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本編
久我家対策
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1542年12月3日『京・種子島屋敷』種子島権中納言時堯・14歳
「権中納言殿! 今言われた事に嘘偽りは御座いませんな?!」
「本当でございます、興福寺一条院の僧が証言しており、呪詛の依頼を受けた記録と礼金の額が記された書が残っております」
「おのれ稙家! 絶対に許さん!」
「念の為に呪詛を行った僧と会われますか?」
「お願いしたい、それと記録を期した書を見せて頂きたい」
「お安い御用です、それでは参りましょうか」
俺は人を運ぶための大籠に久我通言を乗せて大和国にある興福寺一条院まで空を飛んで向かった。しかし本当に近衛尚通が呪詛を行っていたとは思わなかった!
自分の息子に久我家を継がせるために、嫡男の妻の実家に呪詛を仕掛けるとは、公家とは恐ろしい生き物だ!
種子島家忍軍に新たに加えた者の中には、俺が寺社領を没収した寺院に抱えられていた河原者も多くいた。彼らから集めた情報の中に、公家や武家に商家が寺社に依頼して敵対する者に呪詛をかけていたと言うものがあった。そしてその中に近衛尚通が興福寺一条院の抱える呪術師に久我邦通を呪殺すると言うものがあったのだ!
「通言公、これを証拠として晴通殿との養子縁組を解消されてはどうですか?」
「それは当然そうする! だが近衛尚通に報復できないのが悔しい!」
「通言公がその気ならお手伝いいたしますが?」
「本当ですか!」
「ええ、義父の鷹司忠冬公と義兄の九条稙通禅定太閤殿下も手伝ってくれますし、一条家も二条家もこの件に関しては協力を約束してくれています」
どの家も足利家が没落することで追い詰められた近衛家が、今後も呪詛を続ける事を警戒しているのだろう。それに俺が興福寺も延暦寺の手に入れたから、俺が呪詛を使わないように事前に手を打っておきたいのだろう。
「よろしくお願い申し上げる」
「いえいえ、呪詛を悪用する者を野放しにしたら、今後また被害を受ける公家衆が出てしまいます。ここはきっちりと処罰しなければいけません、それに通言公にはお願いしたいことがあるのです」
「何でございますかな?」
通言公は途端に警戒した。
「種子島家は今後戦で不具廃疾した者や、産まれもって障害のある者を助けてやりたいと思っているのです」
「それは当道座の本所を持つ久我家に協力しろと言う事ですかな?」
「いえいえ、天下を統一する戦で傷つく者の数は数多となるでしょう、それを久我家で支援するなど、とても無理かと思います。ここは当道座の本所を種子島家にお譲り頂きたいのです」
「それは幾らなんでも無理無体だ! 我が久我家の家業をそう容易く譲るなど出来ん!」
「その代わりと言っては何ですが、淳和院・奨学院の別当職を中院流の一門の中で最上位の者が務めるのではなく、久我家の専職とするように計らいましょう」
「それは有り難いが、本当にそのような事が出来るのか?」
「それが無理なら、種子島家が占領している興福寺か延暦寺の中から、2つの院別当職を久我家専職といたしましょう」
「本当でございますな?!」
「御上に誓って約束は守りますよ。それと毎年500石の玄米を、久我家養嗣子となる新庄直昌の息子に支給いたしましょう」
「しかしそれでは、慶子に次男が産まれた時には改めて近衛家から養嗣子を迎えると言う話が嘘になるのではないか?」
「邦通殿を呪殺した近衛家から養嗣子を迎えたいのですか?」
「迎えたくない!」
「では今は新庄直昌の長男を養嗣子に迎えられればいいのです。後の事は近衛家に嫁がれた慶子さまに相談されて、近衛家から久我家に戻られるのか、それとも近衛家に残って中から久我家を助けるのか、2人で決められてはいかがですか」
「そうだな、近衛家を慶子を通して支配することも考えてもよいな!」
結局呪殺を依頼した近衛尚通は俺の支配下にある対馬に島流しとなり、久我家当主となっていた久我晴通は養子を解消され近衛家に帰された。久我家は還俗した通言公が当主に復帰し、新庄直昌の長男を新たに養嗣子に迎えた。
「権中納言殿! 今言われた事に嘘偽りは御座いませんな?!」
「本当でございます、興福寺一条院の僧が証言しており、呪詛の依頼を受けた記録と礼金の額が記された書が残っております」
「おのれ稙家! 絶対に許さん!」
「念の為に呪詛を行った僧と会われますか?」
「お願いしたい、それと記録を期した書を見せて頂きたい」
「お安い御用です、それでは参りましょうか」
俺は人を運ぶための大籠に久我通言を乗せて大和国にある興福寺一条院まで空を飛んで向かった。しかし本当に近衛尚通が呪詛を行っていたとは思わなかった!
自分の息子に久我家を継がせるために、嫡男の妻の実家に呪詛を仕掛けるとは、公家とは恐ろしい生き物だ!
種子島家忍軍に新たに加えた者の中には、俺が寺社領を没収した寺院に抱えられていた河原者も多くいた。彼らから集めた情報の中に、公家や武家に商家が寺社に依頼して敵対する者に呪詛をかけていたと言うものがあった。そしてその中に近衛尚通が興福寺一条院の抱える呪術師に久我邦通を呪殺すると言うものがあったのだ!
「通言公、これを証拠として晴通殿との養子縁組を解消されてはどうですか?」
「それは当然そうする! だが近衛尚通に報復できないのが悔しい!」
「通言公がその気ならお手伝いいたしますが?」
「本当ですか!」
「ええ、義父の鷹司忠冬公と義兄の九条稙通禅定太閤殿下も手伝ってくれますし、一条家も二条家もこの件に関しては協力を約束してくれています」
どの家も足利家が没落することで追い詰められた近衛家が、今後も呪詛を続ける事を警戒しているのだろう。それに俺が興福寺も延暦寺の手に入れたから、俺が呪詛を使わないように事前に手を打っておきたいのだろう。
「よろしくお願い申し上げる」
「いえいえ、呪詛を悪用する者を野放しにしたら、今後また被害を受ける公家衆が出てしまいます。ここはきっちりと処罰しなければいけません、それに通言公にはお願いしたいことがあるのです」
「何でございますかな?」
通言公は途端に警戒した。
「種子島家は今後戦で不具廃疾した者や、産まれもって障害のある者を助けてやりたいと思っているのです」
「それは当道座の本所を持つ久我家に協力しろと言う事ですかな?」
「いえいえ、天下を統一する戦で傷つく者の数は数多となるでしょう、それを久我家で支援するなど、とても無理かと思います。ここは当道座の本所を種子島家にお譲り頂きたいのです」
「それは幾らなんでも無理無体だ! 我が久我家の家業をそう容易く譲るなど出来ん!」
「その代わりと言っては何ですが、淳和院・奨学院の別当職を中院流の一門の中で最上位の者が務めるのではなく、久我家の専職とするように計らいましょう」
「それは有り難いが、本当にそのような事が出来るのか?」
「それが無理なら、種子島家が占領している興福寺か延暦寺の中から、2つの院別当職を久我家専職といたしましょう」
「本当でございますな?!」
「御上に誓って約束は守りますよ。それと毎年500石の玄米を、久我家養嗣子となる新庄直昌の息子に支給いたしましょう」
「しかしそれでは、慶子に次男が産まれた時には改めて近衛家から養嗣子を迎えると言う話が嘘になるのではないか?」
「邦通殿を呪殺した近衛家から養嗣子を迎えたいのですか?」
「迎えたくない!」
「では今は新庄直昌の長男を養嗣子に迎えられればいいのです。後の事は近衛家に嫁がれた慶子さまに相談されて、近衛家から久我家に戻られるのか、それとも近衛家に残って中から久我家を助けるのか、2人で決められてはいかがですか」
「そうだな、近衛家を慶子を通して支配することも考えてもよいな!」
結局呪殺を依頼した近衛尚通は俺の支配下にある対馬に島流しとなり、久我家当主となっていた久我晴通は養子を解消され近衛家に帰された。久我家は還俗した通言公が当主に復帰し、新庄直昌の長男を新たに養嗣子に迎えた。
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