31 / 300
本編
線香
しおりを挟む
1535年8月『大隅国・国分清水城』種子島左兵衛尉時堯・7歳
今年も津田監物殿が船団を仕立ててやってこられた。まあ根来ゆかりの商人は毎日のように湊に入ってくるが、監物殿の紹介状を持っている者だけは少し優遇している。父上様を京・東国に送るのに監物殿の護衛は外せない。そうなると特別待遇は仕方ない、多少の損得など父上様のお命には代えられない。
「どうかな左兵衛尉殿?」
「よき出来でございますな! 流石に根来の職人は腕がいい!」
「うむ、左兵衛尉殿に太鼓判を押してもらえば安心だ!」
「ええ、この出来なら使うにしても売るにしても強気の交渉ができるでしょう」
「では左兵衛尉殿に買って頂こうかな?」
「喜んで買わせていただきますが、数はどれくらいありますか?」
「軍船も買ってくれるのかな?」
「はい、出来がよければ全部買い取らせていただきます。でも検品は行わせていただきますよ?」
「それは当然だな、売買用の軍船一杯に運んできたよ」
まあ軍船と言ってもスクナーやフリゲートではない、南蛮船の建造技術はまだ種子島家の独占技術にしたい。いずれは日本中に知れ渡るだろうが、先行の有利さを出来るだけ維持したい。だがら監物殿から購入するのは関船か小早船なのだが、それでも船首に大砲を搭載すればかなりの戦力になる!
「監物殿が特に欲しがられているのは、仏像真珠と螺鈿細工でしたね?」
「それとまた龍涎香を頼む」
「並みの商品でよかったのですね?」
「ああ、毎日のお勤めに使うからな、欲しがる方が多くなったので数がいるのだ」
「高価な物でよければ麝香や香木も明国・南蛮・南方から色々と仕入れていますが?」
香に使うものとして、動物性のものとして龍涎香以外に麝香を輸入しているし、伽羅・沈香・白檀などの天然香木や乳香・安息香などの芳香のある樹脂も手に入れている。だが乳香や麝香などは漢方薬としても使えるので、金と同じ重さの価値で買い入れているから、売る時は金の4倍の価値で売る必要がある。
「そうだな、並みの品物を必要量手に入れる事が出来た後なら、多少は高価な品も買えるのだが」
「では新商品があるのですが試してみますか?」
「どんなものなのだ?」
俺が色々と奇抜で便利な新商品を開発生産している事を知っている監物殿は、興味深々な様子を隠す事なくたずねられた。
そこで俺は線香をに火をつけて香りを確かめてもらった。
1つ目は杉線香で、3ヶ月ほど乾燥させた杉の葉を水車を用いて粉末にしたものに湯とノリを加えて練り、線状に成型・乾燥させたものだ。香木を使用した線香には香りが劣るが安価に製造できる。だがヤニが含まれるので、大量の煙を出す欠点がある。
「これはいい! これはいくらだ?!」
この後で熾烈な価格交渉があったが、他の商人より1割安い卸値で販売することで話がついた。だがそれでも製造原価より5倍の利益を確保している。
2つ目は匂い線香で、椨(タブ)の木の樹皮を粉末にしたものに、白檀・伽羅といった香木の粉末や他の香料(バラ・ヨモギ・ショウブ・ラベンダーなど)に炭の粉末を練り線状に成型・乾燥させたものだ。香木でも低品質のものや見た目に劣るものを使い、俺独自の配合で出来るだけ安価に、だが香りが引き立つように創り出した商品だ。
匂い線香の香りを確認した監物殿は、唸り声を隠す事なく悩みに悩まれた上で、高価な物と並みの商品を上手く配分されて購入された。もちろん転売することも考慮されているのだろうが、父上様の船団が商品を大量に輸送するので、父上様が遠慮して商品を販売しない紀伊国・大和国での人気商品を選ぶ必要があった。
だがまあまだ日本国内に線香は出回っていないから、日本初の商品という事になる。だからとても貴重品で高価に売る事が出来る。朝廷と幕府に献上する線香以外は監物殿にだけ卸すことにするから、1年目だけは価格競争無しで監物殿は儲けることが出来る。
父上様の安全を確保するためには、日本各地にある根来寺の末寺を利用する必要があるのだ!
今年も津田監物殿が船団を仕立ててやってこられた。まあ根来ゆかりの商人は毎日のように湊に入ってくるが、監物殿の紹介状を持っている者だけは少し優遇している。父上様を京・東国に送るのに監物殿の護衛は外せない。そうなると特別待遇は仕方ない、多少の損得など父上様のお命には代えられない。
「どうかな左兵衛尉殿?」
「よき出来でございますな! 流石に根来の職人は腕がいい!」
「うむ、左兵衛尉殿に太鼓判を押してもらえば安心だ!」
「ええ、この出来なら使うにしても売るにしても強気の交渉ができるでしょう」
「では左兵衛尉殿に買って頂こうかな?」
「喜んで買わせていただきますが、数はどれくらいありますか?」
「軍船も買ってくれるのかな?」
「はい、出来がよければ全部買い取らせていただきます。でも検品は行わせていただきますよ?」
「それは当然だな、売買用の軍船一杯に運んできたよ」
まあ軍船と言ってもスクナーやフリゲートではない、南蛮船の建造技術はまだ種子島家の独占技術にしたい。いずれは日本中に知れ渡るだろうが、先行の有利さを出来るだけ維持したい。だがら監物殿から購入するのは関船か小早船なのだが、それでも船首に大砲を搭載すればかなりの戦力になる!
「監物殿が特に欲しがられているのは、仏像真珠と螺鈿細工でしたね?」
「それとまた龍涎香を頼む」
「並みの商品でよかったのですね?」
「ああ、毎日のお勤めに使うからな、欲しがる方が多くなったので数がいるのだ」
「高価な物でよければ麝香や香木も明国・南蛮・南方から色々と仕入れていますが?」
香に使うものとして、動物性のものとして龍涎香以外に麝香を輸入しているし、伽羅・沈香・白檀などの天然香木や乳香・安息香などの芳香のある樹脂も手に入れている。だが乳香や麝香などは漢方薬としても使えるので、金と同じ重さの価値で買い入れているから、売る時は金の4倍の価値で売る必要がある。
「そうだな、並みの品物を必要量手に入れる事が出来た後なら、多少は高価な品も買えるのだが」
「では新商品があるのですが試してみますか?」
「どんなものなのだ?」
俺が色々と奇抜で便利な新商品を開発生産している事を知っている監物殿は、興味深々な様子を隠す事なくたずねられた。
そこで俺は線香をに火をつけて香りを確かめてもらった。
1つ目は杉線香で、3ヶ月ほど乾燥させた杉の葉を水車を用いて粉末にしたものに湯とノリを加えて練り、線状に成型・乾燥させたものだ。香木を使用した線香には香りが劣るが安価に製造できる。だがヤニが含まれるので、大量の煙を出す欠点がある。
「これはいい! これはいくらだ?!」
この後で熾烈な価格交渉があったが、他の商人より1割安い卸値で販売することで話がついた。だがそれでも製造原価より5倍の利益を確保している。
2つ目は匂い線香で、椨(タブ)の木の樹皮を粉末にしたものに、白檀・伽羅といった香木の粉末や他の香料(バラ・ヨモギ・ショウブ・ラベンダーなど)に炭の粉末を練り線状に成型・乾燥させたものだ。香木でも低品質のものや見た目に劣るものを使い、俺独自の配合で出来るだけ安価に、だが香りが引き立つように創り出した商品だ。
匂い線香の香りを確認した監物殿は、唸り声を隠す事なく悩みに悩まれた上で、高価な物と並みの商品を上手く配分されて購入された。もちろん転売することも考慮されているのだろうが、父上様の船団が商品を大量に輸送するので、父上様が遠慮して商品を販売しない紀伊国・大和国での人気商品を選ぶ必要があった。
だがまあまだ日本国内に線香は出回っていないから、日本初の商品という事になる。だからとても貴重品で高価に売る事が出来る。朝廷と幕府に献上する線香以外は監物殿にだけ卸すことにするから、1年目だけは価格競争無しで監物殿は儲けることが出来る。
父上様の安全を確保するためには、日本各地にある根来寺の末寺を利用する必要があるのだ!
1
あなたにおすすめの小説
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~
中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」
唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。
人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。
目的は一つ。充実した人生を送ること。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる