死のうと思っていたら悪役令嬢になったのでバッドエンドを目指します

夜納木ナヤ

文字の大きさ
11 / 13

牢獄と魔女と告白

しおりを挟む
それからどれだけの時間を過ごしたのか分からない。
薄暗い牢獄は静かで、まるで時間が止まったかのようだ。

この感覚を私は知っている。
外に出られなくなり、毎日部屋に引きこもり、ゲームをしていた時と同じ感覚だ。

まるでこの世界には自分しかいないように感じ、孤独感に押し潰されそうになる。

そう考えると、今いる場所は私にピッタリだ。

そうだ、これでよかったはずではないか。
だって私は、バッドエンドを迎えるためにここにいるのだ。

このまま進めば、間違いなくクリスティーナにとってのバッドエンド。
王子と結ばれることはなく、最悪の未来が待っている。

それは私が望んだ未来と同じはずだ。

なのに私は……泣いていた。
涙が目から溢れ出し、止めることができない。

何度も目をこするが、涙は全く止まらない。

私は王子に嫌われたのだ。勝手に好かれていると思い込んでいただけで、実は好かれてはいなかったのだ。

一度は期待してしまったせいか、心にポッカリと穴が空いたようで、胸が痛い。

いや、痛いと思っているだけで、実は何も感じていない。
感情がどこかに行ってしまい、ただ涙だけが流れ続けている。

トントンと音がして、誰かが近づいていくる。どうやら食事の時間のようだ。
投獄されたとは言え、それなりの扱いをしてくれているようで、しっかり食事は運ばれてくる。

「今日のご飯はなにかしら……」

ふと顔を挙げると、私のいる牢屋の前には、男の人とは違うシルエットがあった。

「クリスティーナ様、お迎えに来ました」
「アリスさん……? どうして?」
「詳しいお話は後です。私と一緒に逃げましょう」
「逃げるってどういう……キャッ」

クリスの手から光が放たれ、牢屋の入り口が音もなく消え去った。

「このままではクリスティーナ様は処刑されてしまいます」
「処刑? それはまたどうして?」
「クリスティーナが魔女であると疑いがかかっているからです」

魔女とは、この世界を滅ぼすとされる存在のことである。

ゲームのメインルートでも出てきて、アリスに取り憑いて王子を殺そうとする。

取り憑かれるのはアリスだけではない。ルートによっては、クリスティーナも取り憑かれる。

ただ取り憑かれるだけではなく、クリスティーナ自身が魔女になるルートも存在する。

「私が魔女……間違ってはいないわね」

自嘲気味に言う私の手を、アリスは握った。

「そんなのは間違っています! クリスティーナ様は魔女ではありません!」
「そんな慰めなんて結構ですよ……」
「慰めなんかじゃありません! だって魔女は……」

私に触れるクリスの手が、小刻みに震えている。そこからは嫌でも伝わってくる。
アリスが何かに恐怖していることが。

「魔女は……私の中にいるんです!」
「そんなことは……」

ないとは言えない。アリスが魔女に取り憑かれるルートは確かに存在するからだ。

だが……もしそうだとしても、明らかに早すぎる。

ゲームの中では、魔女の登場は早くても中盤以降。
今はルート分岐どころか、まだプロローグの途中だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました

神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。 5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。 お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。 その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。 でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。 すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……? 悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。 ※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※少し設定が緩いところがあるかもしれません。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

悪役令嬢に転生しましたが、全部諦めて弟を愛でることにしました

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したものの、知識チートとかないし回避方法も思いつかないため全部諦めて弟を愛でることにしたら…何故か教養を身につけてしまったお話。 なお理由は悪役令嬢の「脳」と「身体」のスペックが前世と違いめちゃくちゃ高いため。 超ご都合主義のハッピーエンド。 誰も不幸にならない大団円です。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 小説家になろう様でも投稿しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

処理中です...