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期待と王子と急展開

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「王子は喜んでくれるかしら……」

こんなことを考える日が来るなんて、転生してきた時は考えもしなかった。

あー、もうダメだ。考えるだけで顔がにやけてくる。

赤面していることを自覚してしまってから、自分の感情を妙にストレートに感じる。

今までだったら諦め、ごまかそうとしていた感情が溢れだし、止められない。

私が人に愛されることなんてないと思っていた。

転生しても私は私。しかも転生したのは悪役令嬢。

その先に待っているラストを考えたら、これ以上にピッタリなことはないとすら思った。

「クリスティーナ様、お待ちしておりました」

王城につくと、お城の騎士が出迎えてくれた。ここから先は私ひとり。

お城の関係者以外は立ち入ることができず、私の護衛も外で待つことになる。

「いってらっしゃいませ、クリスティーナ様」

だが、誰一人として心配してはいない。なにせ私は王子の婚約者。

例え王子の婚約者でも、嫌われていたら不安しかなかったが、王子は学園で私のことを褒めてくれた。

クリスだって、侍女だって、今の私なら大丈夫と言ってくれた。

長い廊下を抜けると、王子の待つ部屋に案内された。
王子は今の私を見て、なんと言ってくれるのだろうか。可愛いと言ってくれるだろうか。

顔をあげるとそこには、王子の険しい表情があった。

「クリスティーナ、君は何者だ」

王城の一室に案内された私は、騎士たちの取り囲まれた。

「私の力を知って利用しようとする魔女ではないのか?」

その声は静かであったが、疑いの念は十分すぎるほどに伝わってきた。

「この者を牢に入れよ!」
「ま、待ってください!」
「うるさい!善人ぶって近づいてくる魔女め!」
「そんな……どうして」
「婚約はこの場で破棄だ。僕は彼女と婚約をする」

騎士に守られるようにして連れられてきたのはアリスだった。

「アリス……あなたの仕業なの?」
「ち、違います!信じてください!私はただ、クリスティーナ様のよさをもっと知ってもらいたくて……」
「アリス、もうよい。すべてあの者の差し金なのだろ?」
「ち、違います!すべて私の意思です!」

アリスの声がどんどん遠くなっていき、私は城の地下にある牢獄に入れられた。
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