魔法武士・種子島時堯

克全

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本編

徳淵津

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1536年3月『大隅・国分清水城』種子島左近衛将監時堯・8歳

「今日は特別の計らいを持って、種子島左近衛将監時堯様との直答を許す、光栄に思うがよい!」

「「はぁはぁ~」」

「それで両名の願いとはなんだ?」

 福丸朱雀が白々しく確認する、もちろん朱雀が散々事前に打ち合わせをしてある。そうでなければ超多忙な俺が、無為な時間を使う事になってしまう。徳淵津を代表して陳情にやって来た「かさ屋」と「森」の両豪商は、床に頭を擦りつけるようにしている。

「徳淵津を代表いたしましてお願いいたします、徳淵津の民は1人の例外もなく種子島家に支配して頂きたいと願っております」

 徳淵津は既に風前の灯火だった。坊津が繁栄すればするほど、それに反比例して徳淵津に船が立ち寄らなくなった。しかも上村兵庫允長種を救い出して匿って以来、相良家に縁のある商人には商品の売買を禁止している。

 俺が相良家を目の敵にしたことを知った大名・国衆・地侍・商人は、露骨に相良家、なかでも元凶たる上村上総介頼興から離れて行った。家臣・商人・領民全てから見放された相良家はみじめなもので、自給自作出来る物以外を買うことすら出来なくなった。当然ながら軍資金や家政を回すための運転資金を借金することすら出来なくなった。

 そうなると相良家内での権力闘争・内紛が再燃し、その軍資金を借金出来ない以上、領内にある徳淵津の商人から無理矢理借りる事になる。だが借りると言うのは嘘で、本当は武力を背景にした強奪であり、そろそろ体裁をかなぐり捨てて徳淵津の襲撃略奪に発展しそうなほど相良家は追い詰められていた。

 俺とここまで敵対していなければ、相良家が独自で船を仕立てて明国・朝鮮・琉球に交易船を送り、利を得る事も可能だったのだろう。だが俺と敵対して公式の取引禁止を出入りの全商人に通達されてしまい、どこに行っても米粒1つ売買することが出来なくなっているのだ。

「ではかさ屋、相良家の家臣を種子島家の味方に引き入れ、肥後に攻め込み道案内をさせるのだな?」

「はい! 皆降伏臣従する事を誓っております!」

「城地を召し上げ、扶持を支給する形になるが、それでもいいのだな?!」

「はい! どなたももう領地を治めるのは懲り懲りと申されております」

 まあ当然と言えば当然なのだが、薩摩や日向の国衆・地侍の時と同じだ。年貢を納める自作農・小作農に逃げられたら、自分で耕した分しか収入がなくなってしまう。半農半武の地侍は、戦争時の参戦義務を果たす代わりの年貢は免除されている。それを無理に年貢を取り立てたら、たちまち敵国に寝返ってしまうし戦争時に参戦してくれなくなる。

 時節が訪れたので肥後に攻め込む事にした。
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