長年のスレ違い

scarlet

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第一章

新しい目標

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「葵依、今日も話しかけるの?」

「う、うん。今考えてみたら、美香ちゃんと仲良くしてるってことは、いい人じゃないかって思って」

美香ちゃんの周りにはいい人ばかり集まっている。
その中でも、男子の中で特に仲のいい杉戸尾くん。
だから、周りの人よりもいい人なんじゃないかって思った。

最初の印象だけで、勝手に性格まで決めつけたくない。掃除の時に助けてくれた時の事、絶対に忘れない。

放課後の廊下にたくさん人が居る中で、杉戸尾くんの後ろ姿をなんとか見つけることが出来た。

でも、グッと手にいつも入らない変な力が入って、足は何故か動こうとしないけど……変わりたい。

「杉戸尾くん!」

声がはっきりと耳元に届いたのか、ふり返ってくれた。

てばも、反射的に杉戸尾くんに声をかけただけで、何を話すとか…そんな話題を全く考えていなかった……

「何?」

いつもみたいに睨まれてはいないけど、とてつもなく迫力があった。
思わず後ろに下がってしまいそうになるが、何とかこらえながらも杉戸尾くんを見た。

で、でも、こんなところで負けてられない!と、ぎゅっと拳を握りしめ、はっきりと前向いた。

「バスケって楽しい?」

って、そんなこと聞いてどうするの?
部活でバスケをしてるんだから、楽しいって思ってるに決まってるのに。

言った後に後悔してしまっていた。
考えてからにすれば良かった。
唐突に思いついたことを言っていたから。

それに、美香ちゃんがこの前言っていた。
杉戸尾くんは誰よりもバスケが好きだって。
ボールを持っている杉戸尾くんの目は輝いているんだって。

「それ聞いてどうする?」

それを言われて、何とも言い返せそうになかった。
いつもこのパターンだ。
何か話しかけても、無視されるかかわされるか。

「用がないんだったら、俺に話しかけなるな」

気迫が強くて、もう何も言えそうにない…

最初っから、私なんかが杉戸尾くんに話しかけるなんて、迷惑だったのかな?

杉戸尾くんは女子嫌いだって知ってるのに、私は無理やり話しかけようとしている。
気持ちも知らずに…

だけど、美香ちゃんが普通に話せてるんだから、私にもそれが出来るはず!多分だけど。

少し逆戻りをしてしまっていたけど、再びスタートラインに立った気分だった。

どんな反応をされても、大切な人だって思えるように、これからも杉戸尾くんに話しかけよう。

「葵依が零夜に話しかける?」

「話してみたいって思って。でも、無視されてばっかりだから何とも言えないんだけど……」

無視されてばかりの頃を思い出すと、なんか可笑しい。

いまだに成果は出せていないけど、少しずつ着実に杉戸尾くんに近づけている気がする。

今日は少し話すことができたから。
でも、最初は断られたけどね。だんだんと話す嬉しさを感じ始めた。

「頑張れよ。葵依のそーゆう風に頑張れるところ」

ゆっくりと私の髪の毛を翼くんがさらりと触れた。

顔が赤くなっているに違いない。
鼓動が異常にトクントクン高鳴っている。

「好きだから」

ートクン

そうやって、サラリと「好き」とか言うなんて、期待してしまうからやめてほしいけど、嬉しい。

普通にあんなこと言えないよ?
小さい頃だったら分かるけど、今は中学生だよ?

でも、やっぱり私は翼くんのことが好き。

近くに居ると自然と安心出来る存在。
でも、ある意味安心しないけどね。

「あ、ありがと…」

こんなにも翼くんに応援してもらったんだから、頑張らないと!
杉戸尾に明日も話しかけよう、無視をされても何回も話しかけよう。
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