大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

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陶芸村5

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「御前はどうするのだ」
「このまま審査を御続け頂ければ幸いです」
「自分一人で続けると言うのだな」
「願いを聞き届けて頂けるのなら、村中の陶工の腕を見て頂けますでしょうか」
「それで、御前が落ちる事になってもか」
「この村の名折れになるくらいなら、後継者になれない方がマシです」
 当代の妾腹だと言う娘は、なかなか肝の座った人間のようだ。
 人間としての器がでかいのか、腕に自信があるのかだろう。
 己の腕を理解していない愚か者ではないことを願う。
 まあ、突出した実力を持った陶工がいなくても、量産品を焼く陶芸村として生活する事は可能だ。
「ルイ様。正々堂々とした勝負は大好きです」
「分かった。許可しよう」
「ありがとうございます」
 ガビが陶芸の勝負を見たいと言うのなら、余に異存などない。
 元々余に陶芸眼など一ミリもない。
 余にあるのは食欲だけだ。
 後は少々の放浪癖位のモノだ。
「さて、急な要求にもかかわらず、皆よく集まってくれた。これよりそれぞれが焼き上げた作品をみさせてもらおう」
「「「「「宜しく御願い致します」」」」」
 村人全員参加の焼き物大会など、一日二日で出来るモノではない。
 材料を集め、粘土をこね、乾かして、焼き上げる。
 次代の長を決める大会だとなれば、一世一代の作品を作ろうとして当然だ。
 結局一ヶ月の準備期間が必要だった。
 その期間中は別の村々を巡検したが、そこでも色々とあったと言っておこう。
「これは赤が全く駄目ですね」
「そうだね」
「こちらは青が出ていません」
「そうだね」
「こちらは線が太すぎます」
「そうだね」
 最初から分かっていたことだが、余はガビの完全なイエスマンとなっていた。
 単純に好きか嫌いかだけなら言えるが、余の好き嫌いで陶芸の歴史をゆがめる事など出来ない。
 余の好悪で決まってしまった焼き物が他国に輸出することになんてなったら、ミカサ連合王国が大恥をかいてしまう。
 よって焼き物の良し悪しは、ガビとミカサ一族の好事家に鑑定を任せることになった。
 任せることになったとはいっても、余が逃げ出す事など許されない。
 常にガビの側にいなければ、ミカサ一族が不安に思ってしまう。
 余もそうだが、ミカサ一族の誰もが、龍の王族がパートナーの浮気で妊娠中に不機嫌になる事を望んでいない。マタニティブルーで不機嫌になる事も望んでいない。
 余に期待されているのは、ガビを機嫌よく過ごさせることだ。
「ルイ様はこの焼き物をどう思われますか」
「う~ん。色は好きだけど、芸術性は分からないな。ガビと食事をする時に、ガビが落ち着いて食事が出来るモノがいいかな」
「そう言って下さるのは嬉しいですが、ルイ様の好みの皿も欲しいですわ」
「じゃあこの皿を買おうかな」
 やれやれ、奥様の機嫌を取るのは難しい。
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