デビュタントボールで集団婚約破棄

克全

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第一章

1話

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 凄い緊張です。
 今年社交界にデビューする若者が一堂に会しています。
 まあ、私もそうなのですが、緊張が激しいです。
 母上がいなければ、気を失っていたかもしれません。

 私を含めた令嬢達は、純白のゆったりとふくらんだイブニングドレスを着て、白のオペラ・グローブを着用して、花飾りのある小さい冠をかぶっています。
 エスコートしてくれる母上は、シックなイブニングドレスを着て私達を引き立ててくれています。
 
 デビュタントホールは、父上の率いるエヴァ侯爵派とクルー侯爵派に別れ、二分割されています。
 ですが今日の集団婚約発表でそれも解消です。
 ジェームズ国王陛下が尽力され、ようやく派閥が融和されるのです。
 これで私も、安心して愛するニコラス様に嫁ぐ事ができます。

「待て。
 待つのだ!
 今日の婚約発表は無効だ!」

 クルー侯爵家当主のメイソン卿が、いきなり舞踏会の演奏を中断させました。
 主賓として壇上におられるジェームズ国王陛下が苦々しい顔をされておられます。
 父上も苦虫を噛み潰したような顔です。
 これは、メイソン卿の謀略なのですね!

「ダファリン子爵家のソフィ嬢は、婚約者のソモンド伯爵家のイーサン殿を裏切り、平民と不義密通していたのだ。
 いや、それだけならソフィ嬢がふしだらなだけと言える。
 それだけではないのだ。
 リポン子爵家のコルトン殿も、婚約者のポウィス伯爵家のサマンサ嬢を裏切り、平民と不義密通していたのだ。
 証拠はこれだけだが、証拠のあがっていない不義密通も横行していたに違いない!
 そのようなふしだらな女を、クルー侯爵家の正室にはできん!」

 私の事を揶揄しています。
 ソフィ嬢とコルトン殿の顔が蒼白です……
 事実なのですね……
 情けない話ですが、身持ちが悪過ぎます。
 ですが、おかしい話です。

 今回の集団婚約は、ジェームズ国王陛下御声がかりの国策なのです。
 これを蔑ろにしたら、御家取り潰しの可能性さえある重大事です。
 それを色情に狂って蔑ろにするのは信じられない凶行です。
 やはり、罠、なのですね。

 だから、メイソン卿が舞踏会を中止させる暴挙に出た時に、国王陛下と父上が苦い顔をなさっていたのですね。
 という事は、国王陛下が仲裁しても、メイソン卿は受け入れないという事です。
 
 そんな!
 やっと愛するニコラス様と大手を振って御付き合いできると思っていたのに。
 前のように、密かに忍んで会わなければならなくなります。
 いえ、もう会えなくなるかもしれません。

 ニコラス様も辛そうな顔をしておられます!
 ですが諦めません。
 ニコラス様と私は運命の赤い糸で結ばれているのです!
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