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支配

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 ルイは一人も殺さずに済んだ。
 優しさと優柔不断の結果ではあったが、怒りに我を忘れそうになりながらも、殺人を犯す決断を付けることが出来なかった。
 その一方で、ルイに手を汚させないように、ダイが多くの悪質冒険者を殺すことになった。
 もともと暗殺者をしていた頃に多くの人間を殺していたし、ベルト王国に仕える忍者になってからも多くの人間を殺してきた。
 それは護衛になってからも同じで、ベル王家の方々を護るために、多くの人間を殺している。
「さて役人の方にお聞きしたいのだが、これは正当な防衛行為と認めていただけるのかな? 認めていただけないのなら、こちらも覚悟を決めねばならない」
 ダイは皆殺しを実施した後で、暗に認めてくれないのなら、役人やギルド職員も皆殺しにするぞと言うおどしをかけながら聞いた。
 それに対して役人もギルド職員も歯の根も合わないほど震えており、とても返事のできる状態ではなかったので、ダイが誓約書を書いて役人の震える手を押し付ける形で免罪のサインをさせた。
 その凶行を見た老人や孤児が、恐怖で狩りに行けないかと思えたのだが、 生まれてからずっと凄惨な目に合い続けてきた老人や孤児は、それほどの恐怖を感じていなかった。
 それよりも飢えを満たして生きていくことで必死だったのだろう、狩りに行くと言うルイとダイについて魔境に入っていった。
 前日と同じように、魔境に入って直ぐに手当たり次第に魔獣を狩り、魔境の浅い場所でバーベキューを始め、匂いで多くの魔獣を誘い出した。 
 結局この日も、老人と孤児たちにお腹一杯食事を与え、その後で狩った魔獣を冒険者ギルドに運ばせ、交代の老人と孤児たちがやってくると言う繰り返しであった。
 だがバカな冒険者は翌日にも表れ、親分がいなくなったヤクザ冒険者一家の支配者になろうと、腕自慢のバカ冒険者がルイとダイに戦いを挑んできた。
 自分を強く見せようと、冒険者ギルド前に集まっていた老人と孤児たちに暴力を振るったバカ冒険者は、問答無用で殺された。
 老人と孤児たちに暴力を振るわなかったバカ冒険者は、四肢と顎を砕かれて放置され、満足に食事もとれない状態で、治癒魔法を受ける事も出来ずに、痛みで地面の上をのたうち回ることになった。
 最終的にはルイとダイが冒険者の上に君臨することになるのだが、それにはまだ少し時間が掛かるというか、ルイもダイも、冒険者を支配しようとは思っていなかった。
 だからまだこの日は、ただ老人と孤児たちに暴力を振るう冒険者を殺し、戦いを挑んでくるバカな冒険者を叩きのめしていただけだった。
 この日は結局、同じ老人と孤児たちが二度も魔境に入ることが出来た。
 つまり一日に二度も食事にありつき、同じく二度も小銭を稼ぐことが出来たのだ。
 魔境の冒険者ギルドを陰で支配していたヤクザ冒険者一家が壊滅し、老人や孤児たちが安心して暮らせるところになったという噂は、またたく間に魔境の町とその近辺の村々に広まり、多くの人間を集めることになった。


バカな冒険者1
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