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133.マクラが合わない話②(怖さレベル:★★☆)
しおりを挟む「はあ? なんだよコレ」
「お前、いっつもソファでそのまま寝てるだろ。せっかくだし貸してやるよ」
「いや、女子のだろ……」
「へーきへーき。つーか、実はおれも何日か使ったし」
と、ヤツは悪びれた様子なくピースしました。
いや、余計ダメだろ、なんて思ったものの、
実際、ソファでマクラも毛布もなしで寝るのって、
けっこうしんどかったんですよね。
「じゃ、お前がイイって言うんなら、今日だけ使わせてもらうわ」
元はといえば、要らないといってよこされたモノ。
いくら元女子の持ち物とはいえ、後ろめたく思う必要もありません。
オレはそう自分に言い聞かせつつ、
すなおに頭の下に敷いて眠ることにしたんです。
その、夜。
すぅっ、と風が吹き込むような肌寒さに、
オレはぼんやりと目を開けました。
視界はまっくら。
一瞬、自分がどこにいるかわからず戸惑ったものの、
そういえば古暮の家だった、ということを思い出しました。
しばらく、ボーっと天井を見上げた後、
オレはゴソゴソとソファで身じろぎました。
マクラが頭を支えてくれているせいか、
いつもより、首や肩が楽な気がします。
借りて正解だったな、なんて思いつつ、
再び目を閉じて、ふわあ、と大あくびをしました。
起きたときに一瞬感じた肌寒さも、
毛布にくるまっていれば特に感じることもありません。
ただの気のせいだったのかなぁ、なんて寝ぼけ頭で考えつつ、
ごろごろとソファの上で寝返りをくり返しました。
部屋は暗く、まだ、真夜中のようです。
次の日の講義はたしか午後からだったし、
多少寝過ごしても平気だよなぁ、なんて思いつつ、
二度寝の誘惑に、そのままウトウトと沈もうとしました。
――しかし。
(あ~……なんだろ、眠れねぇ……)
あと一歩で眠れそう、というところで、
なんだか意識がフッと戻ってしまうんです。
それが、一度や二度ではなく、何回も。
体勢が悪いのかと、ソファの上でごそごそと位置を調整してみたり、
足を曲げたり伸ばしたり、いろいろ試行錯誤してみたのですが、
なおさら眠気が遠ざかっていってしまいます。
頭はまだボーっとしているし、眠いという感覚はあるのに、
意識だけが妙に冷めている感じ、というか。
なんだか、腹の内側がムズムズするような気持ちの悪さに、
オレはとうとう、上半身を起こしました。
「はー……トイレでも行くか」
半分開いたままの窓の向こうはまっくらです。
その真下、
古暮はベッドの上でグースカ眠っているのが見えました。
(もういっそ、このまま朝まで起きてるかなぁ……)
なんて思いつつ用を足して、水を飲んでからソファに戻ると、
部屋の暗さと慢性的な睡眠不足のせいか、
またジワジワと眠気が襲ってきました。
「……床でいいか」
もしかしたら、ソファで寝たから眠れないのかもしれない。
いつもだったら、それでも問題なく眠れているのに、
その時ばかりは、なぜだかそう思ったんです。
オレは毛布をカーペットの上に敷いてマクラを置き、
その上に体を横たえました。
最初に話した通り、オレはどこででも寝られるタイプなので、
床に直寝でも、まぁ数時間くらいだしイケるだろ、って思ったんです。
テーブルをちょっと奥へ押しやれば、
ソファよりも体を動かせる範囲は広いし、
ゴロゴロ寝返りを打っても落下する心配もありません。
オレはホッと安心して足をグッと伸ばし、
再び眠りにつきました。
――ガサッ
「……ん……?」
妙な音で、意識が浮上しました。
目を閉じたまま、なんとなく周囲の気配を伺うと、
ひゅう、と首筋を撫でるような肌寒さも感じます。
(なんだ……?)
うっすらと目を開けても、視界は暗いまま。
どうやら、さっき目が覚めてから、あまり時間は経っていないようでした。
眠気はまだ残っているものの、腕には鳥肌が立っていて、
なんとなく、妙に不快な気分です。
シン、と静まり返った部屋の中。
さっき目覚めたときの、あのガサリとした音は聞こえません。
もしかして――泥棒?
オレは寝返りも打たず、ジッ、と耳を澄ませました。
ガサッ……ゴソッ……
と、しばらく動かずにいると、かすかにその音が聞こえたんです。
まるで布がこすれるような、小さななにかが動く音。
泥棒がなにかしている音、にしては小さすぎる音でした。
まるで猫がビニール袋で遊んでいるような、
小動物がガサゴソあさっているような、そんな音です。
換気扇の音、古暮のいびき、窓の外の葉ズレの音?
オレは横たわったまま考えましたが、どれも違う気がしました。
もっと、こう、こまごました音というか。
そう、例えるなら、小さな虫がうごめくような――。
(……あ! 虫……!?)
せっかくの眠気が、一瞬で消えました。
ピン、と心当たりが浮かんだからです。
このゴソゴソ音。
これはもしや、台所などで見かける、
あの茶色い害虫ではないか、と。
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