【完結】異世界先生 〜異世界で死んだ和風皇子は日本で先生となり平和へと導きます〜

雪村

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6章 反社会政府編 〜それぞれの戦い〜

63話 嵐のような走馬灯 【リコン学長、ハルサキとリンガネ班】

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一直線に走って構堂の壁を突き破ったカゲル。リンガネはヘロヘロになりながらも特刀にしがみついていた。


「クッソ…どんだけのスピードと怪力なんだよ。一応元人間だろ…?」


そして追いかけてきた片方の1体も構堂の中へ入る。もう特刀束縛をする必要も無くなったリンガネら縄を解いて即座に2体のカゲルから距離を取った。

壊された壁から見ると小さい姿のリコン学長とハルサキが走ってくるのが見える。しかし待っていてはカゲルにやられてしまうだろう。


「逃げて戦うしかねぇ!」


リンガネは持ち前の熱血さでカゲルに特刀を振るう。それでも刃は完全に通らなくて浅い斬り傷しか残すことが出来ない。

カゲルから離れ、そしてまた斬るという戦い方はリンガネにとってもストレスで戦い辛かった。

まだリコン学長とハルサキが到着する気配はない。このままではすぐに体力が無くなってやられてしまう。


「クソッ」


構堂のステージ部分に避難したリンガネは息を整えるために特刀を床に突き刺す。するとカゲル達は狼狽えるような声を出した。


「えっ…?」


すぐさま四つん這いになったカゲル2体は獣のようにリンガネ向かって走ってくる。避ける余裕なんてなく、モロにぶつかってしまった。痛さに耐える間もなく端へと体を吹き飛ばされて床に打ちつける。


「うっ、眩暈がっ」


グラつく視界でカゲル達の様子を確認するリンガネ。ステージに上がったカゲル2体は遠吠えを上げるように騒いでいた。

次の攻撃が来たらきっと致命傷を負う状態のリンガネ。シンリンとの訓練がなかったらきっと今こうやって目を開けることは出来ていなかった。

しかしカゲル達はステージで暴れるだけでリンガネには見向きもしない。動けないリンガネにとっては有り難かった。


「このまま、ハルサキと学長を」


口の中を切ったリンガネは血を吐きながらこちらに来るであろう2人の姿を捉えようとする。でも先程まで居た2人が見当たらない。戦っている間に何があったと言うのだ。


「何で…」


破壊された構堂の壁の奥から猛ダッシュでやってくるのは見知らぬカゲル……いや、カゲルになりつつある人間だった。


「まさかあのガキ!」

「あああああ!!!パパ!ママ!!」


体は他のカゲルに比べて小さいながらも人の皮膚では無くなりつつある反社会政府の現ボス。何の涙かもわからない液体を出してリコン学長とハルサキを両手でキツく締め付けていた。


「うるさい!うるさいよぉ!!」


耳に響く悲鳴を上げる男の子は四方八方に体をぶつけながらこちらへ向かってくる。そんな痛々しい声にステージ上の2体も顔を向けた。


「学長!ハルサキ!」

「リンガ…ネ…」


掠れるハルサキの声は確かにリンガネに届いた。『逃げろ』と。リコン学長は俯いていて意識があるのかもわからない。

止めなければ、2人を解放しなければ。それしか頭に無くなったリンガネは体の痛みさえも感じなくなって吐血しながら男の子へと走り出す。


「学長、ハルサキ」


辺りがスローモーションに動き始める。なのにリンガネの思考は嵐のように流れていった。


『何でこんな子に育ったのかしら。きっとあいつに似たんだわ。憎たらしい』


そんな風に嘲笑う女性の声。


『お前の父ちゃん捕まったんだろ?ヤバっ、犯罪者じゃん。ってことは犯罪者の子供がお前?』


バカにするように棘を含んだ言葉を吐くクソガキの声。


『行き場がないならここに来るか?我は教鞭を取っておるのじゃよ』


古風な言葉遣いをして、路地裏でボロボロになった彼女に手を差し伸べる女性の声。


『リンガネさんは凄いですね。なんて言うか、安心します』

『わかる!お姉さんって感じだよね!』

『……うん』


いつも集まれる時は彼女の部屋に集合して一緒に時を過ごす仲間達の声。


『きっかけだって、小さくても大きくてもきっかけになるんだ。お前の一言で気付けた』


普段よりも素直に笑う頼もしくて憧れの存在の声。


「っ!……死にたくない」


リンガネは勘付いていた。このまま突っ込めばきっと死んでしまうと。でもそうしないと2人を助けられない。

そんな死に進む彼女を引き止めたのは、過去の思い出だった。男の子と衝突する1歩手前で足を止めて特刀を持ち直して束縛の縄を出す。その縄は男の子でもなく、リコン学長とハルサキでもない場所へと伸ばされて行った。


「落ちろ!!」


縄が巻き付いたのは構堂の上部にあった絵画と反社会政府の写真が飾られている額縁。ステージの2体では効かないけど、男の子ならまだ完全なカゲルではない。

当たれば一瞬でも力が抜けるだろう。それを読んだリンガネは縄を地走らせるように振り下ろしのだ。
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