252 / 300
本編
吉川興経
しおりを挟む
1546年8月:小倉山城
「権大納言様、この度は家中の謀反人討伐に御協力いただけるとのこと、真にかたじけない存じます」
「治部少輔殿、率直に言うが、今のままでは家中を纏めることなど出来ないぞ」
「何を申されますか、今回の月山富田城の勝利も、私が尼子に味方したからこそでございます。尼子と大内の境界にいる国衆は、その時々に応じて臨機応変に大将を変えなければ、生き残ることなど出来ません」
「治部少輔殿の言う事はもっともだが、実際家中の者共が近しい一門を含めて治部少輔殿を廃嫡すべく動いておるではないか」
「それは私が進める党主権限強化に反対しているだけでございます、吉川一族全体の事では無く、自分達分家の利権を守ろうとする私利私欲でございます」
「確かにその通りだが、我としても大内家や一条摂関家への手前、問答無用で不忠者共を罰することは出来ぬ」
「なればどうすると申されるのですか!」
「治部少輔殿には隠居してもらい、改めて京で六衛府に出仕してもらう」
「では毛利の小せがれに吉川家をくれてやれと申されるのですか!」
「いや、大内義隆殿や毛利元就と同じやり方で我も嫌になるのだが、我が家臣から有能な者を治部少輔殿の養嗣子に送り、千法師殿をそのものの養嗣子として次代の当主とするのではどうだ?」
「本当に千法師を次代の当主にして頂けるのですね?」
「今まで種子島家は信義にもとる事はしたことが無いし、我も約束した事を破ったことが無い。治部少輔殿もその事は聞き及んでいるだろ?」
「それは聞いておりますが」
「経友殿、右衛門尉殿、入って来て率直な意見を聞かせてくれ」
俺は隣室で護衛として詰めている、吉川興経の叔父であり義父でもある宮庄経友と、腹心の大塩右衛門尉を呼び入れて、吉川興経のケツを押してもらう事にした。吉川興経は「鬼吉川」「俎板吉川」の異名を取った吉川経基殿の曾孫だけあって、武勇に関しては中々の者だ。だがいかんせん、文学にも親しみ和歌にも造詣の深く、智勇兼備・文武兼備の武将と言われた吉川経基殿と違い、知略の方は足らないようだ。
「殿、ここは権大納言様の申される通りになされませ、殿の隠居京行きを条件に、不忠者共は当主・嫡男を隠居に追い込み、殿と共に京に行くことになるのです。小倉山城に残る千法師様には、私と右衛門尉が御側に残り御守りいたしますから、安心して京に行かれて下さい」
両名の切々と情に訴え、理非を解く説得に吉川興経も納得して隠居を受け入れた。そこで誰を養嗣子にすべきか、ある程度は吉川家の忠臣に選ぶ権利を与える事にした。
「吉川家の氏族は藤原南家工藤氏流であったな?」
「はい、左様でございます」
「種子島家家臣団で藤原南家工藤氏流は、相良家・伊東家なのだが、彼らを一旦養嗣子として隠居させる以上、隠居後の領地を保証してもらわなければならない」
「ありがとうございます! そうして頂ければ我ら家臣一同も安心して御迎えすることが出来ます」
「今回謀叛を企んで城地没収となる、吉川経世をはじめとする不忠者達の所領を全てもらい受ける」
「それは結構な領地でございますね」
「これからは種子島家の一翼として戦ってもらう事になるから、減った領地を取り戻す事は可能だ」
「承りました、権大納言様の支援が無ければ殿は隠居に追い込まれ、我らも族滅させられていた事でしょう、ここは御提案を御受けさせて頂きます」
養嗣子の候補となったのは以下の者たちだった・
「伊東一族」
伊東祐梁
伊東量雄
伊東厳禅
新納親家
佐土原則秀
木脇祐守
長倉新八
「相良一族」
犬童頼安
深水頼金
佐牟田頼秀
内田鎮次
最終的には、若すぎると千法師との継承に問題が出ると言う事で、吉川興経と同年代の伊東厳禅を養嗣子として送り込むことで話がついた。
「権大納言様、この度は家中の謀反人討伐に御協力いただけるとのこと、真にかたじけない存じます」
「治部少輔殿、率直に言うが、今のままでは家中を纏めることなど出来ないぞ」
「何を申されますか、今回の月山富田城の勝利も、私が尼子に味方したからこそでございます。尼子と大内の境界にいる国衆は、その時々に応じて臨機応変に大将を変えなければ、生き残ることなど出来ません」
「治部少輔殿の言う事はもっともだが、実際家中の者共が近しい一門を含めて治部少輔殿を廃嫡すべく動いておるではないか」
「それは私が進める党主権限強化に反対しているだけでございます、吉川一族全体の事では無く、自分達分家の利権を守ろうとする私利私欲でございます」
「確かにその通りだが、我としても大内家や一条摂関家への手前、問答無用で不忠者共を罰することは出来ぬ」
「なればどうすると申されるのですか!」
「治部少輔殿には隠居してもらい、改めて京で六衛府に出仕してもらう」
「では毛利の小せがれに吉川家をくれてやれと申されるのですか!」
「いや、大内義隆殿や毛利元就と同じやり方で我も嫌になるのだが、我が家臣から有能な者を治部少輔殿の養嗣子に送り、千法師殿をそのものの養嗣子として次代の当主とするのではどうだ?」
「本当に千法師を次代の当主にして頂けるのですね?」
「今まで種子島家は信義にもとる事はしたことが無いし、我も約束した事を破ったことが無い。治部少輔殿もその事は聞き及んでいるだろ?」
「それは聞いておりますが」
「経友殿、右衛門尉殿、入って来て率直な意見を聞かせてくれ」
俺は隣室で護衛として詰めている、吉川興経の叔父であり義父でもある宮庄経友と、腹心の大塩右衛門尉を呼び入れて、吉川興経のケツを押してもらう事にした。吉川興経は「鬼吉川」「俎板吉川」の異名を取った吉川経基殿の曾孫だけあって、武勇に関しては中々の者だ。だがいかんせん、文学にも親しみ和歌にも造詣の深く、智勇兼備・文武兼備の武将と言われた吉川経基殿と違い、知略の方は足らないようだ。
「殿、ここは権大納言様の申される通りになされませ、殿の隠居京行きを条件に、不忠者共は当主・嫡男を隠居に追い込み、殿と共に京に行くことになるのです。小倉山城に残る千法師様には、私と右衛門尉が御側に残り御守りいたしますから、安心して京に行かれて下さい」
両名の切々と情に訴え、理非を解く説得に吉川興経も納得して隠居を受け入れた。そこで誰を養嗣子にすべきか、ある程度は吉川家の忠臣に選ぶ権利を与える事にした。
「吉川家の氏族は藤原南家工藤氏流であったな?」
「はい、左様でございます」
「種子島家家臣団で藤原南家工藤氏流は、相良家・伊東家なのだが、彼らを一旦養嗣子として隠居させる以上、隠居後の領地を保証してもらわなければならない」
「ありがとうございます! そうして頂ければ我ら家臣一同も安心して御迎えすることが出来ます」
「今回謀叛を企んで城地没収となる、吉川経世をはじめとする不忠者達の所領を全てもらい受ける」
「それは結構な領地でございますね」
「これからは種子島家の一翼として戦ってもらう事になるから、減った領地を取り戻す事は可能だ」
「承りました、権大納言様の支援が無ければ殿は隠居に追い込まれ、我らも族滅させられていた事でしょう、ここは御提案を御受けさせて頂きます」
養嗣子の候補となったのは以下の者たちだった・
「伊東一族」
伊東祐梁
伊東量雄
伊東厳禅
新納親家
佐土原則秀
木脇祐守
長倉新八
「相良一族」
犬童頼安
深水頼金
佐牟田頼秀
内田鎮次
最終的には、若すぎると千法師との継承に問題が出ると言う事で、吉川興経と同年代の伊東厳禅を養嗣子として送り込むことで話がついた。
0
あなたにおすすめの小説
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
成瀬一
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる