【完結】優しい君に「死んで」と言われたある夏の日

雪村

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無月無日 僕の意味

生み出す血の花達

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「「ただいま」」



ショッピングモールから帰ってくると僕とお姉ちゃんはすぐに店の方にいるお母さんとお父さんに顔を出す。

なるべく厨房を見ないようにして、お母さん達に話しかける。



「お姉ちゃんに本買ってもらった」

「よかったね。それじゃあ後はお母さん達からのプレゼントを待ってて」

「うん!」

「少し今日は早めに食べるぞ。ケーキもあるからな」 

「わかった。それじゃあ私はーーと家に居るね」

「出来上がったら呼ぶから」

「「はーい」」



お母さん達と離れた僕とお姉ちゃんは隣にある家の中に入る。



「厨房いい匂いだったね」

「本当に楽しみ!まぁメインはーーなんだけどさ」



食材などを見ないようにお母さん達の元へ行ったが、鼻に通り抜けるいい匂いは隠せなかった。

まだ僕の鼻には濃厚なソースの匂いが纏わりついている。

ずっと嗅げる匂いだ。

出発した時にお姉ちゃんも言っていたけど、期待値と言うものが時間に経つに連れて上がっていく。

楽しみで仕方ない。

毎日が誕生日で良いのになと思ってしまった。



「それじゃあ私は部屋に居るね」

「わかった。僕はリビングでゲームやってる」

「りょーかい」



お姉ちゃんは僕に手を振るとそのまま階段を上がり、2階にある自分の部屋へ戻っていく。

僕はリビングに入り持っていたバッグをソファに投げ捨てすぐさまラッピングに入っている本を取り出すと、丁寧にリボンを解いて、中の本が破れないように扱う。

上に引っ張ると表紙一面を埋め尽くすコスモスが現れた。



「綺麗…」



僕は本をラッピングから全て出して自分の太ももの上に置く。

お姉ちゃんが言った通り、この花はコスモスらしい。

一輪の花ではなく、何輪もの花達が身を寄せ合うようにして映っていた。

思わず僕は指を伸ばして写真のコスモスに触れる。

花弁をなぞるように指を動かすと、まるで自分がコスモスを生み出しているかのような気分になれた。

ページ内でコスモスはあるかなと、表紙を広げて捲り出す。

すると目次の次のページにコスモスの写真が何枚も載っていた。

撮る向きや、日差しの角度が違う写真の数々。

その下には手書きのコスモスの絵が描かれていた。

そこまで本物に近い絵ではないけど、パッと見てコスモスとわかる。

意外と簡単に描けるのだなと思い、僕は近くにあったチラシとペンをテーブルの上に置いた。



「花びらは、8枚」



ポイント3倍!と書いてあるチラシの裏に僕はコスモスの絵を描き始める。

8枚って意外と多いんだな。

僕はゆっくり丁寧に、写真と絵を見ながら描いた。

そして小さく細い葉っぱのようなものを描いて完成。

我ながら上手くいったのではないだろうか。

でも流石に1輪のコスモスだけでは寂しいしつまらない。

この絵も写真も沢山のコスモスで彩られている。

僕は続けて、2輪、3輪と描いていった。



「出来た…!」



絵を描かない初心者には5輪が限界。

それでも最初よりは上手く描けているし、何よりコスモスだとわかる。

ゲームをやる予定をそっちのけで描いていたがとても楽しかった。

お姉ちゃんに見てもらおうと思って、チラシと本を持ってリビングから出る。

リズミカルに階段を登るとお姉ちゃんの部屋に直行した。

部屋をノックしてお姉ちゃんの返事を待つ。

すぐに返事が返ってきて僕は扉を開けた。



「お姉ちゃん、見て」

「ん?何……」

「お姉ちゃん!?」



ベッドの横に座っていたお姉ちゃんが立ち上がった瞬間、ふらついて斜め前に倒れる。

間一髪、顔が床に当たるのは避けられたけど、僕は一瞬でパニックになってしまった。



「お姉ちゃん!大丈夫!?」

「あ……」



苦しそうな表情で僕の服を掴んで耐え始めるお姉ちゃん。

すると次の瞬間、お姉ちゃんの口から赤い花弁が散った。

その花弁は僕の手に付いて生暖かく滴る。

何も考えられなくなってしまった。

次々と花弁は散っていく。

僕が書いたコスモスは真っ赤になって見えなくなってしまう。

僕はその光景にハッとして涙を流したながらお母さんとお父さんを呼んだ。



「お母さん!!!お父さん!!!」

「うぁ、、ゲホッ」

「誰か!!誰か!!」



声変わりで低くなりつつある喉が痛くなっても僕は声を出し続けた。

いつも守ってくれるお姉ちゃんが死んでしまうと思った。

そしたれ僕を1番近くで守ってくれる人がいなくなってしまう。

怖い。

僕は腕の中で横たわっているお姉ちゃんに声をかけながら抱きしめる。

また服を掴む力が弱まった気がした。

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