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4章
37話
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「使者殿。
本当にそれで許してもらえるのですか」
「本当です。
まさかとはお思うが、コナン王が嘘をつくと疑っておられるのか。
今の言葉をコナン王の言伝えしたら、それこそこの館の者も、国元の者も皆殺しになりますぞ」
「申し訳ございません。
決してコナン王様を疑ったわけではないのです。
どうかコナン王様にはどうか御内密の御願い申し上げます」
コナン王は、オシーン皇子の願いを聞いて、皇都の諸王家と貴族士族家に使者を送り、降伏臣従を勧めた。
今迄散々皇家を蔑ろにしてきたのだ。
家を潰されて当然の所を、当主とイーハ王派の家臣を処刑した上で、イーハ王討伐に軍を出す事で許すと言う条件の使者を送ったのだ。
当主は死ぬのが嫌でコナン王と戦おうとした。
だが当主が腐っているなら、家臣も同じ様に腐っている。
皇帝陛下に忠誠を尽くさず、逆に蔑ろにしていた当主の家臣は、当然主君である当主を蔑ろにするのだ。
自分達陪臣までは敵味方の判断ができないと高をくくり、当主と配下の小者を大量に殺し、コナン王の命令に従った振りをした。
若殿や正室達には、殿は家のため一門一族の為に自害したと報告した。
そして今度は家を飛び越えて、皇帝陛下やコナン王に取り入ろうとして、国元と皇都の兵を総動員して、イーハ王討伐に参陣した。
そこからの流れは速かった。
皇都は皇家騎士団と徒士団が厳重に護り固めた。
今迄皇家に非道を働いた諸王家と貴族士族家は、皇都を追放となり領地に引き籠る事になった。
彼らはオシーン皇子が皇太子に復位し、コナン王が宰相となった時のことを恐れ、動員出来る限りの領民兵を率いてイーハ王討伐軍に加わった。
諸侯軍の軍令は厳格だった。
皇家騎士団徒士団から監軍が差し向けられ、進軍途上の領地領民に負担をかけないように、厳命されていた。
どの諸侯もコナン王が恐ろしかった。
ここで命に叛いたら、それを理由に皆殺しにされ、領地を召し上げられるのが明白だったからだ。
皇国中の諸王家や貴族士族家の軍勢が、オキャラン城を包囲した。
イーハ王には何の手も打てなかった。
イーハ王は見切り時を誤ったのだ。
オシーン皇子の才能を認めた時点で改心すべきだったのだ。
だがそれが出来なかった。
せめてルアン皇太子が捕虜になった時点で降伏すべきだった。
自殺すべきだった。
そうすれば、自分は死ぬことになっても、オキャランの血統だけは残ったかもしれないのだ。
だがその決断が出来なかった。
そしていよいよギャラハー騎士団の総攻撃が始まった。
本当にそれで許してもらえるのですか」
「本当です。
まさかとはお思うが、コナン王が嘘をつくと疑っておられるのか。
今の言葉をコナン王の言伝えしたら、それこそこの館の者も、国元の者も皆殺しになりますぞ」
「申し訳ございません。
決してコナン王様を疑ったわけではないのです。
どうかコナン王様にはどうか御内密の御願い申し上げます」
コナン王は、オシーン皇子の願いを聞いて、皇都の諸王家と貴族士族家に使者を送り、降伏臣従を勧めた。
今迄散々皇家を蔑ろにしてきたのだ。
家を潰されて当然の所を、当主とイーハ王派の家臣を処刑した上で、イーハ王討伐に軍を出す事で許すと言う条件の使者を送ったのだ。
当主は死ぬのが嫌でコナン王と戦おうとした。
だが当主が腐っているなら、家臣も同じ様に腐っている。
皇帝陛下に忠誠を尽くさず、逆に蔑ろにしていた当主の家臣は、当然主君である当主を蔑ろにするのだ。
自分達陪臣までは敵味方の判断ができないと高をくくり、当主と配下の小者を大量に殺し、コナン王の命令に従った振りをした。
若殿や正室達には、殿は家のため一門一族の為に自害したと報告した。
そして今度は家を飛び越えて、皇帝陛下やコナン王に取り入ろうとして、国元と皇都の兵を総動員して、イーハ王討伐に参陣した。
そこからの流れは速かった。
皇都は皇家騎士団と徒士団が厳重に護り固めた。
今迄皇家に非道を働いた諸王家と貴族士族家は、皇都を追放となり領地に引き籠る事になった。
彼らはオシーン皇子が皇太子に復位し、コナン王が宰相となった時のことを恐れ、動員出来る限りの領民兵を率いてイーハ王討伐軍に加わった。
諸侯軍の軍令は厳格だった。
皇家騎士団徒士団から監軍が差し向けられ、進軍途上の領地領民に負担をかけないように、厳命されていた。
どの諸侯もコナン王が恐ろしかった。
ここで命に叛いたら、それを理由に皆殺しにされ、領地を召し上げられるのが明白だったからだ。
皇国中の諸王家や貴族士族家の軍勢が、オキャラン城を包囲した。
イーハ王には何の手も打てなかった。
イーハ王は見切り時を誤ったのだ。
オシーン皇子の才能を認めた時点で改心すべきだったのだ。
だがそれが出来なかった。
せめてルアン皇太子が捕虜になった時点で降伏すべきだった。
自殺すべきだった。
そうすれば、自分は死ぬことになっても、オキャランの血統だけは残ったかもしれないのだ。
だがその決断が出来なかった。
そしていよいよギャラハー騎士団の総攻撃が始まった。
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