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家宰
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「ルイトポルト様、宜しいですか」
「ああ、構わないよ、家宰殿」
「食糧販売の件なのですが、隣国に輸出してもよろしいでしょうか」
「僕に聞くよりも、女王であるガビに聞くべきじゃないのかい」
「ガブリエラ女王陛下に御尋ねしたのですが、この件に関しては、ルイ様が差配しておられるとの御返事でしたので、御指示を御願いしたいのです」
「そうか、だったら出来るだけ多く、出来るだけ大量に、効率的に売って欲しい。ただし、これはガビにも言ったのだけれど、我々が食糧を売却する事で、隣国の猟師や冒険者、農民達が困窮するような事はしないでくれ」
「ルイ様の御話を総合すると、食糧を暴落させて、民が困るような事はするなという事でございますね」
「そうだ」
「最低販売価格を設定した上で、最大量の食糧を売却しろという事ですね」
「そうだ」
「総売上額は、あまり考慮しなくていいのですね」
「そうだ」
「等級は何も考えなくて宜しいのですか」
「隣国の戦力が向上しないように、武器に転用できる素材は気を付けて欲しい」
「白銀級以上の素材は、販売しないように致します」
「美食の金満家が、食材部分だけ欲しがるようなら、玉鋼級までなら売却してくれていい」
「それは、金額を稼ぐのに助かります」
「国家予算が乏しいのかい」
「暴君や昏君の悪政で、国家財政が破綻しております。特に民の生活が困窮しておりますので、善政を敷こうとすれば、歳入がほとんどございません」
「王族や貴族が不当に蓄えた財を、強制的に押収したのだよね」
「はい。莫大な財ですが、それを取り崩すだけでは、何時かは尽きてしまいます」
「悪徳商人の財も、押収しているよね」
「はい、それも莫大な金額でございます」
「五年や十年で尽きる額ではないよね」
「はい。ですが何もしないでいれば、十年後には、手を打つ資金もなくなってしまいます」
「確かにその通りだね」
「ルイ様と女王陛下が、大人しく国元にいて下さる間に、国家の財政を再建しなければいけません」
「分かった。保存のきく魔獣や魔蟲の素材は、家宰殿に預けておこう」
「有難き幸せでございます」
「定期的に戻って来て、軍隊や国内配給用の食糧を狩るよ」
「そうして頂ければ、国家運営が楽になります」
「ガビだけでも、それくらいの事は出来るよね」
「女王陛下が、大人しく玉座に治まって下さればよいのですが、ルイトポルト様が旅に出られたら、必ず付いていこうとなされます」
「それは、余が毎日王宮や屋敷の戻る事で話がついたのだけど」
「それは御伺いしておりますが、臣下の立場では、最悪の事態も想定しなければなりません」
「夫婦で放蕩の旅に出てしまう可能性だね」
「左様でございます」
「分かったよ。ガビを連れ出すような事はしないよ。それと、ガビが心配して、王宮を抜け出してしまうような、危険な真似もしないよ」
「有難き幸せでございます」
「ああ、構わないよ、家宰殿」
「食糧販売の件なのですが、隣国に輸出してもよろしいでしょうか」
「僕に聞くよりも、女王であるガビに聞くべきじゃないのかい」
「ガブリエラ女王陛下に御尋ねしたのですが、この件に関しては、ルイ様が差配しておられるとの御返事でしたので、御指示を御願いしたいのです」
「そうか、だったら出来るだけ多く、出来るだけ大量に、効率的に売って欲しい。ただし、これはガビにも言ったのだけれど、我々が食糧を売却する事で、隣国の猟師や冒険者、農民達が困窮するような事はしないでくれ」
「ルイ様の御話を総合すると、食糧を暴落させて、民が困るような事はするなという事でございますね」
「そうだ」
「最低販売価格を設定した上で、最大量の食糧を売却しろという事ですね」
「そうだ」
「総売上額は、あまり考慮しなくていいのですね」
「そうだ」
「等級は何も考えなくて宜しいのですか」
「隣国の戦力が向上しないように、武器に転用できる素材は気を付けて欲しい」
「白銀級以上の素材は、販売しないように致します」
「美食の金満家が、食材部分だけ欲しがるようなら、玉鋼級までなら売却してくれていい」
「それは、金額を稼ぐのに助かります」
「国家予算が乏しいのかい」
「暴君や昏君の悪政で、国家財政が破綻しております。特に民の生活が困窮しておりますので、善政を敷こうとすれば、歳入がほとんどございません」
「王族や貴族が不当に蓄えた財を、強制的に押収したのだよね」
「はい。莫大な財ですが、それを取り崩すだけでは、何時かは尽きてしまいます」
「悪徳商人の財も、押収しているよね」
「はい、それも莫大な金額でございます」
「五年や十年で尽きる額ではないよね」
「はい。ですが何もしないでいれば、十年後には、手を打つ資金もなくなってしまいます」
「確かにその通りだね」
「ルイ様と女王陛下が、大人しく国元にいて下さる間に、国家の財政を再建しなければいけません」
「分かった。保存のきく魔獣や魔蟲の素材は、家宰殿に預けておこう」
「有難き幸せでございます」
「定期的に戻って来て、軍隊や国内配給用の食糧を狩るよ」
「そうして頂ければ、国家運営が楽になります」
「ガビだけでも、それくらいの事は出来るよね」
「女王陛下が、大人しく玉座に治まって下さればよいのですが、ルイトポルト様が旅に出られたら、必ず付いていこうとなされます」
「それは、余が毎日王宮や屋敷の戻る事で話がついたのだけど」
「それは御伺いしておりますが、臣下の立場では、最悪の事態も想定しなければなりません」
「夫婦で放蕩の旅に出てしまう可能性だね」
「左様でございます」
「分かったよ。ガビを連れ出すような事はしないよ。それと、ガビが心配して、王宮を抜け出してしまうような、危険な真似もしないよ」
「有難き幸せでございます」
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