長年のスレ違い

scarlet

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第三章

花火大会 宮坂藍

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久しぶりに先輩と話した気がする。
短い間だったけど、私にとってはすっごく長かった。

目では姿を追っていたけど、実際に目が合うと、反射的に逸してしまっていて……の、くり返し。
どうしたらいいのか、自分でも分かんなかった。

けど、静紅や夜白先輩の言葉で気づけた。
結果はどうあれ、行動することが大切なんだって。
自分のしたい事が分かった。

ふられたとしても、先輩にこの思いを伝えなかったら、もっともっと………後悔するんだってね。

「静紅」

「……何?私、忙し……」

静紅が私を避けるように動こうとした瞬間、

「ごめんなさい!」

静紅の動こうとした先の前に立ち、さっと頭を下げた。

「え?な、何……急に……」

静紅は戸惑った様子で、私はゆっくりと顔をあげる。

「私が分かってなかった。私自身が分かってあげないといけない、自分の気持ちに」

ほんと、あの時はどうかしてた気がする。

「告白しても意味なんてないとか言ってたけど、本当はすっごく意味あることなんだよね……ありがとう。気づかせてくれて……」

先輩にふられたからって、静紅に気持ちがあたってしまってたんだよね。

「まだ付き合ってないけど、告白するよ。花火大会で」

「……そっか。なら、いーや」

何か吹っ切れたかのように、静紅は教室の窓から屋上の方を真っ直ぐに見ていた。

「え?怒んないの?もっと」

「怒ってほしいの?」

「い、いや……そーじゃないけど……なんて言うか……」

もっと、何か言うと思ってたから……違和感が……

「私、真山先輩の事が好きだったんだよね。藍が付き合う少し前から……」

「え?」

静紅のなびく髪の毛で見えていなかった屋上の人影が、先輩だと分かった瞬間、そうなんだとよく分かった。

「藍のこと、相談されてて。いつの間にか、好きになってた。だけど、藍が好きだって知ってたから」

なにそれ。
私が付き合ってた時に、静紅は……

「そんな傷つかなかったけど……って、藍!?」

苦しい思いをしてたんだ。
私だけ、幸せな思いをしてたんだ………

そう思うと、涙が自然と止まらなくて。
どうしたらいのか、よく分からなくなってしまった。

「………ご、ごめん……ね。し、静紅……だ、だけ……辛い思い……させちゃ……ってて」

そんな言葉を言う資格がないかもしれないけど、これしか言えなかった。

「そんな事ない!真山先輩が幸せになれたから、わたしはそれで良かったんだから!………今は、どーなのかよく分からない、けど」

「……静紅は、真山先輩に告白するの?」

静紅がもし、先輩の事が好きなら……きっと、告白…

「しないよ。私の気持ち、まとまってないから」

静紅は自分の気持ちが分かってないんだ…...
意外と不器用な静紅だからなぁ。

「それに、今は先輩の笑顔が見れるだけでいーの!だから……そんな顔、したらだめ!ね?」

「う、うん!」

静紅は私の事をどう思っているのかよく分からないけど、私は静紅が親友で良かったって思うよ。

自分の事のように笑ってくれて。
自分の事のように泣いてくれて。
自分の事のように励ましてくれて。

ずっと、ずっと、静紅に支えられてきた。




今日、2人で過ごせるんだ………
花火が打ち上がる前に。
………私を選んでなんて言えないけど、私を選んでもらえるように、今からの時間を大切にしないと!

「藍!」

ートクン

「せ、先輩……」

後ろをふり返ると同時に、花柄の浴衣の裾が揺れる。

「……先輩?」

呼んでも、私をじっーと見つめるだけで返事しない。
もしかして、浴衣……似合ってないかな?

いつもは少し面倒くさいからって言って、普段着を着ていただけだけど……
今年は特別だから気合い入れて、浴衣を着たんだよ?

髪だって、わざわざおだんごにして。
慣れない下駄も履いて。
リップだって塗って……先輩に少しでもドキッとしてもらいたかったのに?

「似合って……ない、ですか?」

不安げにも頑張って声を出したけど、反応してくれな…

「……い、いや!似合ってる!浴衣着るの珍しいから……ちょっと、びっくりしただけ」

先輩は顔を真っ赤にしながら、私の方から少し視線を逸し……そう言ってくれた。

「そっか……なら良かったです!反応しないから、変かな?って不安になってました」

「ごめん、ごめん」

………先輩とこうやって、話すの……久しぶり。
最近目が合ったら逸してしまってた……からかな?

「先輩!りんご飴食べましょう!好きですよね?」

けど、今は先輩の顔……しっかりと見れる。

先輩とは何回か付き合ってた頃に花火大会来てたけど、必ずりんご飴を食べていた気がする。

「う、うん」

こーゆう時間が続いたらいーのにな。

屋台が並ぶところは人が多く、力を入れてなかったら今にも倒れそうになっていた。

先輩は人混みをかき分けて、どんどん進んでいく。
……下駄歩きづらくて、そんなに進めないよ。

今にも先輩の姿が見えなくなってしまいそうで、必死に追いかけようとしたけど、

ードンッ

「……いっ」

正面から来た人に思いっきりぶつかれて、思わず一瞬止まってしまっていたら、いつの間にか段々と後ろに押されている気がした。

先輩は!?
と思い、前を見たら先輩の姿がなかった。
………どうしよう。先輩とはぐれちゃった。

せっかくおしゃれもしたのに、
先輩と花火大会に来たのに、
久しぶりに話せたっていうのに、失敗してしまった。
今さっき来たところなのに……

「藍!藍!どこに居るんだよ!」

「……先輩?」

人が多い中で大きな声を出して、私を探そうと…

「藍!藍!」

やっぱり私、先輩のこと好きだなって思う。
こうやって私のこと探してくれて、
気まずいはずなのに普通に接してくれて、

先輩のそーゆう優しさが………大好き。

「先輩!あたし、ここに居ます!」

そう叫んだ後、先輩とタイミング良く目が合って、こっちに向かって人混みをかき分けようとしていた。

目の前に先輩が来てくれて、私を見た瞬間、嬉しそうに笑ってくれて………

「藍!良かっ……」

ーギュッ

思わず、先輩を抱いてしまった。

「………先輩はいつも、優しくて……私は、その優しさに惹かれたんです」

他の人も優しいのかもしれないけど、私はやっぱり………先輩の優しさがすっごく良い。

「私は先輩に何もあげることは出来ない………けど、やっぱり先輩の近くに居たいです!」

夜白先輩にも渡したくない。

「先輩の事が………好きです!」

ートクン

ートクン

どうか……先輩に私の思いが、届いてほしい。
先輩の事が好きだって。大好きだって。
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