大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

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混沌2

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「ケ・ケ・ケ・ケ・ケ」
 笑っているのか鳴いているのか分からないが、毛の長い犬のような生き物が上を向いて音を出している。
 いや、あのようにあらゆるものが混じり合い溶け合った場所では、どこを基準に上下左右を決めればいいかわからないが、ルイとダイが見ている場所からは上に見えている。
 犬のようなと表現したが、脚は熊に似ているが爪がなく、目も耳もあるのだが、エルフたちがどれだけ騒いでも、反応しないで上を見て笑っているように見えるので、見えても聞こえてもいないようだ。
 ルイとダイは、その存在に気付いてからずっと注意してみているようだが、熊のような脚はあるのだがその場を動かず、見始めてからずっと自分の尻尾を咥えてグルグル回っているだけだ。
「あれが元凶だ! みなで殺してしまえ!」
 ルイとダイを見下していた若いエルフが声をかけると、傲慢そうなエルフたちがその生き物に攻撃魔法を叩きつけようとした。
 エルフらしく風の属性魔法が雨あられと放たれたが、その生き物が支配していると思われる一帯に入ると、無数にあった魔法がその場に混じり溶け合ってしまった。
「ウギャ~!」
 恐らくその場で混じり溶け合っていたエルフたちに攻撃魔法が混じり溶け合ったことで、エルフたちの痛覚を恐ろしく刺激してしまったのだろう。
 この世のモノとは思えない悲痛な悲鳴を上げて、時々現れてはなくなるエルフたちの顔がゆがみ、魔法を放ったエルフたちに苦痛と増悪と怨嗟の表情を向けていた。
 この世のモノとは思えない顔付で睨まれたエルフたちは、自分たちが同族のエルフを苦しめ恨まれてしまったことに気付き、茫然自失となり、その場に崩れ落ちてしまった。
「バカ者! 原因を突き止める前に攻撃をしかけるとは、愚か者が!」
若いエルフは、族長の叱責を受けて、反省するどころか恨みがましい目を向けるのだった。
「だったら族長が何とかしてください。何もできないくせに、助けようとした我々を叱責するなど無責任です」
「無責任は貴様の家族だ! あれほどやめろと反対したのに実験を強行し、多くの同族を巻き込んだ上に、他人に責任をなすりつけるとは、お前は人間と同じだ!」
「なんだと?! 誇り高い我が家族を人間呼ばわりするとは、族長であろうと許さんぞ!」
「許さんのはこちらだ! 貴様の祖父や父親のせいでこの惨劇は巻き起こされたのだ。儂に文句を言う前に元通りにして見せろ」
「だからやっている!」
「貴様の遣っているのは、巻き込まれた者たちを苦しめているだけだ! この人間エルフが!」
「なんだと糞爺!」
 最初は若いエルフに同調するエルフ族も多かったが、この惨状の原因が若いエルフの祖父と父親であり、若いエルフの傲慢さも際立っていたので、段々同調する者が少なくなってきた。
「何とかしてあげましょうか?」
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