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本編
九条禅定太閤殿下の依頼
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「権大納言殿、どうであろうか頼まれてくれないでおじゃるか?」
「しかし禅定太閤殿下、こちらから戦を仕掛けて天下の静謐(せいひつ)を乱す訳にはいきません」
「うむ、だが権大納言殿、すでに丹波は国衆同士が争い民が苦しんでおる。権大納言殿が攻め込んで、一刻も早く戦乱を治めては貰えないかでおじゃるか?」
九条禅定太閤殿下が、いつもの様に准三宮・鷹司兼輔殿下と鷹司関白殿下を伴ってやってきた。酒と肴を無心しに来たのかと思っていたのだが、今日はそれだけではなかった。もちろん酒と肴は遠慮なく飲み食いするのだが、それ以外の事も無心しようとするから困るのだ。
「しかしながら禅定太閤殿下、我が配下の将兵は阿波公方を擁(よう)する三好一党を警戒しつつ、播磨の御領所・荘園を回復すべく、摂津に主力軍を置いております。それを丹波に攻め込むとなると、兵糧などの輸送が大変です」
「だが権大納言殿、莫大な費用を使って人々を集め、河川に軍用道路兼用の堤防を築かせたではないか。それと、あの馬車鉄道とやらを使えば十分移動は可能なのではないか?」
「准三宮殿下、やれないことはございませんが、将兵への負担が大きくなるのです。播磨なら9割5分勝てる戦が、無理に攻撃先を丹波に変えれば8割から7割五分になってしまいます」
やれやれ、どうやら3人で示し合わせてからやって来たようだ。天下泰平の世を創り出すために、大義名分が立つ限りは戦を仕掛ける覚悟はしている。だが朝廷や公家の欲を満足させるために、将兵が死傷する確率を増やす訳にはいかない。しかしどんな思惑があって、攻撃先を変更させようと言うのだろう?
「権大納言殿、正直に申せば公家たちの欲と恐怖が理由なのだ」
「関白殿下、欲は荘園の回復ですから理由はよく分かります、ですが恐怖とは何のことですか?」
「権大納言殿が京を守護してくれているから、頭では大丈夫だとは分かっている、だが心が戦を恐れておるのだ。応仁の乱の時、一条政房殿が凶刃に倒れたこと、公家衆は忘れてはおらんのだ! いやそれだけではない、戦のたびに雑兵どもが乱暴狼藉を働き、公家の婦女子が惨い目にあっておるのだ」
「京の七口の内、丹波口の先が心配と言う事ですか?」
「そうなのでおじゃる、権大納言殿の御蔭で、京に接する国々は次々と平定され平和になっておじゃる。しかしながら丹波だけは、未だに国衆が争い御領所も荘園も返そうとしないでおじゃる。土地自体は権大納言殿が管理して、年貢さえ納めてくれればいいのでおじゃる」
「しかし禅定太閤殿下、京には我が配下が六衛軍として駐屯しており、全く心配などいらないです」
「分かっておるのじゃ、頭では分かっておるのじゃ、だがのう、大納言殿の軍が10万も京から遠い所に遠征するとなると、夜も眠らなくなるのじゃ」
「分かりました、全軍全てを京に戻し丹波を攻めることは出来ませんし、今日明日直ぐにと言う訳にもいきません。ですが出来るだけ早く軍を京に戻し、丹波衆に臣従を誓うよう圧力をかけましょう」
「しかし禅定太閤殿下、こちらから戦を仕掛けて天下の静謐(せいひつ)を乱す訳にはいきません」
「うむ、だが権大納言殿、すでに丹波は国衆同士が争い民が苦しんでおる。権大納言殿が攻め込んで、一刻も早く戦乱を治めては貰えないかでおじゃるか?」
九条禅定太閤殿下が、いつもの様に准三宮・鷹司兼輔殿下と鷹司関白殿下を伴ってやってきた。酒と肴を無心しに来たのかと思っていたのだが、今日はそれだけではなかった。もちろん酒と肴は遠慮なく飲み食いするのだが、それ以外の事も無心しようとするから困るのだ。
「しかしながら禅定太閤殿下、我が配下の将兵は阿波公方を擁(よう)する三好一党を警戒しつつ、播磨の御領所・荘園を回復すべく、摂津に主力軍を置いております。それを丹波に攻め込むとなると、兵糧などの輸送が大変です」
「だが権大納言殿、莫大な費用を使って人々を集め、河川に軍用道路兼用の堤防を築かせたではないか。それと、あの馬車鉄道とやらを使えば十分移動は可能なのではないか?」
「准三宮殿下、やれないことはございませんが、将兵への負担が大きくなるのです。播磨なら9割5分勝てる戦が、無理に攻撃先を丹波に変えれば8割から7割五分になってしまいます」
やれやれ、どうやら3人で示し合わせてからやって来たようだ。天下泰平の世を創り出すために、大義名分が立つ限りは戦を仕掛ける覚悟はしている。だが朝廷や公家の欲を満足させるために、将兵が死傷する確率を増やす訳にはいかない。しかしどんな思惑があって、攻撃先を変更させようと言うのだろう?
「権大納言殿、正直に申せば公家たちの欲と恐怖が理由なのだ」
「関白殿下、欲は荘園の回復ですから理由はよく分かります、ですが恐怖とは何のことですか?」
「権大納言殿が京を守護してくれているから、頭では大丈夫だとは分かっている、だが心が戦を恐れておるのだ。応仁の乱の時、一条政房殿が凶刃に倒れたこと、公家衆は忘れてはおらんのだ! いやそれだけではない、戦のたびに雑兵どもが乱暴狼藉を働き、公家の婦女子が惨い目にあっておるのだ」
「京の七口の内、丹波口の先が心配と言う事ですか?」
「そうなのでおじゃる、権大納言殿の御蔭で、京に接する国々は次々と平定され平和になっておじゃる。しかしながら丹波だけは、未だに国衆が争い御領所も荘園も返そうとしないでおじゃる。土地自体は権大納言殿が管理して、年貢さえ納めてくれればいいのでおじゃる」
「しかし禅定太閤殿下、京には我が配下が六衛軍として駐屯しており、全く心配などいらないです」
「分かっておるのじゃ、頭では分かっておるのじゃ、だがのう、大納言殿の軍が10万も京から遠い所に遠征するとなると、夜も眠らなくなるのじゃ」
「分かりました、全軍全てを京に戻し丹波を攻めることは出来ませんし、今日明日直ぐにと言う訳にもいきません。ですが出来るだけ早く軍を京に戻し、丹波衆に臣従を誓うよう圧力をかけましょう」
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