ワケアリな後輩達しかいないクランを押し付けられました

夜納木ナヤ

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小さな結界師

小さな結界師1

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「二人でクエストなんて久しぶりだな」

 俺が話しかけると、ミキは下を向いたまま頷いた。
 地の国の伯爵より、彼女を指名したクエストが来たのだ。

 内容はかなり特殊で、断ることもできた。
 だがミキは、受けることを選択した。

「本当に良かったんだな?」
「はい」

 小さいながらも、今度は声がした。
 
「すみま……ありがとうございます、先輩。一緒に来てくださって」

 クエストが来た当初、ミキは悩んでいた。受けるかどうかを。
 
 受けない方がいい。頭では分かっていたはずがだ、心は反対だった。

「俺こそ、一緒に来てお邪魔じゃなかったか?」
「そ、そんなことはありません!むしろ心強いです!って……すみません」

 ミキが声をあげて立ち上がると、周囲の目が集中した。
 俺たちが乗っているのは、大型の馬車だ。

 馬2頭が同時に引っ張り、10人以上が同時に乗ることが出来る。

 ミキは身を縮こませると、隠れるようにくっついてきた。

「ありがとう」

 耳元でささやくと、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

------------------------------------------------------------

 馬車を降りると、真っ黒な建物がそびえ立っていた。
 大人数を受け入れることが出来るホテルだ。

 乗客のほとんどはそのままホテルに入っていく。
 俺たちも例に違わず、中にはいった。

 だが、受付のカウンターには向かわず、そのまま二階に上がった。

『関係者以外立入禁止』の札を通り抜け、その先にある部屋に入る。

「失礼します」

 中には伯爵とその夫人、更には令嬢が待っていた。

「そちらにお座りなさい」

 夫人に言われて、正面に用意されていた席に座った。

「随分と時間がかかったのですね」

 冷たい言葉は、ミキに向けられる。
 夫人だけではない。伯爵も言葉を加える。

「なんのためにわざわざ呼んだと思っているのだ」
 
 ミキは何も言えず、下を向いてしまった。
 肩を縮ませて暴言に耐える。

「まったくどんくさいんだから」

 トドメは令嬢だった。

 見ていて辛い。口を開こうとすると、俺の手に何かが触れた。

「ミキ?」

 彼女はゆっくりと顔を上げると、冷たい目線に見つめ返した。

「し、指定時刻には遅れていないはずです」
「そうですね」

 ミキが必死に答えたにも関わらず、興味のなさそうな返事をされる。
 流石に可愛そうだ。

 これが他人だったら仕方ないこともある。貴族と術師では立場が違う。
 けれど相手は、ミキの両親と妹なのだ。

 打ち合わせなんて名ばかりで、書面の確認を5分程度しただけだった。

 話が終わると、俺は率先して立ち上がった。
 こんな不快な空間に長居なんてしていられない。

「待ちなさいミキ」

 俺に習って立ち上がった彼女を、伯爵夫人は呼び止めた。

「アナタはここに残りなさい」
「ふえっ!?」

 ミキは困ったように、伯爵夫人ではなく、俺を見た。

「どういったご用件でしょうか?」

 俺が答えると、心底不快そうにされた。

「家族の問題です。口を挟まないでいただきたい」

『家族』だなんて、よく言えたもんだ。ひどい扱いをしていたくせに。

「お言葉ですが、今回はクランとしてクエストを受けさせていただいております。クエストと関係ない内容であれば時間を割く余裕はございませんし、私情が入ってくるようでしたら、クエスト自体を破棄させていただきます。ギルドにはその条件で伝えてありますので」

 伯爵夫人はいらついた顔を見せると、爪を噛んだ。

「その子ためを思って言うのを、ギルドの名を借りて邪魔をするつもり?それこそ横暴では?」

 駄目だ。話にならない。

「どうとでも。なんならギルドに直接言ってくださって構いませんよ」

 そもそもクラン・スイレンは俺が作ったものではない。
 ギルドが作り、俺が運営しているだけだ。評価が悪くなろうと大した影響はない。

「ミキ、アナタも立場を弁えるべきよ」

 伯爵夫人の視線を遮るようにミキの後ろに立つと、その背中を押した。

「失礼します。時間にはきちんと参りますのでご心配なく」

 ごちゃごちゃとまだ言っていたが、全てを聞き流す。
 ミキの耳を手で塞ぎながら。

 俺としては、クエストなんてどうでもいい。それよりも、ミキが傷つかないかどうかの方が心配だ。
 
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