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異世界 〜離れないから、貴方も離れないで〜 雅人side
弔いの合図
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確かカルイも膝の上に乗せてもらって読み聞かせをされたと言っていた。
子供に見やすいように1人1人そうやって見せているのだろう。
「それでも巫女様は微笑んで俺を抱きしめた。んで、何度も励ましの言葉を言って下さったんだ。俺はその言葉の半分も覚えてないけど、あの時感じた暖かさは今でもちゃんと刻まれている。俺がお世話になったのは先代の巫女様だ。今みんなが言っている巫女様は俺が恩返しをしたかった巫女様とは違うけどよ……。まぁ体は先代巫女様らしいじゃん?だから俺も今日は真面目にやろうってわけ」
「そっか」
「アキロさんも、大変だったんですね」
「何?美姫チャン慰めてくれるの?」
「今日は真面目なんだろ?美姫ちゃんから離れてくれないか?」
「雅人クン邪魔しないでくれ。そう言えばあの時、美姫ちゃんの手当てで手を触ったけど…綺麗だよね」
「アキロ」
「ふふっ。ごめんなさい。私には番犬がいるので」
「番犬ねぇ。雅人クンにピッタリの言葉だ。この村には犬が居ないから正直想像し難いがね」
美姫ちゃんから出た番犬に俺を除いた2人は笑っている。
美姫ちゃんにからかわれるのは別としてアキロに自分の事を笑われるのは不愉快に近い。
俺は顔を引き攣らせてアキロを睨んだ。
「そんじゃ、番犬クンが俺を噛まないうちに退散するよ。じいちゃんの手伝いもしなくちゃいけないからな」
「わかりました」
「番犬って呼ぶなよ」
「今回は引き下がるけど……近いうちに邪魔するぜ?」
「どう言う事だ?」
「わからなくて良いんだよ。そっちの方が面白い」
「??」
アキロは意味不明な言葉を残すと手を振りながら自分の家へ歩いて行った。
「なんなんだあいつ」
「まぁまぁ」
「2人とも!」
次は誰だろうと俺と美姫ちゃんが振り返るれば息子さん夫婦がこちらに来た。
お嫁さんの膝らへんにはあの時の小さな男の子がしがみついている。
首には勿論、白の眼の首飾りがかけられていた。
「調子はいかがですか?」
「特に問題ありません」
「それは良かった。雅人くん、君の役割についてお袋から話があるそうだ」
「わかった。今すぐに行くよ」
「私が何か手伝える事はありますか?」
「準備は昨日のうちに済ませておいたから大丈夫です。今は心を整えてましょう?」
「はい。雅人。私はここに居るね」
「うん。俺はおばあちゃんの所に行ってくる」
「ばいばい」
「行ってくるね」
俺は美姫ちゃんと息子さん夫婦、小さな男の子と別れておばあちゃんが居る森の入り口へ進んだ。
周りをキョロキョロと確認すると村人の人達は悲しみの空気に包まれて笑顔は少ない。
いつも活気あふれる村にもこんな一面があるのだ。
それくらい巫女様の存在は大きかったという事だろう。
おばあちゃんの姿が見えて俺は小走りで森の方向に向かう。
いつものように杖を着いてみんなと同じ黒い服を着たおばあちゃんもどこか寂しそうだった。
「おばあちゃんお待たせ」
「雅人か」
「役割についてだよね?」
「ああ、昨日言ったことだ。……出来るか?」
「出来るよ。美姫ちゃんとも話し合って今回は俺が全て終わらせることにした」
「恩に着るぞ」
昨日の夕方。
おばあちゃんから俺はとある頼み事をされた。
それは弔われる巫女様の亡骸に傷を付けるという役割だ。
最初はそのことに驚いたが、普通はそういうことはしないらしい。
しかし今回、天に帰させる巫女様は罪を犯した身。
体は違えど罰は罰という事で白虎様からおばあちゃんに制裁を任せたらのだ。
そしておばあちゃんはこの件に関わりがあって、巫女様と同郷である俺に託すと言い渡される。
亡くなったとは言え人の体を傷つけるのは俺も気が進まず、すぐに答えは言えなかった。
でもその日の夜、美姫ちゃんと沢山話し合って結果的に引き受けることにした。
理由として美姫ちゃんが言った、
「これは手を汚す事じゃないと思う。もし雅人が出来ないなら私がやる」
の言葉で俺は決心したんだ。
確かにこれは汚れ仕事ではない。
それに美姫ちゃんにやらせるわけにはいかないという俺の思いが重なった結果がこれだ。
「順序を話せば、これから巫女様の亡骸は社から運ばれてくる。家族と、数人の男達と共に。そしてその亡骸は村の中央に建てた長寿の木の棒にくくりつけられると同時に周りの薪に火を灯すのだ。次にワシが祈りを捧げる。それでやっとお前の出番になるわけだ。ワシが合図を出すから、お前は躊躇いなくその白の眼の大剣で亡骸に傷をつけて欲しい。場所は何処でも構わん。重要なのは躊躇いなくだ。傷つけるのは一瞬の方が巫女様も楽だろうよ」
「……わかった」
俺は一瞬だけ深呼吸しておばあちゃんの説明に相槌を打った。
「もう一度問う。出来るな?」
「勿論」
「頼んだ」
おばあちゃんは俺の肩を勢いよく叩いて緊張を解くようにいつもの引き笑いをしてくれる。
そんなにガチガチだったのか。
俺はヒリヒリする左肩に手を当ててお礼を言えばおばあちゃんは口角を上げた。
すると森の方から1人の男が走ってくる。
「村長!準備が整いました!」
「……よし。始めるぞ。誠意を持って弔うのだ」
「「「はい!」」」
村人の掛け声が辺りに反響した。
子供に見やすいように1人1人そうやって見せているのだろう。
「それでも巫女様は微笑んで俺を抱きしめた。んで、何度も励ましの言葉を言って下さったんだ。俺はその言葉の半分も覚えてないけど、あの時感じた暖かさは今でもちゃんと刻まれている。俺がお世話になったのは先代の巫女様だ。今みんなが言っている巫女様は俺が恩返しをしたかった巫女様とは違うけどよ……。まぁ体は先代巫女様らしいじゃん?だから俺も今日は真面目にやろうってわけ」
「そっか」
「アキロさんも、大変だったんですね」
「何?美姫チャン慰めてくれるの?」
「今日は真面目なんだろ?美姫ちゃんから離れてくれないか?」
「雅人クン邪魔しないでくれ。そう言えばあの時、美姫ちゃんの手当てで手を触ったけど…綺麗だよね」
「アキロ」
「ふふっ。ごめんなさい。私には番犬がいるので」
「番犬ねぇ。雅人クンにピッタリの言葉だ。この村には犬が居ないから正直想像し難いがね」
美姫ちゃんから出た番犬に俺を除いた2人は笑っている。
美姫ちゃんにからかわれるのは別としてアキロに自分の事を笑われるのは不愉快に近い。
俺は顔を引き攣らせてアキロを睨んだ。
「そんじゃ、番犬クンが俺を噛まないうちに退散するよ。じいちゃんの手伝いもしなくちゃいけないからな」
「わかりました」
「番犬って呼ぶなよ」
「今回は引き下がるけど……近いうちに邪魔するぜ?」
「どう言う事だ?」
「わからなくて良いんだよ。そっちの方が面白い」
「??」
アキロは意味不明な言葉を残すと手を振りながら自分の家へ歩いて行った。
「なんなんだあいつ」
「まぁまぁ」
「2人とも!」
次は誰だろうと俺と美姫ちゃんが振り返るれば息子さん夫婦がこちらに来た。
お嫁さんの膝らへんにはあの時の小さな男の子がしがみついている。
首には勿論、白の眼の首飾りがかけられていた。
「調子はいかがですか?」
「特に問題ありません」
「それは良かった。雅人くん、君の役割についてお袋から話があるそうだ」
「わかった。今すぐに行くよ」
「私が何か手伝える事はありますか?」
「準備は昨日のうちに済ませておいたから大丈夫です。今は心を整えてましょう?」
「はい。雅人。私はここに居るね」
「うん。俺はおばあちゃんの所に行ってくる」
「ばいばい」
「行ってくるね」
俺は美姫ちゃんと息子さん夫婦、小さな男の子と別れておばあちゃんが居る森の入り口へ進んだ。
周りをキョロキョロと確認すると村人の人達は悲しみの空気に包まれて笑顔は少ない。
いつも活気あふれる村にもこんな一面があるのだ。
それくらい巫女様の存在は大きかったという事だろう。
おばあちゃんの姿が見えて俺は小走りで森の方向に向かう。
いつものように杖を着いてみんなと同じ黒い服を着たおばあちゃんもどこか寂しそうだった。
「おばあちゃんお待たせ」
「雅人か」
「役割についてだよね?」
「ああ、昨日言ったことだ。……出来るか?」
「出来るよ。美姫ちゃんとも話し合って今回は俺が全て終わらせることにした」
「恩に着るぞ」
昨日の夕方。
おばあちゃんから俺はとある頼み事をされた。
それは弔われる巫女様の亡骸に傷を付けるという役割だ。
最初はそのことに驚いたが、普通はそういうことはしないらしい。
しかし今回、天に帰させる巫女様は罪を犯した身。
体は違えど罰は罰という事で白虎様からおばあちゃんに制裁を任せたらのだ。
そしておばあちゃんはこの件に関わりがあって、巫女様と同郷である俺に託すと言い渡される。
亡くなったとは言え人の体を傷つけるのは俺も気が進まず、すぐに答えは言えなかった。
でもその日の夜、美姫ちゃんと沢山話し合って結果的に引き受けることにした。
理由として美姫ちゃんが言った、
「これは手を汚す事じゃないと思う。もし雅人が出来ないなら私がやる」
の言葉で俺は決心したんだ。
確かにこれは汚れ仕事ではない。
それに美姫ちゃんにやらせるわけにはいかないという俺の思いが重なった結果がこれだ。
「順序を話せば、これから巫女様の亡骸は社から運ばれてくる。家族と、数人の男達と共に。そしてその亡骸は村の中央に建てた長寿の木の棒にくくりつけられると同時に周りの薪に火を灯すのだ。次にワシが祈りを捧げる。それでやっとお前の出番になるわけだ。ワシが合図を出すから、お前は躊躇いなくその白の眼の大剣で亡骸に傷をつけて欲しい。場所は何処でも構わん。重要なのは躊躇いなくだ。傷つけるのは一瞬の方が巫女様も楽だろうよ」
「……わかった」
俺は一瞬だけ深呼吸しておばあちゃんの説明に相槌を打った。
「もう一度問う。出来るな?」
「勿論」
「頼んだ」
おばあちゃんは俺の肩を勢いよく叩いて緊張を解くようにいつもの引き笑いをしてくれる。
そんなにガチガチだったのか。
俺はヒリヒリする左肩に手を当ててお礼を言えばおばあちゃんは口角を上げた。
すると森の方から1人の男が走ってくる。
「村長!準備が整いました!」
「……よし。始めるぞ。誠意を持って弔うのだ」
「「「はい!」」」
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