使用のヤツが何個かったんで。持ち主の人に聞いたら、ゴミにするだけだから貰っていいよ、って言ってくれて」
「ああ、そうだったの……ありがたい、けど」
会社で使っているFAXは、長年使用していることもあり、
だいぶインクの出も悪くなって、ちょうど買い替えを検討していました。
しかし。いくら新品とはいえ、ワケあり物件の疑惑の場所の物品です。
あたしが受け取りに躊躇していると、
「大丈夫だってぇ! もし怨念がついてるとしても、家自体とか、依頼人さんの方でしょー」
と、経理を担当している奥村さんという女性が、ヒョイとそれをうけとりました。
彼女は罰当たりなセリフでケラケラと笑いつつ、
さっそく目の前でFAXの箱を開封してしまったんです。
「まぁ、ボチボチ古い型っぽいけど、電源さえ入りゃへいきよ」
と、事務所の古いFAXを取り外し、
テキパキと新しいそれに配線をつなぎ直しました。
「ん! 電源もバッチリ。使えるよ、コレ」
新品を購入する資金が浮いた! と彼女はニコニコ上機嫌です。
他のメンバーたちも「掘り出しものがあってよかったなぁ」だとか、
「営業がおおげさに言ってたけど、ただのゴミ屋敷だったよなぁ」だとか、
好き勝手に話を盛り上げていました。
(まぁ……そうよね。幽霊だとか、お化けだって……
まさか、コレにとり憑くなんてこと、ないよねぇ)
あたしは微妙に腑に落ちないものを感じつつも、
そうやって、むりに自分自身を納得させました。
それから、しばらく。
例のFAX機器は、まったくなんの問題もなく稼働し、
日々が平穏に過ぎていきました。
前のものは、五回に一回は紙詰まりをおこすようなありさまだったので、
順調に紙をはきだす新品は、事務所の面々にとって待ってましたといわんばかりでした。
しかし――そんなFAXに違和感を覚えはじめたのは、
数か月後、月末のある日のことでした。
どこの会社でもあるあるだと思いますが、
月末月初は、請求書の締めやら発行やらで、特に忙しくなタイミングです。
うちの会社も毎度慌ただしく、
パート勤めの自分はいつも四時で帰るのですが、
月末だけはいつも七時まで延長で勤めていました。
「あー……これFAXしたら、ようやく終わりですよ」
「おつかれさま。すっかりこんな時間だものね」
ともに事務をやっている年下の多田野さんという女性が、
紙束をかかえつつ、ヘロヘロと机にもたれました。
「後片付けしておくから、送ってきちゃいなよ」
「はーい……」
つくえに散乱した書類を整え、給湯室でコップを片付けてからもどると、
事務所内の雰囲気が妙です。
社内の片隅――FAX機器の前で、さきほどの多田野さんと経理の奥村さんが、
揃って眉をよせ、ジッと機械を見つめていました。
>>
いやぁねぇ。あたし、霊感なんてモンはないから、
あんなヘンテコな体験したのは、後にも先にもアレ一回きりですよ。
あたし自身はしがない事務職をやっていまして。
勤めてたトコは給料は安かったけど、まぁ居心地のい会社でねぇ。
なんだかんだ、三十年くらい勤めさせてもらってたんですよ。
うちの会社の業務は、ゴミの運搬がメインでねぇ。
よく、産業廃棄物、とかって聞くでしょう?
あぁいったモンだとか、個人のうちの大物家具の処分とか、
そういった類を引き受けていたんです。
そういう仕事を受けてると、まぁイロイロなものが出てくるわけで。
あたしがビックリしたのは、仏壇の回収を依頼された時でしたよ。
魂抜き、って言うんですかね?
アレもやらないで、ただかさばるから捨てたい、と……。
うちは寺とも神社ともかかわってないから、
先にそういうトコロに相談してください、って言っても、
とにかく早く処分したい、の一点ばり。
結局、うちで廃棄処分したんですけど、持ち主の方は大丈夫だったんですかねぇ……
あ、幸い、うちの社員はみな、なにごともありませんでしたけど。
おや……話がそれてしまいましたね。
それでは本題の話に入りたいと思います。
そうそう、あれはたしか、もみじも色づきはじめた十月も半ばの頃でした。
その日は、個人のお宅の片付けの仕事がありまして。
一応、名目上はひっこしに伴う家具類の処分、って依頼だったんです。
実際、処分品の数はとんでもない量で、もはやゴミ屋敷状態だったようなんですが……。
見積もりに行った営業は、どうにもただのゴミ屋敷とは思えない、って言うんですよ。
どうも、人が死んでる感じがする、って。
……そういう現場をいくつも見てきた人間の直感、って言うんですかねぇ。
ゴミでいっぱいなのに、部屋の一部分だけ妙にキレイだとか、
金目のものだけがさっぱり無いとか……。
人の手が入った形跡はあるのに、ほとんど手がつけられていない感じが、
どうにも怪しいのだと。
依頼主にそれとなく探りを入れても、
あいまいにはぐらかされてしまったようですが……。
まぁそんなこんなあったものの、うちの回収担当が五人で伺って、
おおがかりな作業を終えて、会社へ帰ってきたんです。
「いや~……ありゃー参った。ひでぇコトになってたわ」
「まぁ、虫が湧いてなかっただけマシだよ。夏場はマジでつらいからな……」
と、やはりなかなか壮絶な作業だったらしく、
作業員たちは事務所にもどってそうそう、ぐったりとイスにもたれかかっていました。
あたしら事務員がねぎらってお茶など出してあげていたんですが、そのうちの一人、
臨時アルバイトの子が「あ……そうだ、これ良かったら」と大きな箱を差し出してきたんです。
「え……どうしたの、これ」
茶色の段ボールに、アルファベットで型番が記された箱。
それはまだ開封された形跡のない、FAX機器でした。
「未使用のヤツが何個かったんで。持ち主の人に聞いたら、ゴミにするだけだから貰っていいよ、って言ってくれて」
「ああ、そうだったの……ありがたい、けど」
会社で使っているFAXは、長年使用していることもあり、
だいぶインクの出も悪くなって、ちょうど買い替えを検討していました。
しかし。いくら新品とはいえ、ワケあり物件の疑惑の場所の物品です。
あたしが受け取りに躊躇していると、
「大丈夫だってぇ! もし怨念がついてるとしても、家自体とか、依頼人さんの方でしょー」
と、経理を担当している奥村さんという女性が、ヒョイとそれをうけとりました。
彼女は罰当たりなセリフでケラケラと笑いつつ、
さっそく目の前でFAXの箱を開封してしまったんです。
「まぁ、ボチボチ古い型っぽいけど、電源さえ入りゃへいきよ」
と、事務所の古いFAXを取り外し、
テキパキと新しいそれに配線をつなぎ直しました。
「ん! 電源もバッチリ。使えるよ、コレ」
新品を購入する資金が浮いた! と彼女はニコニコ上機嫌です。
他のメンバーたちも「掘り出しものがあってよかったなぁ」だとか、
「営業がおおげさに言ってたけど、ただのゴミ屋敷だったよなぁ」だとか、
好き勝手に話を盛り上げていました。
(まぁ……そうよね。幽霊だとか、お化けだって……
まさか、コレにとり憑くなんてこと、ないよねぇ)
あたしは微妙に腑に落ちないものを感じつつも、
そうやって、むりに自分自身を納得させました。
それから、しばらく。
例のFAX機器は、まったくなんの問題もなく稼働し、
日々が平穏に過ぎていきました。
前のものは、五回に一回は紙詰まりをおこすようなありさまだったので、
順調に紙をはきだす新品は、事務所の面々にとって待ってましたといわんばかりでした。
しかし――そんなFAXに違和感を覚えはじめたのは、
数か月後、月末のある日のことでした。
どこの会社でもあるあるだと思いますが、
月末月初は、請求書の締めやら発行やらで、特に忙しくなタイミングです。
うちの会社も毎度慌ただしく、
パート勤めの自分はいつも四時で帰るのですが、
月末だけはいつも七時まで延長で勤めていました。
「あー……これFAXしたら、ようやく終わりですよ」
「おつかれさま。すっかりこんな時間だものね」
ともに事務をやっている年下の多田野さんという女性が、
紙束をかかえつつ、ヘロヘロと机にもたれました。
「後片付けしておくから、送ってきちゃいなよ」
「はーい……」
つくえに散乱した書類を整え、給湯室でコップを片付けてからもどると、
事務所内の雰囲気が妙です。
社内の片隅――FAX機器の前で、さきほどの多田野さんと経理の奥村さんが、
揃って眉をよせ、ジッと機械を見つめていました。
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