死のうと思っていたら悪役令嬢になったのでバッドエンドを目指します

夜納木ナヤ

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本編スタート

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転生した翌日にやってきたのは、高等部入学式という一大いちだいイベントだ。

ゲームの本編もここから始まり、攻略対象とヒロインの出会うイベントが次々と訪れる。

私ことクリスティーナは、中等部からの上がりで、2人の取り巻きがいた。

彼女たちはクリスティーナの言葉に反応し、過剰に周囲を仰ぎ立てていた。

「ちょっとそこのあなたどきなさい!」
「ここにいらっしゃるのがどなたかご存じで?」

学園の前で車から降りた私を2人は待っていて、会場までの道で邪魔な者を排除しようとする。

そんなことをすれば目立たないはずはなく、周囲からの好奇の目で晒された。

そしてそれが、有名な悪役令嬢であるクリスティーナだと気がつくと、侮蔑の目を向けるものもいた。

だがそれはごく一部で、ほとんどが悪役令嬢クリスティーナに関わらないようにと距離をとっていた。

そうして進んでいくと見慣れた景色が見えてきた。そうここは、ヒロインとクリスティーナが始めて出会う場所。

ゲームではヒロイン視点で、左からクリスティーナ達がやって来る。ということはだ、右を向けば……やっぱりいた。

色の薄い銀色の髪に、緑色の瞳。目立つような大きな動きをしているわけでもないのに、思わず目を引く存在の名はアリス・ホレスコナー。このゲームのメインヒロインだ。

そんな彼女と私は、バッチリと目が合った。ここではクリスティーナが彼女を罵倒する。罵倒するのだが……さて、いざその場に居合わせてみると、すぐに言葉が出てこない。

どうしたものかと悩んでいると、取り巻き二人が騒ぎ立てた。

「なんですのあのみすぼらしい身なり」
「いかにもにもな田舎者ね!」

さすが悪役令嬢の取り巻き。悪役令嬢に負けず劣らず、罵詈雑言がすぐに出てくる。

などと感心していると、突然浴びせられた罵声にアリスは固まってしまった。

だが、そんな姿すらも、アリスは絵になる。はっきり言って、かなり可愛い。

ゲームではイモ女だの田舎者だの散々言われていたが、飾られていない天然の可愛さがあった。

とは言え、クリスティーナな私がそんなことを言ってはいけない。自分が一番美しいと思っていて、それ以外の女は全員自分よりも下なのだ。

「クリスティーナ様も何か言って差し上げてください」
「そうです!身の程を教えてあげなければ!」

言葉を探していると、取り巻き2名から急かされてしまった。これはゲームではなかったできごとだ。

そもそもクリスティーナなら、率先して悪口を言っている。

私も早く何か言わなければ………焦りからか、思わず本音を口にしていた。

「可愛らしいお嬢さんね」

一瞬にして、その場の空気が変わったのを感じた。取り巻き二名は微妙な表情を浮かべて固まり、周囲で聞き耳を立てていた学生は驚いた顔を浮かべる。

たったひとり、ヒロインのアリスだけは満面の笑みを浮かべた。私の前に立つと、手を取って私の顔をまっすぐに見つめてくる。

「ありがとうございます!実は知らない人ばかりで不安で……その、色々と教えていただけると嬉しいです!」

その太陽のような笑顔は、ゲームをプレイした時にも見たことがある。攻略対象の第一王子と初めて出会い、助けてもらった時に見せたものだ。

マズイ。これではストーリーと全く違う展開に進んでしまう。

なんとか悪役令嬢っぽく振る舞わなくては……!

「軽々しく触れないでくださる」

アリスの手を振り払うと、学園に向かって私は歩き出す。

よし、なんだか悪役令嬢っぽい。

確認のために後ろを振り返ると、取り巻き2名は相変わらず固まっているし、アリスは目を輝かせながら私を見つめている。

……って、あれ?なにか間違えた?

クリスティーナならここで何と言うだろうか。今回はすぐに答えが出た。

「早く行きますわよ」

取り巻きに目配せをすると、彼女たちは慌ててついてきた。

うーん…やっぱりなにか違う。二人が慌ててついてくるシーンはいくつかあったけれど、クリスティーナから声をかけたことはなかった気がする。

もっとクリスティーナとして、悪役令嬢らしく振る舞わなくては!
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