土魔法で富国強兵?

克全

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進撃の章

航海訓練

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「パパ、ヘリコプターがかっこいい」
「そうだね、本当にかっこいいね、桃」
「訓練なの」
「そうだよ、緑。
 表向きは訓練だけど、本当は僕たちを護ってくれているんだよ」

 日本の領海を出て直ぐに、海上自衛隊は二十四時間訓練に入った。
 わが社の予備海上自衛官と連携して、敵の攻撃を未然に防ぐべく、対潜哨戒に重きを置いて、輪形陣の艦隊陣形を取り、常時ヘリコプターと自衛艦艇で周辺を警戒してくれている。
 護衛隊群によるSPとも言えるが、その費用を考えると恐ろしい額になる。
 だが俺の納めている税額を考えれば、当然とも言えるかもしれない。

「交代で寝るの」
「そうだよ、桃」
「うるさくて眠れないよ」
「でも、襲われたら大変だからね」
「そうだよ、桃。
 パパの言う通りだよ」

 桃はヘリの騒音で安眠出来ないようだが、安全の為には仕方がない。
 タワラ級強襲ヘリコプター揚陸艦からは、常時四機の対潜哨戒ヘリが発進しており、二隻で八機の対潜哨戒ヘリが発進している。
 アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦八隻からは、常に二隻から一機の対潜哨戒ヘリが発進している。
 つまり船団周辺には常時一〇機の対潜哨戒ヘリが敵潜水艦を警戒してくれていることになる。

「ヘリを見ているのもいいけれど、夜更かしはいけないよ」
「えぇぇぇ、もう少し見ていたいよ、パパ」
「桃は仕方ないな。
 緑はどうする」
「僕も桃と一緒に見ています」
「じゃあ俺も付き合うか」
「「やったぁぁぁぁ」」

 本当は寝不足はいけないのだけれど、少々怖くて眠れないのだ。
 海上自衛隊からの情報では、北東大国と大陸大国の潜水艦はもちろん、アメリカ海軍の潜水艦も我が船団を尾行しているそうだ。
 まあ確かに、我々の動向は気になるだろうから、当然の処置だとは思うが、不気味で恐怖を感じてしまう。
 もしかしたら、桃と緑はそんな俺を思いやって、起きてくれているのかもしれない。

 海上自衛隊の一個海上護衛群が護ってくれているのだから、心配など不要だとは思うのだが、日本は専守防衛だから、先に攻撃する事は許されない。
 最初の一撃の犠牲になるのが、自分達の可能性が常にあるのだ。
 恐怖を感じるなと言う方が無茶だろう。
 日本の潜水艦は最優秀だと言うから、反撃をすれば必ず勝つと信じたいが、自分が死んだ後では無意味だ。

 それに日本の潜水艦が同行してくれているとは限らない。
 日本の潜水艦は本土防衛の要だとも言えるから、そう易々と本土周辺からは離れられない。
 一個海上護衛群を派遣した上に、潜水艦まで派遣する事は難しいかもしれない。
 特に今度の作戦は、敵の航海日数を考えて、長期間の航行を予定しているから、日本のディーゼル潜水艦では難しいだろう。
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