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消耗戦

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 意を決して、迷いを断ち斬り、龍級の魔法を連携連続して放った。
 龍級とは言っても、余とガビが連携しているから、最低限龍級と名乗れるような攻撃ではない。
 次の階級を名乗るまでには、十倍もの間がある。
 最低限の龍級から比べれば、三倍の破壊力がある。
 そんな攻撃を、連続して八発も、両手両足を狙って放たれたのだ。
 ダイであろうと、柳に風とは受け流せない。
 狂気に囚われ、龍に変化しているとは言え、戦闘本能は失われていない。
 八発の龍級攻撃魔法を、簡単に防御魔法で防ぎ切ってしまった。
 ダイの事だから、手足を斬り飛ばす事など出来ないとは思っていた。
 だけど、少なくとも一発は、身体に当てる事が出来ると思っていた。
 あてた後で、身体防御に防がれると思っていた。
 いや、正直に言おう。
 四発は身体に当てることが出来ると思っていた。
「ルイ様。次は身体の中心に向かって、連続十二発放ちますが、大丈夫ですか」
「任せてくれ」
「では、呼吸を合わせて下さい」
「分かった」
 ガビの指示通り、十二発の攻撃魔法を放った。
 さっきは不意をつけたが、これからは避けられる可能性もある。
 一番避け難い、身体の中心を狙う。
 ガビは余の魔力量を心配してくれていたが、これくらいの攻撃は余裕でこなせる。
 むしろガビの魔力量に余が驚いている。
 まあ今回は、一発放つごとに魔界から魔力を吸収しているので、全く魔力が減っていない。
 外界から魔力を吸収できる能力や技を持っている者でも、一度に一瞬で取り込める量には限りがあるのが普通だ。
 龍級の魔法を創り出す為の魔力量を考えれば、いくら魔素の溢れた魔界とはいえ、周囲の魔素が一時的に枯渇するのが当然だ。
 だが今回は、ダイを隔離している空間には、余とガビの魔法とダイの魔法が激突した際に、莫大な量の魔力が魔素に分解されているから、そこから幾らでも吸収できる。
 いや、ダイよりも早く吸収しなければ、ダイを魔力切れに追い込めない。
 千日手のように、余とガビが連携して攻撃し、ダイがそれを防ぐと言う事が続き。
 その合間に、余とガビとダイが魔素を吸収する。
 当然の事だが、狂気に侵され龍化していても、ダイが魔素の吸収を疎かにしたりはしない。
 一対一なら、完全に千日手となっていただろう。
 だが余には、ガビが付いていてくれる。
 二対一なら、ダイを圧倒する事が出来る。
「ウガァルルゥ」
 ダイもこのままでは負けると判断したのだろう。
 天に向かって大きく吠えると、余とガビの攻撃に対応しながら、恐ろしい魔力を身体の中で練り始めた。
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