魔法武士・種子島時堯

克全

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本編

日本住血吸虫

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「権大納言様、やはりこの病は肝の臓に原因があるのでしょうか?」

「そうだな、今は肝の臓を病んではいるが、元々は小さな小さな虫が身体に入ったのだ」
1547年1月


「以前教えて下さった、菌やウィルスではないのですか?」

「ああ、菌やウィルスとは違って、小さいとは言え一応眼で見ることが出来る。水辺や田んぼで作業などをしていると、皮膚から入り込んで人の身体に寄生するのだ」

「その寄生した虫が、以前教えて下さったように毒になったり、毒を創り出して人に悪影響を与えるのでございますか?」

「いや、少し違うのだ、確かに虫は脳や肝臓などに炎症を引き起こし、脳炎や肝炎を引き起こすんだが、1番は卵が肝の臓に溜まって肝炎から肝硬変を引き起こす事なのだ」

「そうなのですね! それでこのような症状を引き起こしているのですね!」

 参ったな!

 すっかりコイツの事を忘れてしまっていた。

 だがおかしいな?

 思いだした範囲でだが、1番の発生地域は甲斐の国だったが、筑後の国と安芸の国も多くの感染者を出していたはずだ。俺の知っている前世と違って、筑後には日本住血吸虫が生息していないのだろうか?

「あやめ、種子島家の支配地域に同じ症状の患者がいないか、伝書鳩を使って大至急調べさせてくれ!」

「承りました!」

 俺が安芸国に飛んで来た時に、最側近として側に付き従う種子島家忍軍のあやめが、急いで伝書鳩を飛ばすべく側を離れていった。あやめ配下の忍者は俺の側を離れず警護を続けてくれるが、俺に警護など不要なのだがな。まぁここまで支配領地が広がり地位が高くなったら、多少の非自由は仕方がないのだろう。

 俺は毎日大宰府・安芸・備前・伯耆・京などを飛び廻っているが、全ての支配国・支配郡を巡回することは不可能だ。まして全ての農村をくまなく回るなど出来るはずがなく、それなら伝書鳩を使って指令を出す方が早くて確実だ。

 俺の見落としによる失策は後日全力を持って挽回するとして、今は目の前の患者さんを助ける事だ。だが残念ながら、日本住血吸虫の特効薬であるプラジカンテルは精製していないし、していたとしても対処療法は出来ても根治療法にはならない。

 肝臓に溜まった卵を取り除く事が出来ないのだ!

 そうなると魔術を使って治すしかないのだが、基本俺の体内でしか魔術を展開することが出来ない。創意工夫をして、体内の取り込んだ物に魔法をかけ、遺伝子改良した種子を創り出す事は成功した。さらにキスをしている時に魔法を使い、相手の体内に魔術の影響を与える事までは出来た。

 問題はこのような制限下で、患者さんの肝臓に溜まった虫卵を除去することが出来るかどうかだ!
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