運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全

文字の大きさ
37 / 58
第1章

第37話:引き籠り

しおりを挟む
「ケーン、あのオリーブの木を実らせられるか?」

「できますよ、どれくらい実らせます?」

「実らせられるだけ頼む、前の街で油が売れ過ぎた」

 ジョセフ代表に頼まれたので、移動の途中に生えていたオリーブの木に魔術をかけて、枝が折れそうなくらいたくさん実らせた。

「うわ、やっぱりケーンは凄いな、物凄く大粒の実だぞ」
「こんな大きな実は見た事がないぞ」
「数も多いぞ、これからしばらくオリーブを仕入れなくても大丈夫だ」
「美味い、苦みが少ないぞ、生で食べてもあの嫌な苦みがほとんどないぞ」
「本当だ、美味い、これなら生でも食べられるぞ!」

「すまんな、ケーン、代金はちゃんと払うから、ウィロウから受け取ってくれ」

「ありがとうございます、代表。
 あのオリーブ、もう1度実らせますか?

「いいのか、魔力は大丈夫なのか?」

「これくらいなら、100回でも200回でも大丈夫です」

「とんでもない神与のスキルだな、羨ましくて涙が出るよ」

「ありがとうございます、ですがその分狙われるのですよね?」

「そうだな、良い事ばかりではないな、もう1度実らせてくれればいい。
 ケーンに頼り過ぎると、一族が堕落してしまうからな」

 そう言い終わると、ジョセフ代表はオリーブを集める行商人たちの所に行った。
 まだオリーブの実を集めている途中だったので、待つよりは新しいオリーブの木を成長させた方が早いので、少し離れた所で成長させて実らせた。

 待つ時間があるのならウィロウの側にいたかった。
 ウィロウを守るのが僕の役目だから、常に目に見える所にはいるけれど、少しでも近くにいたかった。

 流石にトイレの時は少し離れるけど、叫べば声の届く所にいる。
 僕だけではなく、最初に村に来た時にいた指導役もいる。
 彼と親しそうにするウィロウを見るとイライラしてしまう。

 僕と指導役以外にもウィロウを守るモノはいる。
 常にウィロウと一緒にいる牛が最後の護りらしい。
 大きくて鋭い角は、ウィロウを狙いモノを刺し貫いて放り投げるそうだ。

「うっげえええええ」

 まだ血や死を思うと吐いてしまう。
 できるだけ早く吐かないようにならないと、ウィロウを守れない。
 少なくとも気を失わないようにならないといけない!

 牛はその大きな体でウィロウの盾にもなるそうだ。
 だったら僕も牛に負けないような大きな盾になる。
 何かあれば直ぐに蔦壁を造る、僕の神与スキルがバレてもかまわない!

「何か来るぞ、魔獣だ、大きな魔獣が来るぞ!」

 行商隊の誰かが大声で叫んでいる。

「ウィロウ、声のする反対側に行こう」

 僕はウィロウに逃げるように言った。

「まだよ、誰かが魔獣を操っているかもしれない。
 反対側に逃げたら待ち伏せがいるかもしれないから、今は動けないわ」

 待ち伏せ、お父さんたちが狩りをする時にやっていた。
 
「分かった、僕から離れないで!」

 ウィロウが僕にぴったりと身体をつけてきた。
 心臓がドキドキして苦しい、このままずっとこうしていられたら良いのに!

「フェロウシャス・ボアだ、近づいてくるのはフェロウシャス・ボア!」

「ケーン行くわよ、フェロウシャス・ボアを捕らえるの!」

 ウィロウが満面の笑みを浮かべて走り出した。
 フェロウシャス・ボアはウィロウの大好物で、食事に出たら機嫌が良くなるほどだから、僕なら簡単に狩れると言ってしまった。

 以前のように、木属性魔術の1つ風を使う「サファケイト!」で窒息させられたら簡単なのだけれど……

「うっげえええええ」

 今の僕は殺す事を考えただけで吐いてしまう。
 だけど、木属性魔術でフェロウシャス・ボアを動けなくする事はできる。
 動けなくさえできれば、後は行商隊の人たちが何とかしてくれる。

「どいて、どいて、どいて、フェロウシャス・ボアはケーンが捕らえてくれるわ」

「本当なのか、魔獣でも殺せないのだろう?」

 フェロウシャス・ボアに対処しようと、ジョセフ代表が1番危険な場所にいた。
 こういう所が行商人たちに信頼されるのだな。
 僕も同じようにできたらウィロウに信頼してもらえるのだが、今の僕では……

「殺せないですが、蔦壁で捕らえる事はできます。
 ただ、その後は別の蔦壁の中にいますから、ウィロウを守れません」

「……そうか、隊商の中にいる間は大丈夫だからかまわない。
 もう来るぞ、本当に捕らえられるのだな?」

「任せてください、プロテクト・ウィズ・ア・ウォール・オブ・アイビー」

 フェロウシャス・ボアはとても大きいから、近づいて来たら森の中にいても分かるし、目の前に現れたら嫌でも分かる。

 それに、フェロウシャス・ボアは、1度全力で走り出したら止まれないし曲がれないので、前もって蔦壁を成長させておくことができる。
 それで近づいて来たフェロウシャス・ボアを包み込むのだ!

 脚1本にわずかな蔦を絡ませても引き千切られるが、体全体を覆ってしまえば、突進したくても助走する距離がない。

 蔦壁で包み込んで中に取り込んでしまえば、もう身動きができなくなる。
 ウィロウのような大切な人を入れる蔦壁なら快適な広さにするが、ウィロウを傷つけような奴は、蔦壁を直接身体に巻き付けてしまう。

「もう身動きできないですから、後は任せます。
 僕は何も見えない聞こえない蔦壁の中で休みますから、何かあったら叩いて知らせてください」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

愛を知りたがる王子様

広原琉璃
児童書・童話
この学園には、『王子様制度』が存在する。 主席入学で顔も良い、そんな人が王子様になるのである! ……という、ぶっとんだ制度がある私立の女子中学校へ進学した少女、大沢葵。 なんと、今年度の『王子様』に任命されてしまった。 オレ様生徒会長な、流華。 クールな放送部部長、ミナツ。 教師で王子、まお。 個性豊かな先輩王子様と共に、葵の王子様生活が、今始まった……!? 「いや、あの、私は『愛ある物語』が知りたいだけなんですけどー!」 第3回きずな児童書大賞で奨励賞を頂きました、ありがとうございます! 面白いと思ったらお気に入りや感想など、よろしくお願いいたします。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

わたしの婚約者は学園の王子さま!

久里いちご
児童書・童話
平凡な女子中学生、野崎莉子にはみんなに隠している秘密がある。実は、学園中の女子が憧れる王子、漣奏多の婚約者なのだ!こんなことを奏多の親衛隊に知られたら、平和な学校生活は望めない!周りを気にしてこの関係をひた隠しにする莉子VSそんな彼女の態度に不満そうな奏多によるドキドキ学園ラブコメ。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

アリアさんの幽閉教室

柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。 「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」 招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。 招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。 『恋の以心伝心ゲーム』 私たちならこんなの楽勝! 夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。 アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。 心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……?? 『呪いの人形』 この人形、何度捨てても戻ってくる 体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。 人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。 陽菜にずっと付き纏う理由とは――。 『恐怖の鬼ごっこ』 アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。 突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。 仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――? 『招かれざる人』 新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。 アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。 強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。 しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。 ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。 最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

処理中です...