大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

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陶芸村6

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「これからもよき作品を作れるように励むがよい」
「有り難うございました。これからも精進させていただきます」
 結局、当代の妾腹の娘が一番となった。
 二番には、下劣な商人に再起不能に追い込まれた職人が選ばれた。
 余が怪我を完治させたことで、参加が可能となった。
 三番目には、若手が選ばれた。
 妾腹娘の恋人だったが、何の忖度も加えられていないので、それだけの実力があるのだろう。
 ガビとミカサ一族の好事家が、芸術の事で嘘をつく事などない。
「ガビ、この場で買い取り価格を決めた方がいいのではないかな」
「そうですわね」
 余達の足代として、今回出品された作品を、全て献上させる手もある。
 だがそれでは、この村はもちろん、ミカサ連合王国に何の利益もない。
 だがここで全ての作品に値段をつければ、それが買取の最低基準となるだろう。
 国内の流通はもちろん、輸出の際もこの値段が考慮される。
 それは回り回って、ミカサ連合王国の税収につながるのだ。
 だからと言って、無暗に高額な値段をつけてしまうと、この大会の信憑性が薄れてしまう。
 当代や先代などの、過去の名工の作品と比較して、真っ当な値段を付けなければならない。
「そう言う事はガビ達に任せて、懇親会の準備をしたいのだが」
「逃げようとしても駄目ですわ。準備は魔晶石使い魔達が済ませてくれています」
「だがね、余がいても何の役にも立たないよ」
「ルイ様は私の横にいて下さればいいのです」
「ガビがそう言うのなら、そうさせてもらうよ」
 サッサと逃げようとしたのだが、ガビは許してくれなかった。
 私の腕に身を預けながら、一族の好事家と愉しそうに話している。
 余も内心の苦痛を隠し、話を聞くことに徹した。
 ほとんどの作品の値段が決まった頃には、余は疲労困憊していた。
 こんな事よりは、龍化したダイと戦う方が楽だ。
「では懇親会に行きましょうか」
「ようやくだね」
「もう。少しは芸術にも興味を持って下さい」
「性にあわないから、それだけは勘弁して欲しいね」
「仕方ありませんわね」
「その代わり、料理の好き嫌いだけははっきり言わせてもらうよ」
「でも、ルイ様は好き嫌いが激しいので、評論には向かれませんわ」
「評論などしようとは思わないよ。ガビとの食卓を豊かにしたいだけだよ」
「だとしたら、味付けの違う料理をたくさん出してもらう必要がありますね」
「当然だよ。余に合わせて、ガビに我慢させる気などないからね」
「分かっておりますわ」
 余もガビも、食べる事が大好きだ。
 互いの事は大好きだが、その為に食事で我慢したり妥協したりする気はない。
 だから品数は多くなってしまうけれど、好きな材料を好きな味付けにした料理を食べる。
 必然的に品数が多くなるし、残り物もたくさん出てしまう。
 だがそれが無駄になることはない。
 王都ではその残り物が、女王と王配と同じ料理が食べられる弁当として、驚くくらいの高値で販売されるのだ。
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