夢にまで見た異世界召喚に巻き込まれたけれど、虐め勇者の高校生に役立たずはいらないと追放された。

克全

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第一章

第27話:戦争の後方

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異世界召喚から65日目:佐藤克也(カーツ・サート)視点

「C級のカーツだ。
 今日ギルドマスターに試験を見てもらう予定になっている。
 その前にダンジョンで狩った獲物の査定を頼みたい」

「ではここに出して頂きますか?」

「数が多い、ざっと1万以上はあると思う。
 とてもではないが、このカウンターの上には置き切れない」

「ストレージ持ちだとでも言うつもりですか?」

「人族ならストレージ持ちでもおかしくはないだろう?」

「自分を高く見せかけるのもたいがいにしてください!
 実力を誇張するのが冒険者とは言っても、モノには程度というものがあります。
 1万もの魔獣を狩ったというのはいくら何でも言い過ぎです!」

「分かった、だったらこの下に出してやろう」

「「「「「うわぁあああああ!」」」」」

 駆けだし冒険者達の歓声が受付に鳴り響いた。
 ファイフ王国との戦争で、戦える冒険者は全員動員されてしまったのだろう。
 受付もダンジョンも、駆け出し冒険者が少数いるだけだった。

「何をやっているのですか!
 カーツ様が戻られたら直ぐに報告しろと言われていたでしょう!」

 前回受付してくれた娘が奥から走って出て来た。

「あっ、申し訳ございません!」

「申し訳ありません、カーツ様。
 冒険者ギルドでも戦える人間が動員されてしまったため、若い新人ばかりになっているのです」

「戦争中はしかたがない事だ」

 俺はそう言いながら床にぶちまけた魔獣、モンスターの山を収納した。

「率直にお聞きしますが、何頭狩られたのでしょうか?」

「正確な数は分からないが、100万頭は下らないと思う」

「ひゃ、百万頭でございますか?!」

「ダンジョンの中は、1階層か2階層に駆け出しが少しいるだけだった。
 視界に入るモンスターは、見つけ次第100発同時発動の魔術で狩った。
 最深部まで何度も往復したから、100万頭はいると思うぞ」

「普通なら嘘だと申し上げるところですが、前回実際に100発同時発動の魔術を見せて頂いておりますので、信じさせていただきます。
 その100万頭、全て買い取らせて頂いて宜しいのですか?」

「戦争中で物資が不足しているのだろう?
 軍資金も不足しているだろうから、買取りたい種族を言ってくれ」

「それは、マスターたちと話したうえで決めさせていただきたいのですが?」

「それで構わない。
 転売して資金を稼ぎたい物もあれば、安く数を確保したい兵糧もあるだろう?
 解体場に案内してくれたら、見本に全種類だしてやる」

「マスターはまだ最前線から戻っておられません。
 今日戻るという連絡は受けているのですが、なにぶん敵の有る事ですので、こちらの都合だけでは動けないのです」

「戦争がそういうものだというのは理解している。
 しばらく戻れないのなら、またダンジョンに潜るだけだ」

「ご理解いただき感謝します。
 解体場にご案内させていただきますので、ついて来て下さい」

 俺はオリビアを足にまとわりつかせながら歩いた。
 両親の姿を借りたゴーレムをだせば、完全に任せられるのだが、それではオリビアが成長しないので、少々の面倒は飲み込むしかない。

「こちらでございます」

 案内された場所は、ただ広いだけで閑散としている。
 10人にも満たない年老いた人猫族が、角兎や牙鼠といった、駆け出し冒険者でもなんとか狩れるモンスターを解体しているだけだ。

「ここの職員も、戦える者は全員最前線に行っています。
 デピュティマスター達を呼んできますのでお待ちください」

 そう言って受付嬢は出て行った。
 俺はタルボット公爵領のダンジョンで狩ったモンスターを全種類出した。

「「「「「凄い!」」」」」

 年老いた職人が感嘆の声をあげている。
 確かに、ダンジョンの最深部で狩った4トンの赤魔熊と3トンの赤魔猪などは、この世界の冒険者ではとても狩れないだろう。

「これは、まだ誰も攻略した事のない、深部のモンスターなのか?」

「ああ、そうだ。
 よそ者が勝手にダンジョンボスを斃してはいけないと思ったので、ボス部屋だと思われる所以外を何度も周回して狩った深部のモンスターだ」

「ひぃえええええ、ボスの居る階層まで潜ったのか?!」

「たぶんだぞ、ボスを斃していないから何とも言えない。
 ボスを斃したと思ったら、その奥に更に深部に続く階段があった。
 そんな事はよくある話だからな」

「あああああ、早く買取が決まらないのか!
 こんな大物が解体できる機会なんて、もう2度とないぞ!」

 年老いた解体職人達は、年齢を忘れたように興奮している。
 弱って引退していたのか、身体自体は小さく力がなさそうに見える。
 だが、その気力はまだまだ衰えていないようだ。

「お待たせしてしまったようだな。
 何を買い取るか……これは、未到達の深部で狩ったモンスターか?!」

 前回と同じメンバーがやってきた。
 これまでの状況を考えると、何らかの理由で戦えない幹部メンバーが3人残っているのだろう。

「ああ、ギルドが明らかにしている到達階層に偽りがなければ、それよりも深い場所で狩ったモンスターだ」

「ダンジョンボスがいると思われる階層にいるモンスターだそうだ」
「よそ者だから、ダンジョンボスを狩らないように遠慮してくださったんだとよ!」
「さっさと買い取りを決めてくれ!」
「そうだ、俺達にこの大物を解体させろ!」

「……残念ですが、まだ競売にかけられた事もないような大物は買い取れません。
 強制買取をして、カーツ殿を怒らせるわけにもいきませんから。
 相場か決まってモンスターだけ買わせて頂いて、大物は後日競売にかけます。
 問題は、今ギルドに残っている金で何を買うかです!」

「副長、ここは軍が確実に買い取ってくれる安価な食用モンスターを買い取れるだけ買い取って、代金を受け取ってから販売用のモンスターを買いましょう」

「いや、軍部も資金難で支払いが遅れている。
 兵糧用のモンスターを売っても直ぐに代金をくれるとは限らない。
 半年1年と遅れるに決まっておる。
 支払ってくれたとしても、他領では使えない軍票になるかもしれない。
 ここは他領でも人気のある美味しいモンスターか珍しいモンスターを買うべきだ」

「2人とも、カーツ殿が聞いているのを忘れるな!
 運部の内情もギルドの内情も秘密なのだぞ!」

「「あっ!」」

「それくらいの事、何十もの戦場を渡り歩いた俺にはお見通しだよ。
 3万人しかいない公爵領が、300万人もいるファイフ王国と正面から戦い、何とか撃退し続けているのだ。
 あらゆるところに負担がかかっている事くらい子供でも分かる」

「……そうか、分かっていてダンジョンで狩りをしてくれたのか?」

「ああ、このままでは公爵領が滅ぶのは目に見えていた。
 軍資金を稼ぐにしても、兵糧を確保するにしても、モノがなければどうにもならないから、選べるように狩ってきてやった」

「心から感謝させていただく。
 念のために聞かせてもらうが、カーツ殿に名案はあるのか?」

「軍部と公爵家の現状が分からないと何とも言えないが、腹案はある」

「後学のために聞かせてもらえないか」

「今まで誰も狩った事のないモンスターを大々的に宣伝して、戦争をしていない5つの公爵領から客を集める。
 集められた客の数だけ、街にお金が落ちで民が潤う。
 民が潤っただけ、食肉を買えるようになる」

「おおおおお、確かにその通りだ。
 問題はどれだけ宣伝できるかだが、宣伝さえできれば久しぶりに町が賑わう!」

「もう1つの方法は、ドワーフ族に食肉を売りつける。
 ここと人狼族が戦争をしているという事は、全体的に食糧が不足しているはずだ。
 偏屈で地下に籠っているドワーフ族では買い出しもできないだろう。
 人族などから高値で買っているはずだから、以前より少し高い値段でこちらから売りに行けば、必ず勝ってくれるのではないか?」

「その通りだ、ドワーフ族なら買ってくれるだろう。
 だが、以前の値段で買い取るとなると、カーツ殿が損をするぞ」

「今は戦争中だぞ。
 領主閣下や軍部から戦争に協力してくれと言われれば、格安で提供するのがベリュー連合王国人の義務だろう。
 他領にいる時ならともかく、ここにいるなら逆らえない。
 それなら、アイデアを出して恩を売り、安価なモンスターは戦争前の相場で買い取ってもらい、高価な物は競売にかけた方が得だ」

「くっくっくっくっ、1本取られたな。
 確かに、そのアイデアをもらったら、軍部も強制買取はできない」

「副長、マスターが戻られました!」
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