レベルってなんですか?

Nombre

文字の大きさ
112 / 244
第二章「セントエクリーガ城下町」

第七十五話「煙草」

しおりを挟む
 村の中に恐る恐る足を踏み入れ辺りを見渡すとオムさんやケイの友達を含めた村人の死体が正門付近に固まって転がっていた。
 そして、その死体には無数のアゲハ蝶が群がっている。

 認識できる限りではあるが、おそらく村人全員だ。


 ……おかしい。

 モンスターは食料にするために人間を襲うのではないのか?
 それなのに、死体が残っているのは変だ。

 そして村の中にはあの鬼に足跡と思われる物がそこら中に残っている。

 生き残っている村人を探していた?
 人を食べるのではなく、殺すことが目的だったのか?

 だが村人の死体はほとんどが真っ二つになっていて生きたまま甚振られた形跡もない……


 ……ショックは大きいが意外と冷静を保てる。


「<貧者の袋>」

 俺は貧者の袋から財布を取り出し、その中から昨日ユバルさんから貰ったタバコと安っぽいライターを取り出した。
 タバコの箱の中には2本のタバコが入っている。

 ユバルさんも意外とケチだな……
 そういえば、ケイに昼飯代を渡してなかったな……

 落ち着くために一応貰っていた物なので今は必要無いのだが、せっかくなら吸っておこう。

 俺は煙草を口に咥え、小刻みに震える手で火をつける。

「ゴホッ……オェ」

 一吸いすると思ったよりもタールが強くてむせた。
 味はまあまあだ。


 捨てるのももったいないので、口の中で吹かしながら村の中に足を進め、まずウォロ村で俺が暮らしていた家に向かった。

 ここにはオムさんから貰ったグローブが置いてある。


 ボロいドアを開けてグローブを拾うと、俺は寝床の上に座り込んだ。

 鎌もあるが、これはもう必要ないだろう。


「ふぅー--」

 冷静なのは自覚しているが、身体が先に進むのを拒む。
 ずっと咥えていたせいか、早くも一本目のタバコは指先ほどの大きさまで小さくなってしまった。

 煙のせいで目は乾燥して、口の中はもちゃもちゃする。


 俺は火を消してからもしばらく呆けていたが、時間も無いので膝に手をつき立ち上がって家を後にし、次はオムさんの家に向かう。
 外は空が黒い雲で覆われ、少し暗くなってきた。

 天気予報とか確認しとけばよかったな……


 オムさんの家の前にはカイの大剣が落ちていたが、カイの脚はどこにも見当たらなかった。
 大剣の周りには鬼の足跡が残っている。

 おそらく脚は持ち去られたか食われたかのどちらかだろう。

 食われたならば他の村人が食われていな理由が分からないし、持ち去られたのなら理由がわからない。
 これはもう考えるだけ無駄だろう。

 とにかくもう帰りたい……


 俺は落ちているカイの大剣の欠片を何枚か拾ってポケットの中にしまうと、オムさんの家の中に入った。

 ここに来た最大の目的はあの残りのHPを教えてくれる赤い花を持ち帰ることだ。

 図書館で調べたところ、セントエクリーガ城下町でも手に入れることは出来るが、日常的に使うようだと意外と金がかかる。
 しかし、あの赤い花の群生地はこの辺りだ。

 本当ならば、このような死人から盗みを働くようなことはしたくないのだが、やるしかない。


 オムさんの家を隅々まで探していると、埃をかぶった実験器具が乱立している部屋を見つけた。
 その奥には植物が保管されており、当分困らない量の赤い花も保管されている。

 このままだと持ち帰れないのでポケットから紙袋を出し、グローブを付けて花を素手で触らないように出来るだけ詰め込んだ。


「はぁ……、よし、帰ろう」

 俺は紙袋にパンパンに花を詰め込め終わると足早に部屋を出ようとする。
 しかし、近くの机の上にあった写真に目が留まった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

処理中です...