魔法武士・種子島時堯

克全

文字の大きさ
217 / 300
本編

九条禅定太閤殿下の依頼

しおりを挟む
「権大納言殿、どうであろうか頼まれてくれないでおじゃるか?」

「しかし禅定太閤殿下、こちらから戦を仕掛けて天下の静謐(せいひつ)を乱す訳にはいきません」

「うむ、だが権大納言殿、すでに丹波は国衆同士が争い民が苦しんでおる。権大納言殿が攻め込んで、一刻も早く戦乱を治めては貰えないかでおじゃるか?」

 九条禅定太閤殿下が、いつもの様に准三宮・鷹司兼輔殿下と鷹司関白殿下を伴ってやってきた。酒と肴を無心しに来たのかと思っていたのだが、今日はそれだけではなかった。もちろん酒と肴は遠慮なく飲み食いするのだが、それ以外の事も無心しようとするから困るのだ。

「しかしながら禅定太閤殿下、我が配下の将兵は阿波公方を擁(よう)する三好一党を警戒しつつ、播磨の御領所・荘園を回復すべく、摂津に主力軍を置いております。それを丹波に攻め込むとなると、兵糧などの輸送が大変です」

「だが権大納言殿、莫大な費用を使って人々を集め、河川に軍用道路兼用の堤防を築かせたではないか。それと、あの馬車鉄道とやらを使えば十分移動は可能なのではないか?」

「准三宮殿下、やれないことはございませんが、将兵への負担が大きくなるのです。播磨なら9割5分勝てる戦が、無理に攻撃先を丹波に変えれば8割から7割五分になってしまいます」

 やれやれ、どうやら3人で示し合わせてからやって来たようだ。天下泰平の世を創り出すために、大義名分が立つ限りは戦を仕掛ける覚悟はしている。だが朝廷や公家の欲を満足させるために、将兵が死傷する確率を増やす訳にはいかない。しかしどんな思惑があって、攻撃先を変更させようと言うのだろう?

「権大納言殿、正直に申せば公家たちの欲と恐怖が理由なのだ」

「関白殿下、欲は荘園の回復ですから理由はよく分かります、ですが恐怖とは何のことですか?」

「権大納言殿が京を守護してくれているから、頭では大丈夫だとは分かっている、だが心が戦を恐れておるのだ。応仁の乱の時、一条政房殿が凶刃に倒れたこと、公家衆は忘れてはおらんのだ! いやそれだけではない、戦のたびに雑兵どもが乱暴狼藉を働き、公家の婦女子が惨い目にあっておるのだ」

「京の七口の内、丹波口の先が心配と言う事ですか?」

「そうなのでおじゃる、権大納言殿の御蔭で、京に接する国々は次々と平定され平和になっておじゃる。しかしながら丹波だけは、未だに国衆が争い御領所も荘園も返そうとしないでおじゃる。土地自体は権大納言殿が管理して、年貢さえ納めてくれればいいのでおじゃる」

「しかし禅定太閤殿下、京には我が配下が六衛軍として駐屯しており、全く心配などいらないです」

「分かっておるのじゃ、頭では分かっておるのじゃ、だがのう、大納言殿の軍が10万も京から遠い所に遠征するとなると、夜も眠らなくなるのじゃ」

「分かりました、全軍全てを京に戻し丹波を攻めることは出来ませんし、今日明日直ぐにと言う訳にもいきません。ですが出来るだけ早く軍を京に戻し、丹波衆に臣従を誓うよう圧力をかけましょう」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

処理中です...