大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

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「村長はいるかい」
「魔導師閣下。何か御用でございましょうか」
「私がこの辺りを開拓しているのは知っているね」
「はい。使い魔様からも話を伺いましたし、国からも御代官様の使いが参られて、説明していただきました」
「では、今日から川を創るから、その為に田畑を交換してもらうことになる」
「はい。それも承っております。ただ確認させていただきたいのですが、本当に今までの田畑の倍の収穫が得られる土地を頂けるのですか」
「間違いない。我の使い魔が耕している田畑を与える」
「本当でございますか。一日で四度も収穫出来る田畑を頂けるのですか」
「あれは、魔法をふんだんに使ったから出来る事で、普通は田圃で一年に二度の収穫だ」
「ですが、二度でも素晴らしい事でございます」
「糞尿で肥料を作らねばならぬぞ」
「承っております。町から糞尿を買わねばならないのですね」
「その方らが自力で回収するのなら、最初は喜んでタダでくれるだろうが、近隣の村々で糞尿の取り合いになるだろうから、直ぐに買わなければいけなくなる」
「さようでございますか」
「まあ、家畜を飼うのなら、家畜の糞尿を肥料にする事も出来る。それはその方どもの才覚次第だ」
「承りました」
「それと、多くの民が余の開拓した田畑に移り住んでくる」
「承っております」
「寛大な心で受け入れ、諍いごとなど起こさないように」
「承りました」
「人間の代官だけでなく、余の使い魔がその方どもの行いを見ている」
「そんな。監視すると申されるのですか」
「余の行った事で、人々が不幸になるのは我慢ならん。特に人間同士が諍いを起こす事は許さん」
「決して諍いなど起こしません。ですから、監視するのは止めて頂けませんか」
「監視されるのが嫌と言うのは、秘密にしなければならない悪徳を行っているからではないのか」
「決してそのような事はございません」
「ならば余の使い魔が見守って何が悪い。盗賊が現れようが、魔物が現れようが、余の使い魔が見守っていれば、何の心配もない」
「それはそうなのでございますが」
「それとも村長は、国に隠れて悪事を企んでおるのか」
「とんでもございません。国に隠れて悪事など企んでおりません」
「ならば気にする事などない。人ではなく、心のない使い魔が見守っているだけだ」
「それは、分かっているのですが。その、魔導師閣下に見られていると思うと、怖いのでございます。何時魔導師閣下の逆鱗に触れてしまうかと、不安になってしまうのでございます」
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