魔法武士・種子島時堯

克全

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本編

吉川興経

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1546年8月:小倉山城

「権大納言様、この度は家中の謀反人討伐に御協力いただけるとのこと、真にかたじけない存じます」

「治部少輔殿、率直に言うが、今のままでは家中を纏めることなど出来ないぞ」

「何を申されますか、今回の月山富田城の勝利も、私が尼子に味方したからこそでございます。尼子と大内の境界にいる国衆は、その時々に応じて臨機応変に大将を変えなければ、生き残ることなど出来ません」

「治部少輔殿の言う事はもっともだが、実際家中の者共が近しい一門を含めて治部少輔殿を廃嫡すべく動いておるではないか」

「それは私が進める党主権限強化に反対しているだけでございます、吉川一族全体の事では無く、自分達分家の利権を守ろうとする私利私欲でございます」

「確かにその通りだが、我としても大内家や一条摂関家への手前、問答無用で不忠者共を罰することは出来ぬ」

「なればどうすると申されるのですか!」

「治部少輔殿には隠居してもらい、改めて京で六衛府に出仕してもらう」

「では毛利の小せがれに吉川家をくれてやれと申されるのですか!」

「いや、大内義隆殿や毛利元就と同じやり方で我も嫌になるのだが、我が家臣から有能な者を治部少輔殿の養嗣子に送り、千法師殿をそのものの養嗣子として次代の当主とするのではどうだ?」

「本当に千法師を次代の当主にして頂けるのですね?」

「今まで種子島家は信義にもとる事はしたことが無いし、我も約束した事を破ったことが無い。治部少輔殿もその事は聞き及んでいるだろ?」

「それは聞いておりますが」

「経友殿、右衛門尉殿、入って来て率直な意見を聞かせてくれ」

 俺は隣室で護衛として詰めている、吉川興経の叔父であり義父でもある宮庄経友と、腹心の大塩右衛門尉を呼び入れて、吉川興経のケツを押してもらう事にした。吉川興経は「鬼吉川」「俎板吉川」の異名を取った吉川経基殿の曾孫だけあって、武勇に関しては中々の者だ。だがいかんせん、文学にも親しみ和歌にも造詣の深く、智勇兼備・文武兼備の武将と言われた吉川経基殿と違い、知略の方は足らないようだ。

「殿、ここは権大納言様の申される通りになされませ、殿の隠居京行きを条件に、不忠者共は当主・嫡男を隠居に追い込み、殿と共に京に行くことになるのです。小倉山城に残る千法師様には、私と右衛門尉が御側に残り御守りいたしますから、安心して京に行かれて下さい」

 両名の切々と情に訴え、理非を解く説得に吉川興経も納得して隠居を受け入れた。そこで誰を養嗣子にすべきか、ある程度は吉川家の忠臣に選ぶ権利を与える事にした。

「吉川家の氏族は藤原南家工藤氏流であったな?」

「はい、左様でございます」

「種子島家家臣団で藤原南家工藤氏流は、相良家・伊東家なのだが、彼らを一旦養嗣子として隠居させる以上、隠居後の領地を保証してもらわなければならない」

「ありがとうございます! そうして頂ければ我ら家臣一同も安心して御迎えすることが出来ます」

「今回謀叛を企んで城地没収となる、吉川経世をはじめとする不忠者達の所領を全てもらい受ける」

「それは結構な領地でございますね」

「これからは種子島家の一翼として戦ってもらう事になるから、減った領地を取り戻す事は可能だ」

「承りました、権大納言様の支援が無ければ殿は隠居に追い込まれ、我らも族滅させられていた事でしょう、ここは御提案を御受けさせて頂きます」

 養嗣子の候補となったのは以下の者たちだった・
「伊東一族」
伊東祐梁
伊東量雄
伊東厳禅
新納親家
佐土原則秀
木脇祐守
長倉新八
「相良一族」
犬童頼安
深水頼金
佐牟田頼秀
内田鎮次

 最終的には、若すぎると千法師との継承に問題が出ると言う事で、吉川興経と同年代の伊東厳禅を養嗣子として送り込むことで話がついた。
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