大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

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群狼

「狼の群れでございます」
「知っているのか」
「これまでも何度も何度も襲ってまいりました。若い者がいるうちは撃退しておりましたが、税が払えず若い者が奴隷に連れ去られ、食べ物がなくなり体力が続かず撃退できなくなりました。今では我がもの顔で村の中にまで入り込んできます」
「なるほど。若い人間がいなかったのは、全員奴隷にされてしまったからなのだな」
「はい。今村にいるのは老い先短い老人と、奴隷にも売れない幼子ばかりでございます。食べる物が何一つなくなり、狼がいるので森に入って狩りをすることも、野草を集める事も出来なくなり、後は死ぬのを待つばかりでございます」
 確かにこの村の状況は、もはや末期的な状態だった。
 だが目先の金に目がくらみ、村人を奴隷に売ってしまえば、来年から税を納める者がいなくなってしまう。
 領主として愚かな行いだった。
「ダイ。助けてあげたいのだが、どうするべきだと思う」
「我々の食べ物を分け与えても、領主に取り上げられてしまうだけでございます。狩りの仕方を教えても、9割を領主に取られてしまっては、とてもではありませんが生きていけません。税が7割の王領に移動するしかありません」
「そうだね、そうするしかないね。俺達で連れて行ってあげたいのだが、体力が回復するまでは、ここで見守ってあげるしかないと思うのだが、どう思う?」
「若様がそう申されるのでしたら私奴に異存はありませんが、その為には狼を何とかしなければなりません」
「練習がてら僕が狩ってくるから、ダイは村人を介抱してあげてくれ」
「それはなりません! 若様はここでお待ちください」
「おいおいおい、私だって狼くらいなら狩れるよ」
「なりません! 若様にその様な事をさせるわけにはいきません。私が狩ってまいります」
 ダイはそう言うと、ルイの返事を待たず農家を飛び出し、狼の群れに向かって一直線に向かっていった。
 村を襲ってきたのは、魔狼ではなくただの灰色狼だったが、群れを率いるリーダーは灰色狼にしては大きく賢い個体だった。
通常十頭前後であるはずの群れを、三十六頭もの巨大な群れにして率いることが出来る優秀なリーダーだった。
だが可哀想な事なのだが、統率の取れた魔族の刺客団すら一人で倒すダイに敵うはずがなく、瞬く間に狩られることになってしまった。
「ダイ、狼って食べられるの?」
「若様が食べられて美味しいモノではありませんが、飢えた村人たちにはご馳走でございます。それに毛皮はそれなりの値段で売れますので、私が処理しておきます」
「そうか、そうしてくれるかい」
 ルイとダイは村に留まり、飢えて死にかけていた老人と村人を介抱してあげた。
 その行為は村人たちに心から感謝され頼られることになってしまった。


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