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隊商

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「うぇ~ん、こわいよぉ~」
「おじさんこわぃ~」
「申し訳ございません! つい怒りに我を忘れてしまいました」
「しかたないね。役人から切りかかってきたから仕方ないけど、子供たちを怖がらしたのはいけないな。お年寄りたちも腰を抜かしてしまっているしね」
「では記憶を消してしまいましょう」
「そんなことが出来るのか?」
「はい。哀しすぎる事や辛すぎる事を忘れるのは、人の能力の一つでございます。その能力を引き出すことなど簡単な事でございます」
「私も覚えたいから教えてくれるかな」
「分かりました。私の真似をしてください」
 ダイとルイは、子供たちの心に悪い影響を残さないように、ダイの行った虐殺の記憶を消すことにした。
 妖怪と言われたミカサ公爵家の眷属でも別格の強さを誇るダイと、この世界でも稀な魔力が遺伝するベル一族のルイは、強大な魔力を持っており、簡単に新しい魔法を覚えることが出来た。
 十五人の老人と幼子に記憶を消す魔法をかけ終える頃には、ルイはダイの魔法を完全に自分のモノにしていた。そして一切の証拠を残さないように、関所の兵士と役人を骨も残さず焼き消してしまった。
 ただ売り払ってお金に換えることが出来る武器や防具に関しては、ダイの魔法袋に収納しておくことになった。記憶をきれいになくした老人と幼子を率いて、ゆっくりと街道を旅することになったが、領主の軍勢が追ってくる可能性があった
 領主軍など簡単に撃退できるルイとダイであったが、出来れば問題を大きくしたくなかったので、関所から出来るだけ遠く離れたいと思っていた。
 そこでダイの記憶を頼りに、主街道を離れて脇街道の入り、幼子に合わせた遅い歩みではあったが、四時間ほど歩いたところで戦う気配を感じてしまった。
「ルイ様。どうやら隊商が山賊に襲われているようでございます」
「助けてあげよう」
「承りました」
 ルイの指示を受けたダイは、飛ぶような速さで隊商が襲われている場所に駆けて行った。
 もちろんルイの側を離れる前に、魔族の刺客がルイを狙っていないことを十分確認していたし、ルイにも防御魔法を展開するように言っていた。
 ダイが駆けつけた場所には、二頭立ての幌馬車が五台止まっており、隊商のメンバーと護衛と思われる人間併せて十一人が必死で防戦していた。
 幌馬車の周りには、すでに十四人の人間が倒れており、中にはすでに死んでいる者もいるようだった。
 山賊は十分に準備をしていたようで、幌馬車隊の前と後ろには進めないように馬止めがいくつも置かれていた。
 しかも襲っている山賊の人数は、百人前後もいる上に、正規の訓練を受けた兵士のような動きをしていた。
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