婚約破棄された令嬢は自由を満喫する

克全

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2話

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「話はすでに聞いている。
 もうお前には何の価値もない。
 というよりはお荷物でしかない。
 とっととこの屋敷から出て行け」

 想定外です。
 こんなに簡単に開放してもらえるなて、全く想像していませんでした。
 婚約破棄された会場からそのまま逃げ出そうかと、真剣に考えたくらいです。
 それを思いとどまったのは、表裏に大きな力を持つハミルトン伯爵を恐れた事と、あらゆる状況になろうと王家を乗っ取れるように、文武両道の修行をさせてくれた恩義に報いるためです。

「ええと、本当にいいのですか?
 私には相当の資金と時間を使ってくれましたよね?
 それを全部ドブに捨てるのですか?
 私の知っている義父上は、そんな方ではないのですが?」

「今日まで使った金と手間は、王太子とリリーに返してもらう。
 それもタップリと利益を上乗せさせてもらってな。
 二倍や三倍なんてケチクサイことは言わんよ。
 十倍二十倍にして回収させてもらうよ」

「あのう、私の知る義父上は、その十倍二十倍の利益を、私と王太子とリリーの三人それぞれから回収される方なのですが?」

「俺の事をよくわかっているじゃないか。
 さすが俺が手塩にかけて育てただけの事はある。
 確かに俺はそういう人間だ。
 だが俺は引くべき相手を知っている。
 勝てない相手、戦っちゃいけない相手がいる事を知っている。
 生き残るためなら、勝てない相手に頭を下げることも、糞のついた靴を舐めることも、厭わないんだよ」

 誰かがハミルトン伯爵を脅したという事ですね。
 それも、絶対に勝てない強者がです。
 ですが、ウォーターフォード王国にそんな人間がいたでしょうか?
 王家であろうとベレスフォード公爵家であろうと、全く恐れていないはずです。
 その気になれば、今晩にでも国王を暗殺できる怖い人です。
 私にもそれだけの技を仕込んだ人です。

「あのう、その相手をお聞きしていいですか。
 聞いておかないと、安心してこの屋敷を出て行けません。
 正直に言いますが、私の教育にかけていただいたお金と手間を返済させてもらってから、堂々と出て行かせていただこうと思っていたのです。
 一家の人達のように、堂々と独り立ちさせていただくつもりだったのです」

「ふん!
 律義に育ったな。
 だが気にするな。
 お前を溺愛する方から脅かされて、俺の命と引き換えにお前を解放した。
 だから安心して堂々と出て行けばいい」

「ええと、その私を溺愛している方とはどなたですか?
 義父上が恐れるほどの方ですよね?
 でも、私には全然思い当たる人がいないんで、とても不安なんですよ。
 養女で弟子の私を安心させてやってくれませんか?」

「ふん!
 俺が手塩にかけて鍛えたやったのに、勘が悪すぎるぞ。
 お前は月神コンス様の聖女だろうが。
 俺様がここまで恐れるのは、神様くらいだよ!」
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