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6章 反社会政府編 〜それぞれの戦い〜
64話 誇り高き学長 【リコン学長、ハルサキとリンガネ班】
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「ああああああ!!」
落下した額縁の角が男の子の頭に落ちて痛々しい声が構堂に響く。落とした張本人リンガネも目をギュッと瞑って心の中で謝った。
その隙にリコン学長が着物を乱しながらも膨張する男の子の手から逃げ出す。しかし逃れられたのはリコン学長だけで、ハルサキはその一瞬さえ動くことが出来なかった。
「リンガネ、動ける?」
「ゲホッ。平気」
「死んじゃダメよ」
「死なねぇよ」
口の中が鉄の味しかしないリンガネはまた吐き出すように赤い花を散らばせる。リコン学長がリンガネを脇に抱き抱えると隅の方に一時避難した。
「………ねぇ、カゲルがカゲルを喰ったらどうなると思う?」
「何だよ急に」
「カゲルの餌は人間。食べれば胃が満たされて気力と体力が増すの。それは勿論アカデミーの生徒なら知ってるわよね」
「おい!関係あるのかそれ!」
「以前カゲルを討伐した教員からこんな報告を受けたの」
リンガネのツッコミに一切返事をくれないリコン学長。苛立つリンガネを無視して話し続ける。
そんな会話をしている今でもハルサキは男の子の手の中にいて、もがき苦しんでいるのだ。強引にリコン学長の腕から抜け出したリンガネは何か使える障害物がないかを探す。共に戦い飯を食った仲間を放っておいて話せるほど、彼女には余裕がなかった。
しかしそれを落ち着かせるようにリコン学長はリンガネの肩に手を置く。
「捕らわれた教員がせめてもの抵抗として消滅する前のカゲルの腕を活動しているカゲルの口へ投げ込んだ」
「だから!!」
「そしたら一瞬で毒が回ったようにカゲルは意識を失ったのよ」
「っ!おい、それ…」
リコン学長は着物の中に仕込んであった小さな筒から1本の注射を取り出す。そこには真っ黒な液体が入っていてゆらゆらと小さく波打っていた。
「これは事前に潜入させたアカデミーの偵察者から預かった物。カゲルから採取した血の原液ね」
「何する気だよ…」
「ここに存在するカゲルの3体は薄めたこれを打って体を強化した。まぁ、現ボスは成長途中だから薄めてもあんな感じになっちゃったけど」
そう説明しながら少しだけ注射器からカゲルの原液をピュッと出して壊れてないのを確認し始める。リンガネは嫌な予感しか感じられない。するとリコン学長は力を抜いたように笑った。
「リンガネにも、ハルサキにも、そしてアカデミーの生徒達には迷惑ばかりかけてるわね。貴方達を利用してカゲルを討伐する私達大人を許してちょうだい」
「待てよ、おい、学長…」
「これを打って自我を保てる時間は約10秒。もしかしたらそれ以下かもしれない。私が完全に私を失う前にカゲル化した両腕と片足を貴方が裂いてあの3体に喰わせてあげて」
構堂のステージでは何をして良いのかわからなくて混乱し始める2体のカゲル。壊された壁の付近では男の子が更に強く暴れ出した。
力を強められるハルサキは何度も咳き込んでいる。騒がしい構堂なのに、リンガネの耳にはリコン学長の言葉しか入らない。
「やだよ…。そんな役目…やりたくない!」
「我儘言わないの」
「でもでも!委員長の我儘は聞いたじゃん!先生を受け入れるやつ!何であたしの我儘は…?」
「ならここで3人して死ぬ?」
「えっ…」
「貴方は死にたくないからさっき1歩手前で止まったのでしょう?その想いをかき消していいの?貴方を引き留めたものを裏切るけれど?」
仲間1人を生贄にして勝つか。仲間全員が喰われて死ぬか。簡単な選択のはずなのにリンガネは絶望したように涙を流す。
「林金綾。春咲巡(はるさき めぐる)」
「「!!」」
「今だけは、人の心を捨てなさい」
「学長!!」
「何っ、を…!」
リコン学長は人間として最後、一粒の涙を頬に伝わせて腕に注射を打つ。すると勢いよく血を吐いて叫んだ。段々と皮膚が黒くなって人間ではなくなっていくリコン学長。
「ああ、ああ…」
ハルサキの力無い声がリンガネの耳に入る。事前に何も聞かされていなかったハルサキは急な出来事を処理しきれてないのだろう。残り8秒。リンガネは唇を噛み締めて特刀を握り直す。
「さぁ…貴方が、ヒーローに、なるのよ」
残り6秒。原液だとやはり強かったのか、瞬く間にカゲルと化した。もうリコン学長の姿ではなくなっている。
「ごめん、ごめんなさい」
残り4秒。原液の回りが速いせいで言葉さえも言えなくなってしまう。
「先生、勇気をを貸して」
「リンガネ!やめ…」
残り2秒。今のリンガネに人の心というものが消え去った。
光のない目はドSで性癖歪んでて、それでも頼もしくて綺麗なアカデミーの頂点を映している。何も考えられなくなったリンガネは風の速さで目の前のカゲルの両腕と右足を切断した。
落下した額縁の角が男の子の頭に落ちて痛々しい声が構堂に響く。落とした張本人リンガネも目をギュッと瞑って心の中で謝った。
その隙にリコン学長が着物を乱しながらも膨張する男の子の手から逃げ出す。しかし逃れられたのはリコン学長だけで、ハルサキはその一瞬さえ動くことが出来なかった。
「リンガネ、動ける?」
「ゲホッ。平気」
「死んじゃダメよ」
「死なねぇよ」
口の中が鉄の味しかしないリンガネはまた吐き出すように赤い花を散らばせる。リコン学長がリンガネを脇に抱き抱えると隅の方に一時避難した。
「………ねぇ、カゲルがカゲルを喰ったらどうなると思う?」
「何だよ急に」
「カゲルの餌は人間。食べれば胃が満たされて気力と体力が増すの。それは勿論アカデミーの生徒なら知ってるわよね」
「おい!関係あるのかそれ!」
「以前カゲルを討伐した教員からこんな報告を受けたの」
リンガネのツッコミに一切返事をくれないリコン学長。苛立つリンガネを無視して話し続ける。
そんな会話をしている今でもハルサキは男の子の手の中にいて、もがき苦しんでいるのだ。強引にリコン学長の腕から抜け出したリンガネは何か使える障害物がないかを探す。共に戦い飯を食った仲間を放っておいて話せるほど、彼女には余裕がなかった。
しかしそれを落ち着かせるようにリコン学長はリンガネの肩に手を置く。
「捕らわれた教員がせめてもの抵抗として消滅する前のカゲルの腕を活動しているカゲルの口へ投げ込んだ」
「だから!!」
「そしたら一瞬で毒が回ったようにカゲルは意識を失ったのよ」
「っ!おい、それ…」
リコン学長は着物の中に仕込んであった小さな筒から1本の注射を取り出す。そこには真っ黒な液体が入っていてゆらゆらと小さく波打っていた。
「これは事前に潜入させたアカデミーの偵察者から預かった物。カゲルから採取した血の原液ね」
「何する気だよ…」
「ここに存在するカゲルの3体は薄めたこれを打って体を強化した。まぁ、現ボスは成長途中だから薄めてもあんな感じになっちゃったけど」
そう説明しながら少しだけ注射器からカゲルの原液をピュッと出して壊れてないのを確認し始める。リンガネは嫌な予感しか感じられない。するとリコン学長は力を抜いたように笑った。
「リンガネにも、ハルサキにも、そしてアカデミーの生徒達には迷惑ばかりかけてるわね。貴方達を利用してカゲルを討伐する私達大人を許してちょうだい」
「待てよ、おい、学長…」
「これを打って自我を保てる時間は約10秒。もしかしたらそれ以下かもしれない。私が完全に私を失う前にカゲル化した両腕と片足を貴方が裂いてあの3体に喰わせてあげて」
構堂のステージでは何をして良いのかわからなくて混乱し始める2体のカゲル。壊された壁の付近では男の子が更に強く暴れ出した。
力を強められるハルサキは何度も咳き込んでいる。騒がしい構堂なのに、リンガネの耳にはリコン学長の言葉しか入らない。
「やだよ…。そんな役目…やりたくない!」
「我儘言わないの」
「でもでも!委員長の我儘は聞いたじゃん!先生を受け入れるやつ!何であたしの我儘は…?」
「ならここで3人して死ぬ?」
「えっ…」
「貴方は死にたくないからさっき1歩手前で止まったのでしょう?その想いをかき消していいの?貴方を引き留めたものを裏切るけれど?」
仲間1人を生贄にして勝つか。仲間全員が喰われて死ぬか。簡単な選択のはずなのにリンガネは絶望したように涙を流す。
「林金綾。春咲巡(はるさき めぐる)」
「「!!」」
「今だけは、人の心を捨てなさい」
「学長!!」
「何っ、を…!」
リコン学長は人間として最後、一粒の涙を頬に伝わせて腕に注射を打つ。すると勢いよく血を吐いて叫んだ。段々と皮膚が黒くなって人間ではなくなっていくリコン学長。
「ああ、ああ…」
ハルサキの力無い声がリンガネの耳に入る。事前に何も聞かされていなかったハルサキは急な出来事を処理しきれてないのだろう。残り8秒。リンガネは唇を噛み締めて特刀を握り直す。
「さぁ…貴方が、ヒーローに、なるのよ」
残り6秒。原液だとやはり強かったのか、瞬く間にカゲルと化した。もうリコン学長の姿ではなくなっている。
「ごめん、ごめんなさい」
残り4秒。原液の回りが速いせいで言葉さえも言えなくなってしまう。
「先生、勇気をを貸して」
「リンガネ!やめ…」
残り2秒。今のリンガネに人の心というものが消え去った。
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