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第2章~ヴァルキリーを連れ出せ~
ヴァルキリーの領域に踏み込むと大変なことになります
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千里眼。普通なら見えないような遠い場所を見ることが出来るスキルを俺は持っている。
だが、そんなものを使わずとも悲惨な状況なのは分かった。
空は炎で赤く染まり、黒い煙が天に伸びている。第2支社は火の海になっているのだ。周囲を囲む城壁の外には、何人もの人が倒れていた。
「おい、何があった」
「ヴァルキリー様がお怒りに……」
「何をしたんだ?」
「ヴァルキリー様をお守りするために、室内に警備を……」
考えうる限りの最悪の行為だった。
ヴァルキリーは自身の領域に踏み込まれることを嫌う。それが出来るのは心を許された相手だけ、レッドラグーンでは俺を除いて誰一人としていない。
「早く火を消しなさい!!」
城壁越しに女の叫び声がした。上空に上がると、見慣れたローブの女が見えた。黒魔導士マヤ。冒険者として最初に旅をしたメンバーの一人だ。
魔術師を率いて消火活動にあたっている様だが、火の手が収まる気配はない。
「声をかけるのか?」
「いいや。それよりもアンナを探さないと」
室内に侵入されたのならば、別の場所に移動している可能性もある。それでも火の勢いからして、まだ支社からは出ていないはずだ。
「ところでヤマト、僕は一緒に行っても大丈夫なのかい?ヴァルキリーは嫉妬心も独占欲も強い。悪い要素の方が多いと思うのだけれど」
「それはたしかに…悪い、一旦下ろすぞ」
一緒にいたのがユミネでよかった。自分でも気が付かないうちに焦っていた俺に落ち着く時間をくれた。
一旦支社から離れると、近くにあった木のふもとでユミネを下した。
「それじゃあ行ってくる」
「ああ、行ってらっしゃい」
ユミネは手を振って見送ってくれる。なんかいいなこれ。帰ってくる場所があるって感じがする。
そう言えばヴァルキリーってのは、戦死者を弔う役目もあるんだっけ……って、イカンイカン。これじゃあ死亡フラグじゃねえか。
再び戻った支社は、火の手が大きくなり、全体で一つの炎のようになっていた。
これは熱いだけでなくて、呼吸すら出来なくなる可能性だってある。
「第6の契約者ユミネ、我に火の中を歩む力を与え給え、フォース!」
補助魔法を発動する。これで火の熱さにも、酸素の少なさにも負けることはない。
家はほとんど焼け落ちていて、道だった場所には瓦礫が転がり、まともな足場はどこにもない。さっきまで消火活動にあたっていたマヤもどこかへ行ってしまったようだ。
問題はどこにアンナがいるかだ。魔力をたどればわかるのか?
「可視化」
魔力の流れをじっと見つめる。燃え盛る炎の中心に、濃縮された赤が見え、地面ではクランに加護を与える魔法陣が発動している。
まさかアンナの奴、一歩も動いていないのか!?
炎の中を駆け抜けていくと、地面にうずくまる少女がいた。炎の中でもわかるぐらいの真っ赤な髪に、真っ赤な瞳。その目には涙を浮かべている。
「アンナ!!」
かけよろうとすると、火の魔法が飛んできた。予想外のことに反応できず、とっさに火を消しはしたものの、勢いで後ろに吹き飛ばされた。
「アンナっ、俺だ!」
「許さない…もう誰も、近づけさせない!」
彼女の全身を炎が包み、炎の魔人になって殴りかかってくる。
反撃するか?いや、ここは全部受け止めるべきか。
悩んだ末、防御に徹することにする。右から左から飛んでくるパンチを、腕で受け止める。物理的な痛みはない。だけど心は傷んだ。
悔しいのだ。アンナは炎の魔人になることを嫌がっていた。そうさせないと約束もしていたはずだった。なのに俺は……。
腹に飛んできたキックを受けきれず、その場で悶えた。くそっ、考えるのは後だ。
どうしてアンナはこうなった?それは苦しいからだ。きっと俺の何倍も。
「アンナーーーーーー」
一直線に突っ込むと、顔に、腹にパンチが飛んできた。いてえ……それでも止まるわけにはいかない。ふらつく足に力を込め、一歩一歩近づいていく。
また一発パンチが飛んできて、近づいた距離の倍だけ吹き飛ばされた。それでも諦めない……諦めるわけにはいかない。
立ち上がるとまた近づいていき、また殴り飛ばされる。
何度か繰り返しているうちに、気が付いたことがある。アンナの方から殴り掛かってくることはないのだ。
俺がリーチに入った時にだけパンチが飛んでくる。これはまるで、自己防衛だ。
ふらつきながらも、再びリーチに近づく。あと一歩、あと一歩踏み出せば攻撃が来る。だったらその瞬間だけ集中するんだ。すべて避けて、一気に距離を詰める。
「アンナーーーーーーー」
予期していた攻撃は、飛んでこなかった。代わりに、腕の中で炎の魔人を抱きしめる。
いや、違う。魔人なんかじゃない……彼女はアンナだ。はっきりと、感触がある。ゆっくりと撫でると、背中まであるサラサラの髪は健在だった。
「ヤマト……?」
「ああ、俺だ。すまない、来るのが遅くなった」
「ごめん、なさい」
炎は収まり、魔人の中から乙女が現れた。泣いていたのか、目元はひどく腫れている。
「どうして謝るんだ?」
「私、汚されちゃった……」
「何かされたのか!?」
部屋に侵入していたのは聞いていたが、まさかそれ以上のことがなされたのか!?もしそうならば容赦はしない。マヤだけでなく、ハヤテもタケヤも消し炭にしてやる。
「私とヤマトだけの部屋だったのに、他の人に入られちゃった……」
「え?ああ……そんなことか。なにかされたとかは?」
「ない。その前に燃やしてやったわ」
どうしよう。さっきまでの怒りをどこにぶつけたらいいのか分からない。
とりあえず、何事もないようでよかった…よな?
「けど部屋も外も全部燃やしてしちゃった」
「それなら気にするな。元よりここからは出るつもりでいたから」
「どういうこと?」
「俺は追い出されて別の場所にいる。だからアンナも迎えに来たんだ」
きょとんとした顔を浮かべたあと、かぁっと顔が一気に赤くなり、支社を覆っていた炎は小さくなっていく。
怒っているわけではないし、まさか照れてる?
「そ、そういうことは先に言いなさいよね!」
「だから悪かったって」
「じゃあ私は何も悪くないわね」
「あー、うん、そうだな?」
やたらまくしたててくるので、とりあえず頷いておいた。
「そ、そうよ。大体なんで私がアンタに謝らなくちゃいけないのよ」
「あーもうそれでいいからここから離れないか?変なのに絡まれたら面倒だから」
「変なの?」
「見つけたわよ侵入者!!」
ほーら来た。マヤと魔術師様御一行だ。
だが、そんなものを使わずとも悲惨な状況なのは分かった。
空は炎で赤く染まり、黒い煙が天に伸びている。第2支社は火の海になっているのだ。周囲を囲む城壁の外には、何人もの人が倒れていた。
「おい、何があった」
「ヴァルキリー様がお怒りに……」
「何をしたんだ?」
「ヴァルキリー様をお守りするために、室内に警備を……」
考えうる限りの最悪の行為だった。
ヴァルキリーは自身の領域に踏み込まれることを嫌う。それが出来るのは心を許された相手だけ、レッドラグーンでは俺を除いて誰一人としていない。
「早く火を消しなさい!!」
城壁越しに女の叫び声がした。上空に上がると、見慣れたローブの女が見えた。黒魔導士マヤ。冒険者として最初に旅をしたメンバーの一人だ。
魔術師を率いて消火活動にあたっている様だが、火の手が収まる気配はない。
「声をかけるのか?」
「いいや。それよりもアンナを探さないと」
室内に侵入されたのならば、別の場所に移動している可能性もある。それでも火の勢いからして、まだ支社からは出ていないはずだ。
「ところでヤマト、僕は一緒に行っても大丈夫なのかい?ヴァルキリーは嫉妬心も独占欲も強い。悪い要素の方が多いと思うのだけれど」
「それはたしかに…悪い、一旦下ろすぞ」
一緒にいたのがユミネでよかった。自分でも気が付かないうちに焦っていた俺に落ち着く時間をくれた。
一旦支社から離れると、近くにあった木のふもとでユミネを下した。
「それじゃあ行ってくる」
「ああ、行ってらっしゃい」
ユミネは手を振って見送ってくれる。なんかいいなこれ。帰ってくる場所があるって感じがする。
そう言えばヴァルキリーってのは、戦死者を弔う役目もあるんだっけ……って、イカンイカン。これじゃあ死亡フラグじゃねえか。
再び戻った支社は、火の手が大きくなり、全体で一つの炎のようになっていた。
これは熱いだけでなくて、呼吸すら出来なくなる可能性だってある。
「第6の契約者ユミネ、我に火の中を歩む力を与え給え、フォース!」
補助魔法を発動する。これで火の熱さにも、酸素の少なさにも負けることはない。
家はほとんど焼け落ちていて、道だった場所には瓦礫が転がり、まともな足場はどこにもない。さっきまで消火活動にあたっていたマヤもどこかへ行ってしまったようだ。
問題はどこにアンナがいるかだ。魔力をたどればわかるのか?
「可視化」
魔力の流れをじっと見つめる。燃え盛る炎の中心に、濃縮された赤が見え、地面ではクランに加護を与える魔法陣が発動している。
まさかアンナの奴、一歩も動いていないのか!?
炎の中を駆け抜けていくと、地面にうずくまる少女がいた。炎の中でもわかるぐらいの真っ赤な髪に、真っ赤な瞳。その目には涙を浮かべている。
「アンナ!!」
かけよろうとすると、火の魔法が飛んできた。予想外のことに反応できず、とっさに火を消しはしたものの、勢いで後ろに吹き飛ばされた。
「アンナっ、俺だ!」
「許さない…もう誰も、近づけさせない!」
彼女の全身を炎が包み、炎の魔人になって殴りかかってくる。
反撃するか?いや、ここは全部受け止めるべきか。
悩んだ末、防御に徹することにする。右から左から飛んでくるパンチを、腕で受け止める。物理的な痛みはない。だけど心は傷んだ。
悔しいのだ。アンナは炎の魔人になることを嫌がっていた。そうさせないと約束もしていたはずだった。なのに俺は……。
腹に飛んできたキックを受けきれず、その場で悶えた。くそっ、考えるのは後だ。
どうしてアンナはこうなった?それは苦しいからだ。きっと俺の何倍も。
「アンナーーーーーー」
一直線に突っ込むと、顔に、腹にパンチが飛んできた。いてえ……それでも止まるわけにはいかない。ふらつく足に力を込め、一歩一歩近づいていく。
また一発パンチが飛んできて、近づいた距離の倍だけ吹き飛ばされた。それでも諦めない……諦めるわけにはいかない。
立ち上がるとまた近づいていき、また殴り飛ばされる。
何度か繰り返しているうちに、気が付いたことがある。アンナの方から殴り掛かってくることはないのだ。
俺がリーチに入った時にだけパンチが飛んでくる。これはまるで、自己防衛だ。
ふらつきながらも、再びリーチに近づく。あと一歩、あと一歩踏み出せば攻撃が来る。だったらその瞬間だけ集中するんだ。すべて避けて、一気に距離を詰める。
「アンナーーーーーーー」
予期していた攻撃は、飛んでこなかった。代わりに、腕の中で炎の魔人を抱きしめる。
いや、違う。魔人なんかじゃない……彼女はアンナだ。はっきりと、感触がある。ゆっくりと撫でると、背中まであるサラサラの髪は健在だった。
「ヤマト……?」
「ああ、俺だ。すまない、来るのが遅くなった」
「ごめん、なさい」
炎は収まり、魔人の中から乙女が現れた。泣いていたのか、目元はひどく腫れている。
「どうして謝るんだ?」
「私、汚されちゃった……」
「何かされたのか!?」
部屋に侵入していたのは聞いていたが、まさかそれ以上のことがなされたのか!?もしそうならば容赦はしない。マヤだけでなく、ハヤテもタケヤも消し炭にしてやる。
「私とヤマトだけの部屋だったのに、他の人に入られちゃった……」
「え?ああ……そんなことか。なにかされたとかは?」
「ない。その前に燃やしてやったわ」
どうしよう。さっきまでの怒りをどこにぶつけたらいいのか分からない。
とりあえず、何事もないようでよかった…よな?
「けど部屋も外も全部燃やしてしちゃった」
「それなら気にするな。元よりここからは出るつもりでいたから」
「どういうこと?」
「俺は追い出されて別の場所にいる。だからアンナも迎えに来たんだ」
きょとんとした顔を浮かべたあと、かぁっと顔が一気に赤くなり、支社を覆っていた炎は小さくなっていく。
怒っているわけではないし、まさか照れてる?
「そ、そういうことは先に言いなさいよね!」
「だから悪かったって」
「じゃあ私は何も悪くないわね」
「あー、うん、そうだな?」
やたらまくしたててくるので、とりあえず頷いておいた。
「そ、そうよ。大体なんで私がアンタに謝らなくちゃいけないのよ」
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