土魔法で富国強兵?

克全

文字の大きさ
上 下
31 / 90
始まりの章

ダイヤモンド鉱山(第三者視点)

しおりを挟む
「馬鹿な奴らですね」
「そうだな」
「相場が五千万程度の廃鉱と原野を、二億円で買うなんて、馬鹿としか言いようがありません」
「そうだな」

 廃炭鉱を売った男は、仲介してくれた野党国会議員におべっかを使っていた。
 廃炭鉱の売却話があった時、北東の大国と裏で繋がっていると言う野党国会議員に相談して、十億で売ろうとしたのだ。
 だが、余りに相場を逸脱した金額だったので、交渉している間に他の廃炭鉱が売却の意志を示してしまった。
 しかもその廃炭鉱を紹介したのが、与党の国会議員だったのだ。
 慌てた男と野党国会議員は、値引き交渉に応じたが、それでも騙して大金を得ようと画策した。
 その結果十億が二億となったが、相場が五千万なので大儲けだった。
 男はこれからも野党国会議員には力になってもらう心算だったので、何かと接待を欠かさなかった。

「しかし、あんな廃炭鉱の試掘式に、先生を列席させるなんて非常識極まりありませんな」
「まあそう言うな。顔を売るのは大切な事だ」
「そうでした、そうでした」
「それに、あの男にだけいい顔はさせられん」

 廃炭鉱を買い取った大阪の会社は、新たな鉱物を目当てに試掘をすると言う。
 しかもその試掘をネットで大々的に宣伝したのだ。
 それだけ顔が売れる機会となれば、政治家が見逃すはずがなかった。
 内心では失敗すると馬鹿にしていても、国家議員や道会議員が顔を売るために集まってきた。
 その中には、売買を邪魔した与党国会議員もいたので、野党国会議員が対抗心を持ったのだ。

「しかし、何も発見されない試掘も馬鹿げていますが、廃炭鉱に入るのにコスプレするなんて、常識知らずにも程があります」
「その通りだが、予備自衛官の品位が下がれば、首相も恥をかくから万々歳だ」
「仰る通りでございます」

 北東の大国に通じ、母国に大損害を与えても、己の利益にしようとする野党国会議員にとっては、今回の廃炭鉱探検はうってつけの行事だった。
 大阪の開発会社の社長が、娘と社員に派手なコスプレさせて廃炭鉱探検を行っているのだが、その社員全員が予備自衛官だと言うのだ。

「しかし、こんな廃炭鉱内を歩くだけの動画を、誰が見るんですかね」
「世の中にはもの好きもいるのだろうよ」
「そうでございますね」

 その試掘式に来賓として参加していながら、男と野党国会議員は動画を流しながら馬鹿にしていた。
 だが実際は、ネットライブ中継としては異常な視聴率を叩きだしていた。
 可憐な双子と予備自衛官が、廃炭鉱に入って宝石を探すと言う動画は、視聴者の心を掴んだのだ。
 昔隆盛を誇った探検番組と御宝捜索番組に、コスプレが採り入れられたのがよかったのかもしれない。

「まぁこんな動画は消して、ゆっくり飲んでください」
「消すな。何かコメントを求められるかもしれんからな。だが酒はもらおう」
「そうですね。先生ならコメントを求められるでしょうね」

 男と野党国会議員は、次に騙す相手を誰にするか相談しながら酒を飲んでいた。
 北東の大国に通じた人間を使って、原野商法を行っていたのだ。
しおりを挟む

処理中です...