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1章 生徒との出会い
2話 討伐完了
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……冷たいし硬い。何だか唇にも違和感がありジャリジャリとした感触が走る。呼吸のしづらさで俺は今うつ伏せに倒れていることがわかった。
「……」
思い返せば俺は化け物に斬られた。斜め斬りで肺と心臓を抉るように。
一瞬だけ感じた鋭い痛みと刃物の感覚が蘇って気持ち悪くてなってきた。しかし血が流れているわけではない。それに呼吸も安定している。
斬られたはずなのに。シーンとしているこの場所は宮殿ではない。きっと俺は死んだんだ。
だとしたらここは天界が地界だろう。ならばいつまでも死んだふりをしなくてもいいんだ。化け物はもういない。俺はゆっくりと手を使って起き上がる。
「……どこ?」
瞬きを何度もパチパチと繰り返して目の前に広がる景色を見る。鉄で出来た長い建物。こんなふんだんに鉄を使った建物は俺がずっと生きていきたカムイ王都では見たことない。
王都の建物の殆どは木造だ。それにこの建物、見張り塔よりも高い。一体何をする場所なのか。
自分の足元を見ればこれまた見たことのない足場だ。黒に近い色をしていて王都の石道とはまた違う。
「あれは?」
次に目に入ったのは車輪のようなものが付いている物体。俺は慎重に近寄る。
「これも鉄か……?」
ここは天界でも地界でもなく鉄の世界だ。もしかして死後は皆この世界に来て過ごすということなのか?
だったら同じ時間、宮殿で死んだ父上と母上、そして使用人の奴らもいるはず。俺はみんなを探すために歩き始めた。
「静かだ…」
今俺の周りで音を立てているのは左側の腰に付けてある刀が揺れる音だけ。知らない世界なので武器が1つでもあれば心強い。
何かあればこの刀で斬ればいいのだ。俺は自分の刀を左手で摩り、守ってくれよと思いを込めた。
それにしても人がいない。気配も匂いも音も感じられないのは何故なのか。いくら首を回しても影さえ見当たらなかった。
ドカーーン!!!!
俺の肩がビクリと跳ね上がる。爆発音だ。しかも俺が生きている中で聞いた爆発音よりも遥かに大きい。
もしかして父上か誰かが戦っている…?確信もない気持ちに動かされた俺は大きな音がした方向へと走り始めた。走っても走っても見えるのは鉄ばかり。
こんな大量の鉄をどこで集めたのかと疑問に思ってくるけど今は関係ない。なぜなら知っているカムイ王都の仲間に会えるかもしれないのだから。
「きゃぁーーー!!」
「誰だ!?」
すると急に人間の声がこの鉄世界に聞こえた。声からして女性だ。しかし母上ではない。いつも落ち着いている母上はこんなに高い声は出さないからだ。
それならば使用人?俺は呼びかけながら女性を探す。鉄と鉄との間を通って開けた場所に出れば爆発による煙が一面を囲んでいた。
「ゲホッ、ゲホッ、誰か!いるのか!?」
「助け…て…!」
人が居るのは確かだ。煙は徐々に薄くなっていくがどこに居るのかはまだわからない。俺は少し滲みる目を擦り、咳き込みながら前へと進んで行った。
「俺だ!カムイ、王都の皇子!シンリン、だ!ゲホッ」
「誰か!カゲルを…!」
「はぁ!?」
カゲル。確かにそう言った。でも俺には何のことかさっぱりだ。とりあえず女性を見つけなければと思い手を伸ばすと誰かに握られた。
「えっ」
柔らかい手が俺の手を包み込んだと思えば勢いよく引っ張られて煙の中から抜け出す。
「ゲホッ、誰だ!?」
「コスプレイヤー?現代人には見ない服装ですが…」
俺は勢いよく顔を上げて手を掴む人を見るとそこには凛々しい姿の女性がいた。俺よりも年下に見える外見の女性は刀のような武器を持って俺をまじまじと眺める。するとまた爆発音が聞こえた。
「アサガイ委員長。来る」
「……ここで待っててください。すぐに戻ります」
女性にそう言われた俺が静かに頷いたのを見て颯爽と走っていく。
「討伐を始める!」
「「了解!」」
他にも人間がいるようだ。次の瞬間、薄くなった煙が全て払われて辺り全てが見えるようになる。
そこで俺が目にしたのは俺とは違う刀を持った人間が黒く染まる物体にに立ち向かっている姿だった。
「ハルサキくん!特刀束縛を!」
「ああ」
先程の女性がハルサキという若い青年に指示を出す。ハルサキは持っている刀のどこからか糸のようなものを出して複数の黒い物体を締め付けた。
動けなくなった黒い物体の形が俺もわかるようになる。人間だけど人間ではない存在。人の形をした真っ黒なもの達は絡みついた糸を力ずくで破ろうとするがビクともしなかった。
「束縛完了」
「リンガネさん!今です!」
「あいよ!!」
次に女性が指示を出すと、鉄の建物の上から発育の良い体をしたの女の人が飛び降りてきて黒い人間に刀を振う。リンガネと呼ばれた女の人は次々に動けない黒い人間を斬っていった。
「討伐完了を報告するぜ」
リンガネは刀に付いた黒い液体を振るい地面にびちゃっと落としながらそう言った。
黒い人間はそのまま燃えて蒸気のように気体となり空へと消えていく。残る部分もなく全てが無に帰った。
ずっと指示を出していた女性は自分の耳に片手を当てて喋り出す。
「……はい。討伐アカデミーA部隊、任務を遂行しました」
黒い人間を倒した3人は集まって何かを話し合い始める。しかし俺の視界の中にはもう1匹の黒い人間を捕らえていた。
「……」
思い返せば俺は化け物に斬られた。斜め斬りで肺と心臓を抉るように。
一瞬だけ感じた鋭い痛みと刃物の感覚が蘇って気持ち悪くてなってきた。しかし血が流れているわけではない。それに呼吸も安定している。
斬られたはずなのに。シーンとしているこの場所は宮殿ではない。きっと俺は死んだんだ。
だとしたらここは天界が地界だろう。ならばいつまでも死んだふりをしなくてもいいんだ。化け物はもういない。俺はゆっくりと手を使って起き上がる。
「……どこ?」
瞬きを何度もパチパチと繰り返して目の前に広がる景色を見る。鉄で出来た長い建物。こんなふんだんに鉄を使った建物は俺がずっと生きていきたカムイ王都では見たことない。
王都の建物の殆どは木造だ。それにこの建物、見張り塔よりも高い。一体何をする場所なのか。
自分の足元を見ればこれまた見たことのない足場だ。黒に近い色をしていて王都の石道とはまた違う。
「あれは?」
次に目に入ったのは車輪のようなものが付いている物体。俺は慎重に近寄る。
「これも鉄か……?」
ここは天界でも地界でもなく鉄の世界だ。もしかして死後は皆この世界に来て過ごすということなのか?
だったら同じ時間、宮殿で死んだ父上と母上、そして使用人の奴らもいるはず。俺はみんなを探すために歩き始めた。
「静かだ…」
今俺の周りで音を立てているのは左側の腰に付けてある刀が揺れる音だけ。知らない世界なので武器が1つでもあれば心強い。
何かあればこの刀で斬ればいいのだ。俺は自分の刀を左手で摩り、守ってくれよと思いを込めた。
それにしても人がいない。気配も匂いも音も感じられないのは何故なのか。いくら首を回しても影さえ見当たらなかった。
ドカーーン!!!!
俺の肩がビクリと跳ね上がる。爆発音だ。しかも俺が生きている中で聞いた爆発音よりも遥かに大きい。
もしかして父上か誰かが戦っている…?確信もない気持ちに動かされた俺は大きな音がした方向へと走り始めた。走っても走っても見えるのは鉄ばかり。
こんな大量の鉄をどこで集めたのかと疑問に思ってくるけど今は関係ない。なぜなら知っているカムイ王都の仲間に会えるかもしれないのだから。
「きゃぁーーー!!」
「誰だ!?」
すると急に人間の声がこの鉄世界に聞こえた。声からして女性だ。しかし母上ではない。いつも落ち着いている母上はこんなに高い声は出さないからだ。
それならば使用人?俺は呼びかけながら女性を探す。鉄と鉄との間を通って開けた場所に出れば爆発による煙が一面を囲んでいた。
「ゲホッ、ゲホッ、誰か!いるのか!?」
「助け…て…!」
人が居るのは確かだ。煙は徐々に薄くなっていくがどこに居るのかはまだわからない。俺は少し滲みる目を擦り、咳き込みながら前へと進んで行った。
「俺だ!カムイ、王都の皇子!シンリン、だ!ゲホッ」
「誰か!カゲルを…!」
「はぁ!?」
カゲル。確かにそう言った。でも俺には何のことかさっぱりだ。とりあえず女性を見つけなければと思い手を伸ばすと誰かに握られた。
「えっ」
柔らかい手が俺の手を包み込んだと思えば勢いよく引っ張られて煙の中から抜け出す。
「ゲホッ、誰だ!?」
「コスプレイヤー?現代人には見ない服装ですが…」
俺は勢いよく顔を上げて手を掴む人を見るとそこには凛々しい姿の女性がいた。俺よりも年下に見える外見の女性は刀のような武器を持って俺をまじまじと眺める。するとまた爆発音が聞こえた。
「アサガイ委員長。来る」
「……ここで待っててください。すぐに戻ります」
女性にそう言われた俺が静かに頷いたのを見て颯爽と走っていく。
「討伐を始める!」
「「了解!」」
他にも人間がいるようだ。次の瞬間、薄くなった煙が全て払われて辺り全てが見えるようになる。
そこで俺が目にしたのは俺とは違う刀を持った人間が黒く染まる物体にに立ち向かっている姿だった。
「ハルサキくん!特刀束縛を!」
「ああ」
先程の女性がハルサキという若い青年に指示を出す。ハルサキは持っている刀のどこからか糸のようなものを出して複数の黒い物体を締め付けた。
動けなくなった黒い物体の形が俺もわかるようになる。人間だけど人間ではない存在。人の形をした真っ黒なもの達は絡みついた糸を力ずくで破ろうとするがビクともしなかった。
「束縛完了」
「リンガネさん!今です!」
「あいよ!!」
次に女性が指示を出すと、鉄の建物の上から発育の良い体をしたの女の人が飛び降りてきて黒い人間に刀を振う。リンガネと呼ばれた女の人は次々に動けない黒い人間を斬っていった。
「討伐完了を報告するぜ」
リンガネは刀に付いた黒い液体を振るい地面にびちゃっと落としながらそう言った。
黒い人間はそのまま燃えて蒸気のように気体となり空へと消えていく。残る部分もなく全てが無に帰った。
ずっと指示を出していた女性は自分の耳に片手を当てて喋り出す。
「……はい。討伐アカデミーA部隊、任務を遂行しました」
黒い人間を倒した3人は集まって何かを話し合い始める。しかし俺の視界の中にはもう1匹の黒い人間を捕らえていた。
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