土魔法で富国強兵?

克全

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始まりの章

資金稼ぎ

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「パパ愉しかったね」
「僕も愉しかった」
「そっか。それは好かった」
「また連れてきて」
「僕も行きたい」
「うぅぅぅん。コスプレ大会は、多くても一ヶ月に一回だからな」
「「えぇぇぇ」」

 コスプレ会場からの帰り道、自動車の中で桃と緑は大はしゃぎだ。
 しこたま買った、屋台の食べ物の香りで臭いくらいだ。
 桃も緑も、また来たいようだが、開催自体が少ないのだ。
 それに、正直御金がない。
 実家を売った御金は残っているが、あれに手を付けるわけにはいかない。
 桃と緑に理解してもらう為に、正直に話そう。

「桃。緑。正直に言うと、もう御金がないんだよ」
「だったら、やっぱりカラーダイヤモンドを売ろうよ」
「駄目だよぉ。それをしたら警察に捕まるってパパが言ってたじゃないか」

 最近桃と緑は、テレビを理解出来るようになった。
 だがその分、色々と提案してくる。
 警察に捕まると、もう会えなくなると分かっているようで、聞き分けがよくなった。

「だったら、小判をまた作ろう」
「それも、パパが悪い奴らに捕まって、危険な目にあったと言ったじゃないか」
「でも、パパも慎重にやればよかったと言ってたぞ」
「パパ。慎重にやれば大丈夫なの」

 やれやれ。
 頭ごなしに否定したいところだけど、桃と緑に嘘はつけない。
 騙されるのを覚悟で、ネット経由で会わないようにして売れば、危険はないだろう。
 それと、よく名の知られた買取業者が相手なら、この前のようなことはないだろう。

「そうだね。ネットで取引したり、有名な御店なら安全だと思うよ」
「だったら、また小判を創り出す」
「でも、もう材料が少ないんじゃない」
「頑張ったら、遠くや深くから集められる」
「疲れるよぉぉぉ」

 どうやら、魔法で金を集めるのも大変なようだ。
 そもそも、近所の金を集めていたら大問題だ。
 隣の家まで遠くてよかった。
 だが、近くにある廃鉱山は銀が主体だった。
 どうせ創り出すのなら、銀貨や銅貨の方が楽だろう。

「桃。緑。金やダイヤモンドでなくても創り出せるのかい」
「大丈夫」
「近くに材料があれば、楽に創れます」
「テレビやネットで観ただけで創れるのか。それとも、現物を観ないといけないのか」
「御出掛けして、本物を見たい」
「本当に見ないと難しいです」

 桃は御出掛けしたい一心のようだけど、緑が現物を観ないと難しいと言うのなら、見せてあげないと同じ物は創り出せないのだろう。
 神戸の古銭屋さんに行って、高価に買い取ってくれる銅貨と銀貨を見せてあげよう。
 それとも、大阪まで足の延ばした方がいいか。
 しかし、まだ耳と尻尾を隠せないから、俺もコスプレしないといけないのかな。
 桃と緑だけコスプレさせても大丈夫かな。

「家に帰ったら、創り出してもらう物を売っている店をネットで探すよ」
「愉しみぃぃぃぃ」
「僕も調べていいですか」
「ああ、いいよ」

 桃は細かい事が苦手だが、緑はネットで調べるのが面白いようだ。
 桃も、緑が探した後の動画を観るのは好きなようだ。
 もっとも、身体を動かす方が大好きなようだけど、異世界の追っ手の事が怖いから、ほとんど外には出さず、母屋か離れ、ガレージの中でだけ遊ばせている。
 そういう意味では、今日の御出掛けは特別中の特別だ。
 桃と緑がはしゃぐのも当然と言えば当然だ。
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