【完結】片想い転生 〜振られた次の日に2人で死んだので、異世界で恋を成就させます〜

雪村

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異世界 〜離れないから、貴方も離れないで〜 雅人side

家族

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「ゲホッ、ゲホッ、うう…ゲホッ」


お香の効果と病気の症状がダブルパンチで辛そうに膝をついた。

俺は思わず駆け寄ろうという衝動が出てしまったけど、美姫ちゃんの手を見て熱が引かれる。

この綺麗な手を傷つけたのもあの人なんだ。

でもこれからどうすればいい?

弱っているあの人に大剣を振るったって無意味だろう。

もう立ち上がる体力も気力もないのか、咳き込むだけで何も喋らず動かずだった。

そんな巫女様を俺達は少し離れた場所で見ている。


「とりあえず今は止血を…!」

「雅人ーーー!美姫ーー!!」

「「みんな!?」」


森の中に大きく響いた声に俺と美姫ちゃんは2人で顔を合わせてその方向を見ると、村の方角から大きく逞しい白色の獣と共に村人達がやってきた。


「雅人!大丈夫か!?」


おばあちゃんは走る息子さんの背中に背負われながら俺達の所まで来てくれる。

それに続いてカルイも、アキロも、ふくよかな女性もみんな駆け寄ってくれた。


「俺は大丈夫です!誰か美姫ちゃんの手当てをしてくれませんか!?」

「結構出血してんなぁ。このアキロ様に任せな。何かに使えると思って布を持ってきてある」

「アキロすまない。美姫ちゃんを頼んでも良いか?」

「今回だけは雅人クンに従うよ」

「ああ。俺も今回だけはお前を頼る」

「雅人?何処行くの?」

「美姫ちゃんはここで待ってて」


俺は美姫ちゃんの右手をアキロに任せてそのまま社へ向かう。

社の大扉の前ではまだ咳き込んでいる巫女様が座っていた。

俺は近づいて息を止めて巫女様を引っ張るとお香の効果が薄くなるであろう場所まで連れて行く。


「ぶはぁ!息止めは辛い……」

「ゲホッ、」

「背中摩ります」


俺はまた巫女様を座らせて背中を優しく摩る。

特に過呼吸みたいな症状は出ていなく、咳が酷いだけだった。

俺は何も言わずに背中に手を添えていると足音が近づいてくる。


「白虎様」


感情がわからない顔をしている白虎様はゆっくり1歩1歩巫女様と俺の元へ来た。

そして見下ろすようにしてフンと鼻息を出す。


「それ相応の罰を受ける覚悟は出来ているのでしょうね」

「………ゲホッ、ゲホッ」

「貴方の心境に気付かなかった私にも責任はあります。しかし、貴方がした事は手を出してはいけないことだった。村人達には全てを話しました」

「………」

「勿論、貴方の過去の正体も」

「え……」

「貴方に時間をあげましょう。……来なさい」


白虎様はそう言って後ろを振り向くと3人の人が恐る恐る歩いてくる。

カルイの家族だった。

カルイのお父さんの隣にいるのは初めて見る女性だ。

きっとカルイのお母さんなのだろう。

痩せ細った体は棒のようで顔色は真っ青。

病人と同じくらいの姿だった。

カルイのお母さんは巫女様を見た途端にその棒の足をふらつかせながら走ってくる。

そして巫女様の体を強く抱きしめた。


「会いたかった……」

「……」


巫女様は何も言わずに抱きしめられている。

俺は背中から手を離してそっと2人から距離を取った。

そしてカルイもお父さんも巫女様の近くにやってくると涙を流す。


「姉ちゃん…なんだよな」


俺はカルイの涙が含まれた言葉に目を見開いた。

そんな俺の元に手当てを終えたアキロが静かにやってくる。


「白虎様の言うことだと、見た目は違えどこの巫女様は神隠しにあったカルイの姉ちゃんだったらしいぜ」


アキロは耳打ちして俺に教えてくれる。

それに納得した俺は記憶を辿り、巫女様が言っていた話の点と線が繋がった。


『事実を言えば2年ほどしか巫女を務めてない』


カルイのお姉さんが居なくなったのは2年前。

村のみんなからは神隠しにあったと噂されていた。


『私の意識はこの世界に来て20年が経った』


つまりカルイのお姉さんは20歳。

カルイは12歳だから歳が離れていると言われていた話からして納得がいく。

やはりこの人は…意識だけはカルイのお姉さんなんだ。


「私は……」

「良いよ。何も言わなくていいから。貴方は私の娘。それだけは事実だから」

「……お母さん……」


巫女様は自分のもう1人の母親に腕を回した。

そしてカルイもお父さんも抱きしめ合う2人の姿に被るように寄り添う。


「辛かったなぁ…お前も辛かったよなぁ」

「お父さん……」

「姉ちゃん、姉ちゃん」

「カルイ…」


4人の家族は隙間なく抱きしめ合っていた。

巫女様には元の世界にも家族がいる。

しかし今俺の目の前で泣いている家族もまた、巫女様の家族なのだ。

体が違っても家族の繋がりは途切れられない。

そう思わせてくれるのが、この4人の存在だった。

森の中には今もずっと再開の涙の声が響き渡っている。
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