婚約破棄戦争

克全

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2章

23話

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 五人の家臣が命を賭して助け出したモアは、その家族に護られ、バーン家の屋敷から逃げ出したそうです。
 追撃してくるバーン家の手勢を振り切り、イーハ王が主催する試合会場に辿り着いたそうです。
 愚かな事ですが、イーハ王を信じたのでしょう。
 しかし、イーハ王は外道なのです。

 イーハ王は保身に走りました。
 イーハ王が主催した剣の試合です。
 最初ダラ・オフラハーティは嫌がっていました。
 どうやったのか、キラン・バーンはダラ・オフラハーティに試合の参加を承諾させました。
 それが、子供を攫って脅迫したモノだとは思わなかったのでしょう。

 ですが、モアが助けて連れてこられたのです。
 どう考えても八百長です。
 噂が広まれば、誰もがイーハ王がやらせたと考える事でしょう。
 口封じする事にしたのでしょう。
 それに、清廉潔白なダラ・オフラハーティでは使い難いと考えたのでしょう。

「神聖な試合を邪魔した者を許すな。
 オフラハーティ家の者を皆殺しにしろ」

「おのれ奸悪。
 正体を現したな。
 皇帝陛下の恩為。
 その首斬り落としてくれる。
 お前達はモアを連れて逃げろ」

 ダラ・オフラハーティは、獅子奮迅の活躍だったそうです。
 封印していた剣を抜き、双剣を縦横無尽に振るったそうです。
 ですが、モアと家臣家族を護り逃がすと言う鎖がありました。
 動きに制限があったのです。
 しかも相手は、一国の王です。

 皇都の館には、常に大軍を置いています。
 自分が悪事をなしているだけに、人の悪意に対する警戒心が強いのです。
 その兵全てが、ダラ・オフラハーティに向けられたのです。
 当然弓兵もいます。
 多くの槍兵もいます。

 ただ一人の味方もおらず。
 幼い子供と家臣の家族を護りながら戦う。
 絶望的に不利です。
 イーハ王の家臣の中にも、腕の覚えのある者が数多くいます。
 騎士とは思えない下劣な男ですが、キラン・バーンもいるのです。

 ダラ・オフラハーティは、双剣を振るって囲みを破り、モア達を逃がしました。
 追撃をさせないように、不利を承知で狭い通りに留まったそうです。
 そこでもダラ・オフラハーティは目を見張る剣技を振るったそうです。
 ですが、準備万端整えたイーハ王が、弓を雨霰と放たせたそうです。
 最初ダラ・オフラハーティは、双剣を振るって矢を斬り落としたそうです。

 ですが、矢の数が余りに多く、身を潜める場所もなかったそうです。
 一つ、二つと矢を受け、遂には身動きもままならなくなったそうです。
 卑怯下劣なキラン・バーンは、身動きのとらなくなったダラ・オフラハーティを斬り殺したそうです。
 何とも胸の悪くなる話です。
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