夢にまで見た異世界召喚に巻き込まれたけれど、虐め勇者の高校生に役立たずはいらないと追放された。

克全

文字の大きさ
37 / 37
第一章

第32話:俺の大切で苦手なモノ

しおりを挟む
異世界召喚から81日目:佐藤克也(カーツ・サート)視点

 全人猫族がタルボット公爵領に戻って来るまで10日かかった。
 その間に索敵魔術と落ち葉ゴーレムを使って調べられるだけ調べた。
 その結果はある程度満足できるものだった。

 ダンジョンで捕らえられた女勇者3人は、表向き王の性奴隷にされていた。
 だが、実際には非常用に生かされているだけで、性交はされていない。
 ゴブリンによる勇者召喚で、能力が桁外れの半神を手に入れられたからだ。

 アーサー王子達は今もダンジョンでモンスターの生け捕りをさせられている。
 二足歩行ができる人型のモンスターを命懸けで生け捕りにしている。
 まだまだ勇者召喚を繰り返すつもりのようだ。

 普通の勇者や英雄なら、慌ててジャマしなければいけない状況だった。
 半神が経験値を稼いで成長する前に退治しなければ勝ち目がない。
 新たな半神が勇者召喚される前に、勇者召喚の秘術を闇に葬らなければいけない。

 そうしなければ、ファイフ王国がこの世界を支配してしまう。
 悪質な神が、この世界の神々の頂点に立ってしまう。
 そう思って突撃していた事だろう。
 
 だが、仙人の中でも真人にまで至った俺は、急ぐ必要を感じなかった。
 半神程度なら指先1つで滅ぼすことができる。
 神々が相手でも、全力を出す前に勝てる。

「逃げていた者達全員、領地に戻ったな?
 だったらファイフ王国側の霧を晴らして、俺が直接乗り込む。
 ファイフ王国を滅ぼしたら使いを送るから、直ぐに来い」

 急ぐ必要はないが、やらなければいけない事を後回しにする気もない。
 準備ができたら粛々と実行するだけだ。

「わかりました、領民を助けていただいた御恩は忘れていません。
 私個人が動かせる兵を率いて駆けつけさせていただきます」

 敵を皆殺しにする事は簡単だが、後々の統治は面倒だ。
 面倒事を丸投げする相手としてマッケンジーを選んだ。

「タルボット公爵領は父親に任せておけ。
 マッケンジーには占領したファイフ王国を預ける。
 危険だと思ったらいつでも逃げていい。
 だが、危険がない間はキッチリと王の責任を果たせ。
 全種族平等の国を造れ。
 エルフによるハーフエルフへの迫害も許さん」

「カーツ殿が本当にカーネギー王家を滅ぼしてファイフ王国を占領されるのなら、国王代理として国を預かるくらいはしましょう。
 ですが、あくまでも代理です。
 世襲制にはしませんから、私が死ぬまでにカーツ殿が戻られるか、別の国王代理を送ってください」

「マッケンジーが寿命を迎えるまでには、他の人材も育っているだろう。
 できればオリビアを女王にすえたいが、急がして負担になってもいけない。
 誰か適当な奴を送るから、それまで代わりに統治していろ」

 ファイフ王国と戦う前にこんな相談をするのは相手をバカにし過ぎている。
 油断し過ぎだと怒られて当然の行為だ。
 だが、俺から見れば当然の行為だ。

 俺はファイフ王国に対して正々堂々と宣戦布告をした。
 その上で、タルボット公爵家と対峙していたファイフ王国軍を全滅させた。

 自国の平民や人猫族に残虐行為を行っていたので、楽に殺す気にはなれなかった。  
 俺は忙しいので、ゴーレム達に時間をかけてなぶらせた。
 その上で止めは刺さず、身動きできないようにして放置した。

 近隣には、軍に苦しめられたファイフ王国の村々がある。
 女子供のほとんどがなぶり者にされ、今も心に大きな傷を抱えている。
 仇が身動きできない状態なら、その復讐は激烈なモノになるだろう。

 前線の軍を全滅させた後は、女勇者達の処分だった。
 自分の子供を目の前で殺された事で、虐め自殺強要された子の母親の気持ちが分かればよかったのだが、女勇者にそんな人間らしい愛情などなかった。

 だから、赤居嵐羽と同じ死に方をしてもらった。
 カーネギー王家の後宮から力尽くで連れ出して牙鼠に喰わせた。

 虐め殺された子が苦しんだ時間に比べたら短すぎるが、できるだけ時間がかかるようにして牙鼠に喰い殺させた。

「国王、禁呪を使ってこの世界を支配しようとしたこと、絶対に許さん。
 悪神共々滅ぼしてやるから覚悟しろ」

 俺は王都の外から魔術を使って脅かしてやった。
 実際に戦うのはゴーレム達だ。
 俺が怒りに任せて戦ってしまったら、苦しむ間もなく殺してしまう。

「どこの愚か者だ?!
 余には本物の勇者が8人もついているのだ。
 大陸中の国々が束になってかかって来ても負けん!」

「だったら試すがいい、神を滅ぼす矢、アロー・ザト・キルズ・ゴット」

 俺が呪文を唱えるとともに、破魔破神の矢が亜空間を経由して放たれた。
 王都の外で呪文を唱えたのに、王城内にいる半神の側に現れた。

「「「「「ギャアアアアア」」」」」

「うそだ、うそだ、嘘だ!
 あれほどの能力を持っていた勇者が一瞬で斃されるなんて、信じられない!
 神よ、どうか敬虔な信者に奇跡を与えたまえ!」

 遠距離攻撃は、距離が遠いほど多くの魔力が消費されるが、2000年余に渡って蓄えた神通力が魔力に変換されているので、総量から考えれば微々たるものだ。

「邪悪なる王よ、お前が頼りにしている神も一緒に滅ぼしてやる。
 神を滅ぼす槍、アロー・ザト・キルズ・ランス」

 俺の唱えた呪文は人間の住む世界よりも高次の空間に現れた。
 人間には絶対にできない事、いや、並の神にもできない事だろう。
 上級神並みの力がある俺だからできる事だ。

「ギャアアアアア」

 この世界の神々の中でも1番力を持っていた奴が死んだのだ。
 人間の住む世界、地上界にも大きな影響がある。
 天変地異が起こってもおかしくはないのだが、俺の力で抑える。

 この時のために2000年余もかけて神通力を貯めてきたのだ。
 出し惜しみする事なく天変地異を抑え込む。
 ただし、ファイフ王国だけは別だ。

 多くの他種族を奴隷として苦しめていたのだから、それ相応の罰は必要だ。
 同じ人間、ファイフ王国人に苦しめられてきた平民であっても、他種族を苦しめていた事に違いはない。

 この世界の最高神を滅ぼしても大した感慨があるわけではない。
 これからどうするか考えていると、身勝手な最高神に抑えつけられていた、力の弱い下級神達が話しかけてきた。

「あいつを滅ぼしてくれてありがとうございます。
 カーツ様を申されましたよね?
 神々の座につかれるのですか?」

「神の地位など全く興味ない。
 残った神々で話し合って役割を分担するがいい。
 ただし、俺のジャマをしたら、即座に殺すからな」

「分かっております、一切のジャマはいたしません。
 カーツ様が治められる国や地域に手出ししません」

「そうか、だったらもう話す事はない。
 これから子育てで忙しいから、2度と話しかけるな」

 力で正義を押し付けてもいい悪人や神の相手は簡単だ。
 これまで通りにやればいいだけだ。
 だが、これからやろうとしている教育はとても難しい。
 
 やってみせて、言って聞かせて、やらせて育てるのは苦手だ。
 特に失敗するのが分かっていて見守らなければいけないのは苦しい。

 特にひ弱な人間を育てる事くらい難しいモノはない。
 全身全霊を込めてオリビアを育てなければいけない。
 神々の相手などしていられない。
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

ひろ44
2023.01.19 ひろ44

失敗前提でやらせて、失敗しても何かしら褒めないと人は育たない、と

いつも良いとこ探しの日々

子育ては大変です

2023.01.19 克全

感想ありがとうございます。

子育てほど大変な事はないでしょうね。

解除
ひろ44
2023.01.10 ひろ44

王位を譲りたい王様
何日政務をさぼってるんかね?
あまり留守が長いと隣の国が攻めてくるよ

正解は王子王女の命は諦め、自分で処断することも止めて
「不出来な息子と娘の命、お預けします。後で結果だけお知らせください」
と城に戻ることだったかも

2023.01.11 克全

感想ありがとうございます。

それが一番よかったと思います。

解除
しんきち
2023.01.10 しんきち

23話と24話の内容が同じに
なってます。

2023.01.10 克全

感想ありがとうございます。

直ぐに見直します。

解除

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。