大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

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陶芸村2

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「巡検使様。私こそが、十三代目に相応しいのです」
「いえ、巡検使様。私の焼き物の方が、女王陛下に相応しいです」
「兄たちに才能はありません。私こそが相応しいのです」
「うるさい。そんなに大声を出さないでも聞こえている。
 陶芸村に入ると、村長の家の家督争いに巻き込まれてしまった。
 普通の村なら、長幼の序に従って、兄に継がせればすむ。
 いや、すむと言うよりは、そうしないと色々家督争いが激しくなる。
 だが陶芸村の場合は、優秀な焼き物を創り出せないと話にならない。
 本来ならば、現当主が厳正に才能を見極めて、次代の当主を決めるべきなのだ。
 ところが、魔族と馬鹿王女によって引き起こされた戦争で、当主が殺されてしまったのだ。
 当主だけでなく、多くの優秀な陶工が非業の最期を迎えていた。
 生き残った者達の中から、次代の当主を決めなければならない。
 ここに莫大な利権が絡んでしまった。
 戦争で高価な焼き物が失われてしまっていた。
 多くの愛好家が、失った焼き物を欲しているのだ。
 先にも書いたが、多くの優秀な陶工が殺されてしまっている。
 焼き物の値段は鰻登りだ。
 商人が財力にモノを言わせて買い占めている。
 焼けば焼くほど儲かるのだ。
 殺された当主の息子達が、跡目を争うのも人の業と言えるかもしれない。
 だが問題は、生き残った三人の息子達は、平凡な才能だと言う事だ。
「もう一度、一世一代の皿を焼いてもらおう。この程度の焼き物では、女王様に御渡しする事など出来ない」
「そんな」
「それでは、王室御用達の看板を下ろせと言う事ですか」
「大損してしまいます」
「店が潰れてしまいます」
 大儲けしようと、三人の息子についていた商人達が、真っ青になっている。
 まあ当然だろう。
 先行投資で買い占め、どんどん焼かせていた陶磁器が、全て二束三文の廉価品になってしまうのだから。
 先代までは王家に献上していたのに、当代になって献上出来なくなったとなれば、名声は地に落ち価格が大暴落するのは必至だ。
 だが余としても、このように不出来な焼き物を、王家のパーティーで使う訳にはいかない。
 個人的に旅先で使う皿は、割れない金属製や木製品だ。
 陶磁器を使うのは、公式な行事に限られる。
 自国や他国の王侯貴族を招いた席で、これほど不出来な陶磁器を使用したら、ガビが恥をかいてしまう。
「下郎共の金儲けの為に、女王陛下にこのような不出来な陶磁器を使わせろと言うのか。女王陛下が恥をかく事になったら、下郎共の一族一門皆殺しになると心得よ」
 余の怒声を受けて、商人どもはもちろん、三人の次期当主候補も恐怖で震えあがっている。
 これで少しでもましなモノが出来上がればいいが、そうでなければ、陶磁器はベルト王国から取り寄せよう。
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